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【「嗜む」のすすめ】寧日に焦がれ本を嗜む


柴崎まどかさん撮影

私達が密かに大切にしているものたち。

確かにあるのに。

指差すことができない。

それらは、目に見えるものばかりではなくて。

それらを、ひとつずつ読み解き。

それらを、丁寧に表わしていく。

そうして出来た言葉の集積を嗜む。



私が大切にしたいのは、人が、ものごとに対して抱く、愛情の意味だったりします(^^)

自らが、いかにして、ものごとに愛を寄せるかどうかは、文脈の解釈に依存します。

では、文脈がもたらす愛着とはなんだろうか。

私が、大切にしているものの一つに、機械式の腕時計があります。

Takako Ugachiさん撮影(古時計の姿をしたタイムマシーン)

機械式時計の仕組みを考えた先人達の想いは、私に何かを考えさせるメディアでもあります。

何を身に着け、何を想い、どう生きるか。

私達は、それぞれが異なる文脈を編みながらものごとを認知し、意味や価値を見出しながら自らの世界を構築していきます。

つまり、文脈がもたらす愛着とは、他者と自身の唯一無二な関係を認知できたときの感情ではないでしょうか。

これは、時代の変遷に左右されない、人間らしい営みに思えてなりません(^^)

持続可能性に訴えて強制するリユースよりも。

それを使い続けることに、なんらかの意味やロマンといった価値を見出す、という行為の方がよっぽど人間らしいはずです。

だから、本に対しても、その考えは変わらず、大切に扱うように心がけています(^^)



人類の叡智と、手技の結晶である機械式時計は、400年もの間に有名無名の「天才」たちの手で完成に至った精密機械。

徹底解説!機械式時計の動く仕組み

https://www.rasin.co.jp/blog/special/mechanical_structure/

デザインスケッチも、ムーブメントの裏側の仕上げも価格を超えた美しさがある

そして、スケルトンウォッチは、歯車など部品が取り付けられたムーブメントの地板を切り抜き、文字盤を透明にすることで、「機械の小宇宙」ともいわれる美しい構造や動きを目で楽しめるようにしたもので、動く彫刻ともいわれています。

想像を超えるような複雑機構や絶妙な色合い、卓越したデザイン。

それを目にし、手に取るたびに、驚きと感動を与えてくれます。

さまざまに試行錯誤されたフォルムや手触り。

それは、かけた時間の分だけ、その価値が、雪のように降り積もっていったことでしょう。

経過してきた無数の時間が、ものの細部に宿り始める瞬間。

それは、それを創造する人達自身が何度となく作った試作品のアームの先を。

彼ら自身の手で、何度となく、撫でた瞬間かもしれません。

細部に宿るもの。

心惹かれるものには、理由があります。

素材、質感、形、使い勝手、程よい重さ、または、軽さ。

自分が、心惹かれるものの良さと、感じる理由を挙げていくと、心惹かれる傾向が見えてきます。

並べていくと、一つの景色が現れてきて、自分でも、予測していなかった感覚に、出会える小さな旅になります。

心惹かれるものは、時にごく個人的だったりします。

幼い頃の記憶や、懐かしい思い出。

いくつもの心象風景。

そこには、共通する目に見えない良さを支えるものが存在しています。

それは、時間なのでしょうね(^^)

遥かな時間の旅を繰り返してきたものは、目の前に現れた時に、その存在感を歴然と輝かせます。

何かを纏うような。

何かを言いたげな。

それは、一冊の本も同じで。

そこに至るすみずみにまで魂と時間が宿っている。

そんな面持ちを見せてくれる本も、この世界には、たくさん存在しているのではないでしょうか。



それは、音楽についても同じで、例えば、ジャズ・ミュージシャン達が、何に価値をおいて音楽を創造しているのかについて知ることで、興味の幅が広がっていきます♪

ハービー・ハンコック:

「(いいシンガーとは、どういう歌い手のことか、という問いに対して)

ハートがあって、正直で、誠実なシンガーだよ。

これはヴォーカルに限らず、すべてのセクションに言えることだけどね。

・・・正直さと誠実さは、リスナーに勇気を与えてくれる」

音楽の魅力は、まず、心をストレートに表現することなのだということなんだろうね。

確かに、テクニックばかりあっても、「伝えたいもの(表現したいもの)」が感じられない音楽は、陳腐に感じたりします。

このことは、ジョシュア・レッドマンも述べていました。

「みんなが私の演奏を気に入ったなら、おそらく深遠なことは何もしていなかったからだろう。」

特に、ヴォーカルの場合は、まず、伝えたいという気持ちが大切なのだと思う。

気持ちを伝えるうえで、人の肉声ほど、相手に響くものはないのだから。

Herbie Hancock「 Cantaloupe Island」

US3「Cantaloop (Flip Fantasia)」

パット・メセニー:

「僕はあらゆる人や、国や、物事に興味がある。そしてそれらとの出会いに感謝している。

するとね、何気ない日常的な出来事からも、音楽へのインフォメーションを得ることができる。

それがプレイにも表れる。

それだけだよ。

だけど、重要なんだ。

オリジナリティにつながるからね。

一見ごくふつうな日常生活と、音楽。

この二つは違うように見えて、実際にはまったく切り離されることなく存在しているんだ。

少なくとも僕に関しては、音楽と生活は一体となっている」

音楽とは、人生の反映であると、私は思っています。

実生活がホットな人からはホットな音楽がうまれる。

もちろん、その逆も、ありだと思う。

だから、ミュージシャンの人間や社会に対する眼差しのようなものが感じられる音楽は好きですね(^^)

その人にしか表現できないワン&オンリーなものの価値を見極められるリスナーでありたいと、そう思っています。

Pat Metheny「Sea Song」

マッコイ・タイナー:

「何よりも、コルトレーンは音楽に情熱を傾けていた。常に努力をしていた。

・・・毎日毎日練習をしていた。

僕はね、彼ほどたくさん練習をする演奏家はほかに知らない。

そして、自分に勝てたからあれだけ偉大な音楽家になったのだよ。

それを近くで見ることができたのが、僕の喜びだ。

世の中で成功するには、確かに、才能は必要だ。

でもね、これは音楽だけでなくどんな分野でも同じだと思うけれど、才能だけではけっして特別な存在にはなれない。

才能は、それをきちんと育てることによって、初めて特別になれるんだ」

こんな風に言えるマッコイこそ、「練習の虫」だったそうです。

素晴らしい。

どんな世界でも、「努力は嘘をつかない」ということなのだろう。

でも、そもそも才能がなければ始まらないとも言える。

こう言っちゃうと身も蓋もないけど。

自分の才能を見極めることも、ときに大切な場合があると思うんだけど、ね。

McCoy Tyner「Fly With the Wind 」

McCoy Tyner Trio「When Sunny Gets Blue」

チック・コリア:

「今、僕が考えているのは、アーティストの持つ力を地球を豊かにするために使うことなんだ。

どんなかたちでもいいからね。

例えば僕がつくる音楽によって、誰かが少しだけ幸せを感じてくれる。

それだけでいい。

朝、目が覚めて、今日は空気がおいしい、今日は家族のためにおいしいブレックファストをつくりたい・・・それだけでいいんだ。

人生というのは、そうやって楽しむものだからね。

それこそがアーティスティックではないかと、感じる」

究極的には、「音楽で世界を動かす」ことは、可能だと私は思っています。

だからこそ、チックのようなアーティストが活躍してくれるのはとても嬉しいし、そのことに、期待もしています。

音楽のある生活っていいですよね(^^♪

ありきたりの日常に彩りを添えるのが音楽です。

まさに「No Music is No Life」(音楽のない人生なんて・・・)だと思います。

Chick Corea「Humpty Dumpty」

Chick Corea「Dear Alice」

Chick Corea「The Mad Hatter Rhapsody」

マーカス・ミラー:

「知っての通り、マイルス・デイヴィスというミュージシャンは、いつも新しいことをやり続けた。

彼は、まったく同じことを変わらずに続けて、一つのところに落ち着くこともできた。

ところが彼はけっしてそれをしなかった。

多くのミュージシャンは、二十代で評価を得ると、それを一生やり続けてしまう。

・・・ところがマイルスは、十年ごとに違うことをやった。

それはものすごく勇気が必要だったはずだよ。

僕は、そういうマイルス・デイヴィスの姿勢を尊敬している。

…マイルスは僕にも、いつも話していた。

音楽は常に時代と隣接して存在している。

だから、古い音楽を新しい時代に演奏することはできない、と」

Marcus Miller「free」

Marcus Miller「Run for Cover」

Marcus Miller「frankenstein」

「変わることを恐れない」

これは、できそうでなかなかできないことです^^;

特に、仕事なんかは、いったんルーチンワークにしてしまうと、それを、ひたすら続けたほうが楽ですから。

クリエイティヴであり続けることは、実は、とても大変なことであり、まして、マイルスのように、長年にわたってシーンをリードし続けたミュージシャンにとっては、並大抵のことではなかったでしょう。

70年代以降のマイルスの音楽には、批判的な方もいるようだけど、彼の音楽に対する姿勢には共感することが、おおいにあります。

マイルスについては、もうひとつ、数え切れないほど多くの才能豊かな若手を発掘し、一流のミュージシャンに育てあげた、彼の手法にとても関心があります。

私が思うに、「いったん才能を信じたら、とことん自由にやらせてみる」ことに、ヒントがありそうだなと感じており、参考になりますね。

もっとも、才能のない方に自由にやらせたら、大変なことになりそうだけど、違った意味で面白い結果になるかもしれないといった期待もあったり。

仕事上、何人かの部下(あるいは後輩)をもつ立場の方は、研究してみると面白いと思いますよ。

どうですか、こんな彼らの音楽を、聴いてみたいと思いませんか?(^^)




既に、ご存じの方もいらっしゃると思われますが、こんな凄いファンの方々が居るなんてと、驚きと尊敬の念で一杯にさせてくれた作品です(^^)

WIND PRINCESS - SHORT FILM (NAUSICAÄ TRIBUTE)

【参考記事】

約40年前に発表された作品を、

こんなにも緻密に再現してくださったことに、改めて、敬意と感謝を(^^)



今日は、どれを読もうかなんて。

好きなことに没入し。

自分と向き合う時間に浸る「ヒタ活」(^^)

今宵、嗜む本のお品書きは・・・

【「嗜む」のすすめ】寧日に焦がれ本を嗜む

「A Narrow Bridge(一本の細い橋)-美術でひもとくオランダと日本の交流史」ヤン・デ・ホント/メンノ・フィツキ (著)松野明久/菅原由美(訳)

「AGEHA」杉本さなえ(著)

「Daido Moriyama:Dazai」

「Mikiya Takimoto Works 1998-2023 プリント付限定特装版」瀧本幹也(著)

「Paper Blossoms, Butterflies & Birds A Book of Beautiful Bouquets for the Table」Ray Marshall(著)

「いちにのさん 通常版」きくちちき(作/絵)

「いちにのさん 特装版/手刷り木版」きくちちき(作/絵)

「おやすみ神たち」谷川俊太郎(詩)川島小鳥(写真)

「かないくん」(ほぼにちの絵本)谷川俊太郎(著)松本大洋(イラスト)糸井重里(読み手)

「ソール・ライター Saul Leiter The Centennial Retrospective」ソール・ライター/マーギット・アーブ/マイケル・パリーロ(著)清水玲奈(訳)

「だめといわれてひっこむな おはなしのろうそく 5 愛蔵版」東京子ども図書館(編)

「パーソナル英和・和英辞典 ダース・ヴェイダー版」学研辞典編集部(編)

「はかれないものをはかる」工藤あゆみ(著)

「ビッグクエスチョンズ 数学 Mathematics THE BIG QUESTIONS」トニー・クリリー(著)熊谷玲美(訳)

「ふしぎな にじ –かがみのえほん-」わたなべ ちなつ(著)

「永井一正ポスター・ライフ 1957-2014」

「缶詰ラベルコレクション MADE IN JAPAN」公益社団法人日本缶詰協会(監修)

「手塚雄二作品集 光を聴き、風を視る」手塚雄二(著)

「新版 昔のくらしの道具事典」小林克/神野善治(監修)

「新訳『ドラえもん』」藤子・F・ 不二雄(漫画原作)佐々木宏(文)

「榛原(はいばら)の藝術とデザイン Haibara Art and Design 和紙がおりなす日本の美」

「双眸」川口真理(著)

「草迷宮 特装版」泉鏡花(作)山本タカト(画・跋文)

「装丁・装画の仕事」(Workbook on Books 10)日本図書設計家協会(編)

「池田学 The Pen  誕生・その後 増補改訂版」池田学(著)

「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集 01 古事記」池澤夏樹(訳)

「町田尚子画集 隙あらば猫」町田尚子(著)

「長物のショートショート」

「特別展覧会 修理完成記念「国宝 鳥獣戯画と高山寺」公式図録」

「日中韓 棟梁の技と心 展示会図録」

「日本写真史 1945-2017 ヨーロッパからみた「日本の写真」の多様性」レーナ・フリッチュ(著)飯沢耕太郎(監修)

「百人一首ワンダーランド」五味太郎(著)

「不完全性定理」菊池誠(著)

「武蔵野美術大学コレクション 博物図譜―デジタルアーカイブの試み―特装本」荒俣宏(特別監修)寺山祐策(監修)本庄美千代(編)

「暮しの手帖 特別号 保存版Ⅱ 「叱る」」

「和而不同」王伝峰/隈研吾/陳仁毅(著)

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