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『なってみる学び』演劇的手法で聴衆が熱中する講演・授業

演劇的手法に出会い、モヤモヤがクッキリ晴れた空のように感化された学びの機会を得た。2020年10月に出版された『なってみる学び』(渡辺貴裕氏・藤原由香里氏)の実践の厚みに、日本の教育に大きな変革をもたらす可能性を感じた。この実践書のコンセプトが示す効果を、私自身の幾つかの講演・授業と研修を通じて得た実感と紐付けてみたい。

2019年、平田オリザ氏の講演を聴いて教育観がアップデートされた。非認知能力を育むアートを中核に、授業・学校経営をデザインしてきた。
(以下は、その概念図である。)まずは、興味のあることをやってみる、するとなんだか面白いから探究してみたくなる。その学びのプロセスを具体化して示した。

【非認知能力を土台にした学びのプロセス】

『なってみる学び』のコンセプトを一言化すると「まずやってみる」。

この文化が育まれるためには、双方向の学び、自由にものが言える関係性を生み出す環境づくりが必要である。

それを”演劇的手法”で実現できることが示されている。

この書籍とは離れるが、平田氏のワークショップで体感したワークを紹介したい。それは、仲間集めである。

例えば、複数人で好きな果物を言って仲間を探すワークをする。りんご、バナナ、みかん、パイナップル、もも、など多種多様な意見が出る。このワークの狙いは、自分の意見を声に出して伝える、つまり、コミュニケーションをとることである。

仲間が見つかると、なんだか嬉しい、所属意識、安心感が生まれる。

しかしながら、仲間が見つからないレアな意見を言う人が出てくる。
その意見が出た時の対応が重要である。

一人しか居ないとう状況は、なんとなく、心細い感じがするが、
それは”オンリーワン”で貴重なのだと捉え方を変えると、なんだか誇らしくなる。

高校生に授業をしたときに、一人になった大人しそうな生徒がとても喜んでいた。独自性が認めらることで、安心して意見が言える環境が生まれ、周囲の見方も変わってくる。
こうした解釈が、自尊感情、自己肯定感を育むと私は考えている。

このワークをアイスブレイクでやるなら面白いとは思っていたが、
実際に、講演や授業に入れ込むのは勇気が必要だった。
なぜなら、授業の本筋(言葉かけ)とどう関連づけを図るかが課題だったから。腑に落ちる構成にしなければ、記憶に残らないから。
再考を重ね、演劇的手法による”理解⇨表現”の相互循環を複数回のワークで体感させることを見出した。
理解させたい内容は、受け入れる感覚の体験(受容)、とらえかたを変える感覚の体験(承認)の2つの認知と紐付けることだった。
それを意見を言って仲間を集める「表現」を通して、体感させることを思いついた。

授業後の感想をテキストマイニングで定性的分析すると、前向きな思考と行動モードになっていることがみてとれた。依頼者からは「自己肯定感とコミュニケーションに課題がある」との情報だったが、1時間の授業で大きな効果をもたらすことがわかった。単なる説明型・講義型の授業では得られない、”腑に落ち感覚”が生徒の表情・反応からも伝わってきた。

ワークとの出会いから4年の歳月を経て、演劇的手法の効果を実践で体得できたことは大きな発見となった。

本書に示される様々な演劇的手法は、国語科、道徳科の実践、及び研修、研究会の運営に至るまで「まずやってみる」コンセプトが紹介されている。

先日、「演劇✖️学校」というワークショップを受講したが、様々なワークで身体表現をすると体験してきたエピソードから言葉が思い浮かぶ、湧き出てくる感覚を味わうことができた。

自分自身で体感したからこそ、『なってみる学び』の実践を読んで、表現と理解の相互循環について理解できたし、「これはできるぞ」というワクワク感が生じたのだと思う。

「探究」と言うワードがトレンドになっているが、演劇的手法の具体的な技法を用いた学習活動の効果を一つ一つ紐解いていく授業を探っていきたい。


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