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バットマン:ノーマンズ・ランド(1)  ネタバレあり感想・あらすじ解説


・・・大地が震え、ビルが崩れ去った後、ゴッサムシティに留まったのは、英雄と犯罪者と狂人だけだった。

アメリカに見捨てられた街を、人々はこう呼んだ。



ノーマンズ・ランド(無人の大地)と



バットマン翻訳コミックの感想第14回は『バットマン:ノーマンズ・ランド(1)』です。

概要

本作は大地震で無法地帯となりアメリカ政府から見放されたゴッサムシティが舞台の超大作『バットマン:ノーマンズ・ランド』全4巻の1巻目になります。

本作はとにかくめちゃくちゃ長いです(そしてめちゃくちゃ高いです)。

全4巻ですが1冊だけで500ページ超合計約2100ページもあります。

内容としては無法地帯となったゴッサムシティでのバットマン、バットファミリー、ゴッサム市警、ヴィラン、ゴッサム市民らのエピソード集という感じです。

エピソードごとに作家が異なるので絵柄や雰囲気も異なります。

もちろん全体としてのストーリー明かされていく謎などもあるのでそちらも徐々に進んでいきます。

ちなみに物語は既にゴッサムシティがアメリカ本土から見放されて立ち入り禁止領域になって93日目から始まります。

そもそもなんでゴッサムシティがこんなことになったかというのは付属の解説書に詳しく書いてあるのですが本作の数年前にゴッサムシティで疫病が流行り多数の死者が出て、その上マグニチュード7.6の直下型地震が起こり街全体がほぼ壊滅状態になりました。
本来ならば合衆国政府が街の再建に取り組むのですがゴッサムシティはアメリカ屈指の犯罪都市で有りアメリカの汚点であった為「再建不可能」とレッテルを貼り、ゴッサムシティを本土から切り離して存在を抹消しようとしたのです。

さらに物資や食料の不足の影響で多くのヴィランが収容されていたアーカム・アサイラムの囚人達が解放されて自由の身になったことでゴッサムシティの縄張り争いは激化します。

バットマンは表の顔であるブルース・ウェインとしてゴッサムシティの隔離計画に反対しますが結局隔離政策は実施されて避難警告の後にゴッサムシティとアメリカ本土を繋ぐ橋は爆破されるのでした。

こうしてゴッサムシティはアメリカの領土から外れ、そこに住む人々は国民ではなく人権も無い、つまり無人(ノーマンズ)の大地(ランド)になったのです。

こうして物資も食料も不足し秩序の崩壊したゴッサムシティで各勢力が縄張り争いをしていく様や生き様が描かれます。

超ボリュームのあるエピソードなので登場人物も非常に多いです。
シリーズ全体を通しての主な登場人物は以下になります。

ヒーロー

バットマン(ブルース・ウェイン)
3代目ロビン(ティム・ドレイク)
ナイトウィング(ディック・グレイソン)
オラクル(バーバラ・ゴードン)
アズラエル(ジャン・ポール・バレー)
ハントレス(ヘレナ・ベルティネリ)
2代目バットガール(正体不明)
キャットウーマン(セリーナ・カイル)
スーパーマン(クラーク・ケント)

ヴィラン

ジョーカー
ハーレイ・クイン(ハーリーン・クインゼル)
トゥーフェイス(ハービー・デント)
ペンギン(オズワルド・コブルポット)
ベイン
スケアクロウ(ジョナサン・クレイン)
ミスター・フリーズ(ビクター・フリーズ)
ポイズンアイビー(パメラ・リリアン・アイズリー)
クレイフェイス(ベイジル・カルロ)
ブラックマスク(ロマン・シオニス)
ベントリロクイスト&スカーフェイス(アーノルド・ウェスカー)
マンバット
キラークロック(ウェイロン・ジョーンズ)
ラットキャッチャー(オーティス・フラネガン)
ビクター・ザーズ
マッドハッター(ジャービス・テッチ)
ニコラス・スクラッチ
ロックアップ(ライル・ボルトン)
KGビースト(アナトリー・ナイアチェフ)
マクシー・ゼウス
デビッド・ケイン
タリア・アルグール

ゴッサム市警

ジェームズ・ゴードン
サラ・エッセン
ハービー・ブロック
レニー・モントーヤ
ビリー・ベティット
クランレス・フォーリー
マッケンジー・”ハードバック”・ボック

その他ゴッサム市民

アルフレッド・ペニーワース
レスリー・トンプキンス

これら以外にも多数のヴィランやゴッサム市民が登場します。
これら多数の登場人物達がヒーロー、ヴィラン、警察問わず時に協力し、時に敵対して無法地帯となったゴッサムシティを生きていきます。

また本作ではゴッサムシティ全体の地図も描かれて勢力図が色塗りで示されます。
バットマンであるブルース・ウェインの住むウェイン邸はめちゃくちゃはじっこにありました。

ちなみにジム・ゴードンの若い頃が描かれる海外ドラマの『GOTHAM(ゴッサム)』ではファイナルシーズン(シーズン5)がノーマンズ・ランドを元にしており同じようにアメリカから見放されて無法地帯となったゴッサムシティの縄張り争いが描かれます。
本作に出てくる勢力グループ名(ローボーイズ、ストリート・デーモンズ)もドラマに出てきます。

あらすじ

正義の戦は終わった……ゴッサムシティが無法地帯に。 バットマン史を語る上で欠くことのできない一大巨編、満を持して邦訳開始! はじまりは“クレンチ"という伝染病だった。“クレンチ"は数十万人ものゴッサム市民の命を奪った。だが、バットマンたちが治療法を見つけたことにより、事件は一段落したかに見えた……次にゴッサムに大震災が訪れた。数千人が死亡し、数万人がホームレスと化した。さらに、この混乱に乗じて、凶悪犯たちが刑務所から脱獄する。闇の騎士さえ、天災の前にはなすすべもなかった……。 だが、もっとも残酷な鉄槌は、アメリカ政府が被災地であるゴッサムシティを再建不可能だと認定したことだった。バットマンのもう一つの顔である実業家ブルース・ウェインは、ワシントンに足を運んで政治家に直訴するが、彼らの決断を覆すことはできなかった。こうしてゴッサムは見捨てられ、外界から切り離された。この不毛な大地に住んでいるのは、自らの意志でここに残った者と、残らざるをえなかった者だけ。 ゴッサムシティはもはや存在しない……無法地帯(ノーマンズ・ランド)にようこそ。

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本作は全4巻の内1巻目ということで無法地帯となったゴッサムシティの現状が描かれます。
バットマンはゴッサムシティが無法地帯となってから約3ヶ月間ゴッサムシティに姿を現さず、バットマンの帰還が最初に描かれます。

バットマンはナイトウィング、ロビン、オラクルには活動を禁じさせ、本作ではナイトウィングとロビンはゴッサムシティに居らず1コマずつしか登場しません。
代わりにアズラエルハントレス2代目バットガール(作中では最初バットと呼ばれる)がバットファミリーとして描かれます。

また、ゴッサムシティの現状を心配したスーパーマンがゴッサムシティを訪れるエピソードもあります。

ノーマンズ・ランドとなったゴッサムシティの物語の始まりが描かれます。

解説・感想(ネタバレ注意)













本作は短編のエピソードが続いて物語が進みますので各エピソードごとに解説・感想をします。
エピソードによって解説・感想の文章量に差があるのは私の好みの差です

無法地帯のルール

主な登場人物

バットマン(ブルース・ウェイン)
主人公。
ゴッサムシティの大富豪ブルース・ウェインがバットマンとして犯罪者を取り締まっていた。
ゴッサムシティが無法地帯になってから姿を消していたがついに現れる。

オラクル(バーバラ・ゴードン)
ジム・ゴードンの娘で元バットガール。
ジョーカーに腹部を撃たれてから下半身不随で車いすでの生活となる。
オラクルとして情報や電子工作でバットファミリーをサポートしていた。
他のバットファミリーがバットマンの指示でゴッサムシティを去る中、クロックタワーに残ってゴッサムシティの情報を収集していた。

ジェームズ・ゴードン

ゴッサム市警の本部長。通称ジム・ゴードン。
無法地帯となったゴッサムシティで警官達をまとめて秩序を保とうとするが上手くいかず短気になっている。
バットマンが姿を消していたことで失望し嫌悪を示している。

サラ・エッセン=ゴードン

ゴッサム市警の警官でゴードンの妻。
かつてゴードンが元妻であるバーバラがいた時に不倫をしていたがゴードンはバーバラと別れてサラと再婚したらしい。
妻としてゴードンを支える。

ベントリロクイスト&スカーフェイス(アーノルド・ウェスカー)
腹話術師でスカーフェイスという凶悪な人形の人格に操られている凶悪犯。
銃弾を管理することで部下達や市民を支配していた。
逆らったり気に入らなければ子供でも容赦なく殺害する恐ろしさを持つ。

バット

バットマン風のコスチュームで顔まで覆っている正体不明の女性。
バットマンのように弱者を守り悪人を裁いている。


解説

冒頭でゴッサムシティが進入禁止領域になり米軍が監視していて支援物資も送れない現状が描かれます。
更にゴッサムシティでは貨幣の価値は無くなり物々交換や護衛などの仕事での役割で人々は生き長らえていました。

オラクルであるバーバラ・ゴードンは確保した物資と引き換えに情報を収集してゴッサムシティのヴィラン達の縄張りを把握していました。

ゴッサムシティに残ったゴッサム市警の警官達はジム・ゴードンがまとめて無法者達から支配地域を解放しようとしていました。
部下がバットマンを呼ぶためにバットシグナルを作りますがゴードンはバットマンは来ないと怒り、蹴り壊します。
ゴードンは姿を消したバットマンがゴッサムシティを見捨てたと思っているのでした。

ある日子供達が無法者達に襲われますがバットマン風のコスチュームを着た女性に助けられます。
バットと名乗る女性はコウモリのマークを壁に残してそれは悪を許さないという意味だと語るのでした。

ゴッサム市警はローボーイズとストリート・デーモンズという2つの勢力を争わせることで弱体化させ支配地域を解放しようとします。
ゴードンは暴力的なやり方に迷いがあることを妻のサラ・エッセンに話すのでした。

浮浪者が歩いていると無法者達に襲われますがそこにバットマンが現れて浮浪者を助けます。浮浪者はバットマン(ブルース・ウェイン)の執事のアルフレッドの変装でした。
バットマンとしての久しぶりの活動にアルフレッドが気分を問うとバットマンは「最高だよ」と返すのでした。

バットマンはバットに会い、活動について積極的に協力もしないがバットの活動を否定しないスタンスを示すのでした。

バットマンとバットが街の至る所の壁にコウモリのシンボルマークを残していることにゴッサム市警やヴィラン達も気づき、バットマンの再来に感づきます。

部下に渡す銃弾を一発にすることで部下達をコントロールしていた腹話術師のヴィランであるベントリロクイスト&スカーフェイスでしたがバットマンの罠にかかり倒されます。
スカーフェイスの支配していた地域をバットマンは解放しましたが秩序の維持の為にスカーフェイスの部下に縄張りの管理を任せるのでした。

バットマンはこれまでのように善人悪人の区分は通用せず、生きる為にはお互いの協力とルールが必要であることを認めるのでした。

感想

無法地帯となったゴッサムシティの現状を分かりやすく説明してくれるエピソードでした。

ゴードンがバットマンに対して嫌悪感を露わにしててちょっと悲しい。
ゴードンはゴードンでいつのまに妻のバーバラと別れて不倫相手だったサラと結婚したんだよという気持ち。(アメコミは翻訳されていない話の間で人間関係がコロコロと変わるのです)

バットのキャラクターは顔を隠しているくせにペラペラ喋るのが面白いですね。
助けた少年達に悪人だと思われた後のやりとりがちょっと好きです。


バット「このシンボルを見ればわかるでしょ」
(バカでかい胸にあるコウモリのマークを見せる)
少年「わかるけど、あなたは女じゃん」

少年「じゃああなたはバットマンの仲間なの?」
バット「仲間じゃなく、本人かもね」
少年「まさか」



妙に距離感の近いやりとりが良いです。

奇跡の稲妻

主な登場人物

アズラエル(ジャン・ポール・バレー)

黒と銀を基調としたマスクとスーツに赤いマントとバットマンに比べてとてもヒーローらしい姿をした金髪のイケメン。
秘密結社「聖デュマ騎士団」の遺伝子操作と心理プログラムによって作り出された戦士だったがバットマンと出会いヒーローとなった。
バットマンを倒したベインを倒したこともある。
性格は素直で正義感が強い。
ニコラス・スクラッチというカリスマ的な新興宗教の教祖を追っている。

解説・感想

アズラエルがメインのエピソード①。

内容としてはアズラエルがニコラス・スクラッチを追って部下と戦うお話。
雷が直撃しても生きてて強くなるのはまるでアベンジャーズのソーみたいです。(見た目も似てる)
バットマンや他のバットファミリーに比べて素直な性格のアズラエルは見てて気持ちが良いです。

恐怖の信仰

主な登場人物

スケアクロウ(ジョナサン・クレイン)

かかしのコスチュームを着た恐怖に執着しているヴィラン。
恐怖ガスを浴びせて人を恐怖に陥れるが資源不足でガスが作れなくなった。
無法地帯となっても生きる気力を失わないゴッサム市民を見て大人しいフリをして教会に入り込んで人々が恐怖を陥るように企てる。

ハントレス(ヘレナ・ヴェルティネリ)

バットマンの仲間ではないが紫のコスチュームを着てバットマンのように活動している自警団員の女性。
バットマンに対して反抗的だが実はバットマンに認められたい気持ちがあり、バットマンの実力を認めている。
スケアクロウの本性を知っているので教会に居座っているスケアクロウを警戒する。

バットマン(ブルース・ウェイン)

ブラックマスクの部下のマイキーの善性を信じて教会に預けるかそれが波乱を巻き起こすこととなる。

バット

バットマンと共に行動してブラックマスクの部下と戦う

ペンギン(オズワルド・コブルポット)

無法地帯となったゴッサムシティで物流を支配している暗黒街の王。
教会に食料を提供する代わりに重火器の隠れ場所として教会を利用する。

レスリー・トンプキンス

無法地帯となったゴッサムシティで医療行為を行っている女医。
ブルースの父トーマス・ウェインの友人でブルースを幼い頃から知っておりバットマンの正体ということも知っているブルース・ウェインの数少ない理解者。
ブラックマスクの元部下達に襲われたマイキーの治療を行う。

クリス神父

警察権力を嫌い教会を避難所にして市民を匿っている神父。
たとえスケアクロウのようなヴィランでも助けを求めれば応える。
善人だがスケアクロウの陰謀で食料と引き換えに教会に重火器を隠すことを許してしまい事件が起こってしまう。

マイキー

ブラックマスクの部下だったがバットマンに善性を見抜かれ教会に預けられて更生するがかつて所属していたブラックマスクの元部下達に襲われる。


解説

スケアクロウとハントレスがメインのエピソード。

クリス神父が避難困窮者達を教会で保護していたところにスケアクロウも入り込み保護されていました。
教会を訪れたハントレスはスケアクロウの危険性を周りに伝えますが既にスケアクロウは教会の住人達から受け入れられていました。

一方でスケアクロウは教会の食糧庫にネズミをこっそりと入れて教会を食糧難に陥れます。
スケアクロウはクリス神父にペンギンが食料を確保していることを伝え、クリス神父は食料と医薬品と引き換えにペンギンの重火器を教会の地下に保管することになるのでした。

ハントレスはスケアクロウを警戒して監視をします。



ハントレス「まだここにいるの?」
スケアクロウ「俺はお前と違って歓迎されてるからな」



この後のイラついたようなハントレスの表情が良いです。
ヒーローとヴィランがこういう風にフランクにやりとりするのも好きです。

教会にはバットマンが更生の為に教会を紹介したブラックマスクの元部下であるマイキーが居てスケアクロウはマイキーの元仲間達が教会に来ることを警戒しているとのことです。

しかし実はスケアクロウはマイキーをそそのかし元仲間達に教会の警護を頼むように言います。
逆にハントレスはマイキーの元仲間達にマイキーに近づくなと脅しをします。

スケアクロウにそそのかされたマイキーは教会の地下からペンギンの重火器を元仲間達に持っていくとマイキーは裏切者扱いされて元仲間に撃たれます。
銃声を聞いたハントレスはマイキーの元に行きますが重症でした。

ハントレスはバットマンに会いに行き、避難所(教会)は自分に任せてマイキーの治療を頼みます。



ハントレス「頼み事は大嫌いなのよ!頼んでるんじゃない。人の命を救えって言ってるのよ!

わたしを信じて。

わたしはあなたに認めてもらうために、あなたが思う以上にずっと努力してきたわ。だから、避難所のことは任せてほしいの。」

バットマン「教会の裏手に連れてこい」

ハントレス「ありがとう」



ハントレスのこのツンデレ感が好きです。
バットマンはレスリー・トンプキンスが管理している医療キャンプまでマイキーを運んで治療を頼みます。

マイキーの治療が終わり、去ろうとするバットマンをレスリーはブルースと名前を呼んで引き止めます。
レスリーは幼い頃からブルースを知っておりバットマンの正体であることも知っていました。
バットマンはマスクを脱いでレスリーに抱きしめられます。

バットマンがレスリーになぜ避難をせずにゴッサムシティに残ったのか聞くと、ブルースの亡き父であるトーマス・ウェインの事を語り、助けを必要とする患者がいるからでありトーマス・ウェインのためでもあると話します。



レスリー「あなたはなぜ残ったの?」

バットマン「レスリー、理由の一つは・・・あなたがいるからだ」



バットマンのこういう義理人情に厚いところも好きです。
バットマンはペンギンの元を訪れてペンギンから重火器が教会の地下に隠されていることを聞き出します。

スケアクロウは裏で色々と手を回し教会内に不和を引き起こし、さらにマイキーの元仲間達を扇動して教会を襲わせて避難民達の恐怖を煽ります。
避難民達も重火器を取り出し一瞬触発の状態になりますがそこに更にペンギンの部下達が現れゴッサム市警達も向かいます。

バットマンが現れペンギンの部下達を蹴散らし、スケアクロウが色々裏で動いていたことも暴かれてスケアクロウは避難民達から襲われそうになりますがスケアクロウは恐怖と絶望に支配された人々を見て喜びます。
しかしハントレスはそれを見抜き、避難民達を止めて逆に愛の深さを思い出させてくれたスケアクロウに感謝するように説きます。
絶望ではなく希望を見出した人々に囲まれてスケアクロウは怯えます。

クリス神父と教会の人々によってペンギンの重火器は川に捨てられ、計画に失敗し敗北したスケアクロウは恐怖に怯えてマスクを燃やして嘆きます。

感想

本作の中では1番好きなエピソードです。
スケアクロウは好きなヴィランですしハントレスも好きなので。
とにかく各キャラクターの深みが良いです。
バットマン、ハントレス、レスリー、スケアクロウ、クリス神父、マイキーとそれぞれ信念や理想がありそれを貫こうとする姿が良く描かれてます。
ペンギンも狡猾でバットマンが来ても怯まないなどペンギンらしさが描かれていて良かったです。


階下の悪魔

解説・感想

アズラエルがメインのエピソード②。

ニコラス・スクラッチが登場してアズラエルと対峙しますが逃げられます。
ゴッサムに居る駆け落ちした娘のミツィを探す母親に同行して探す中でカリバックスという食人鬼の大男をアズラエルは倒します。
母親はミツィと再会しますが父親が死んだのはミツィが駆け落ちしたショックの発作だと言ってミツィに銃を撃ちますがわざと外します。
ミツィのことは許せないが大事な娘とのこと。
じゃあ撃つなよ危ないだろって思いますがアズラエル曰く幸せな幕切れらしいです。
一応は、少なくともノーマンズ・ランドでは、とのこと。

地獄の歓楽

主な登場人物

バットマン(ブルース・ウェイン)

自身がゴッサムシティに戻ってきたことを示すことで治安の改善を図ろうとする。

ペンギン(オズワルド・コブルポット)

ゴッサムシティの暗黒街のボス。
ゴッサムシティが無法地帯になってからは物々交換の市場と情報で地位を確立して支配している。

解説・感想

バットマンとペンギンがメインのエピソード。

バットマンは自身がゴッサムシティに戻ってきたことをゴッサムシティ全土に知らせることで無法者達に恐怖を思い出させて治安の改善を図ろうとします。

オラクルに相談したところペンギンがイベント(ペンギンの部下と市民のデスマッチの賭け)を行うとのことでバットマンも飛び入り参加してペンギンの部下を全員倒します。
ちなみに賭けはペンギンの予想に反してバットマンがペンギンの部下を全員倒すに賭けた人が多く、市民のバットマンへの強さのイメージが良くわかります。

バットマンはペンギンと交渉してペンギンの得た情報を自身に渡すように約束をさせるのでした。

好きなヴィランであるペンギンがメインのエピソードですが小物っぽい描写が多く服装も黒ではなく白でちょっと残念でした。


モザイク

主な登場人物

ブラックマスク(ロマン・シオニス)

元々はペンギンと並んでゴッサムの裏社会を仕切っていた黒いマスクを被っているヴィラン。
本作ではマスクを着けていないが狂気的な顔に描かれていてマスクを着けている時より怖い
どうやら正気を失っているとのこと。

オラクル(バーバラ・ゴードン)

ゴードンの娘で元バットガール。
ついにバット(2代目バットガール)の存在を知り激怒する。

バットマン(ブルース・ウェイン)

バットの存在を知ったバーバラにブチ切れられる。

バット(2代目バットガール)

バットマン風のコスチュームを着た正体不明の女性。
バットマンは正体を知っているようだがバーバラには言わなかった。

ロックアップ(ライル・ボルトン)

自分の正義感で悪人を裁いていく自警団員。
バットマンと違い法規の基準ではなく自分の基準で悪を裁く。
犯罪者をブラックゲート刑務所に収容して管理している。

KGビースト(アナトリー・ナイアチェフ)

旧ソ連時代から活動している暗殺者。
バットマンに捕まらない為に左手首を切断してそこにマシンガンを移植している。
ロックアップと共にブラックゲート刑務所で犯罪者を管理している。

解説・感想

ブラックマスクとオラクルがメインのエピソード。

マスクのないブラックマスクの顔は白目で歯がむき出しでマスクの時より怖いという。
しかもイラストもリアル調でブラックマスクもバットマンも余計に怖いです。

無法地帯となったゴッサムシティの犯罪者をブラックゲート刑務所に収容して管理しているロックアップとKGビーストに対してやりすぎないように監視している旨を伝えるバットマン。
ヒーローにもヴィランにも見えるコスチュームに身を包むロックアップとKGビーストはちょっとかっこいいです。

オラクルの居るクロックタワーを狙うブラックマスク率いる軍団を止める為にオラクルがブラックマスクを狙撃しようとするとバット(2代目バットガール)が現れてブラックマスクを倒すがオラクルは侮辱的だとバットマンに怒ります。

バーバラはバットガールだった時のことを毎日夢に見るほどバットガールに戻りたがっていたのに違う女性がバットガールになり、バットマンと共に居たことが許せないのでした。

バットマンとオラクルの溝は広がるのでした。

途中でゴードンとサラ・エッセンが喧嘩をしていると思ったらいつのまにかキスをしているというシーンが入ります。(何を見せられているんだ)

オラクル(バーバラ・ゴードン)の元バットガールとしての想いが語られる良いエピソードでした。

運命の反転

主な登場人物

レニー・モントーヤ

正義感の強いゴッサム市警の女性巡査。
本エピソードの主人公。

トゥーフェイス(ハービー・デント)

元々は正義感の強い地方検事だったが顔の半分を酸で焼かれてから凶悪な人格が出てきてヴィランと化してしまった男。
コイントスの結果に従うという特徴がある。
コイントスの表が続いた結果善人のようになってしまった。

バットマン(ブルース・ウェイン)

最後にトゥーフェイスを捕まえようと登場する。

解説・感想

レニー・モントーヤとトゥーフェイスがメインのエピソード。

物語はゴッサムシティに震災があったすぐ後と他のエピソードよりも時系列が前になります。

ゴードンから休むように言われて休暇していたゴッサム市警巡査のレニー・モントーヤが自身の兄弟を探したら兄弟はトゥーフェイスと一緒に居て彼女はトゥーフェイスを捕まえようとするがトゥーフェイスはコイントスで表が出続けた結果善人になり震災で助けが必要な人々を助けているとのことでした。

レニー・モントーヤはトゥーフェイスを信用しないが同行している内に人々を助けるトゥーフェイスを見て悪人なのか善人なのか分からなくなります。

バットマンが現れてトゥーフェイスを捕まえようとしますがレニー・モントーヤはバットマンに頼んで見逃してもらいます。
レニー・モントーヤはトゥーフェイスを救いたいのでした。
トゥーフェイスのコインはレニー・モントーヤが預かります。
その様子をバットマンは見ているのでした。

意外な組み合わせのエピソードでした。
ヴィラン化する以前のハービー・デントのごとく善人となったトゥーフェイスの姿も珍しくて良かったです。

狂気の隠れ家

解説・感想

ジョーカーの隠れ家に侵入した市民2人組がジョーカーの狂気に触れる話。

ジョーカーの隠れ家にはジョーカーの狂気の片鱗が見られる物が沢山ありました。
その中には2代目ロビンであるジェイソン・トッドのコスチュームが白骨死体に着せられて『俺が勝利した日』と書いてあるのでした。(白骨死体はジェイソンのではありません)

恐ろしさに逃げ出そうとした2人を2代目バットガールが救いますが隠れ家は爆発し、隠れ家にあった飲み物を飲んだ女性は狂ったように笑うのでした。

本人は登場しませんがジョーカーの狂気が描かれている短編エピソードでした。


ハロルド

主な登場人物

ハロルド・オールナット

障害でしゃべることのできない腰の曲がった男性。
機械の設計や製造に関して天才的な腕を持つ。
元々はペンギンも部下だったがバットマンに助けられて以来技師としてバットケイブで生活してバットモービル等の整備をしていた。
たぶん日本だとガチのバットマンファンしか知らない隠れバットファミリー。

解説・感想

ハロルドがメインの短編エピソード。

震災によりバットケイブ内はめちゃくちゃになりバットモービル等も壊れてしまいハロルドは直そうとしたが状況的にアルフレッドから修理不要と言われてバットケイブ内から出ることになる。
失意の中バットケイブを去るが震災で崩壊したゴッサムシティを見て仕事ができると喜びゴッサムシティに向かうのでした。

バットマンの元を去ったハロルドのその後とバットマンとの再会は『バットマン:ハッシュ』で描かれます・・・

自分は先に『ハッシュ』を読んでいたのでハロルドの登場に驚きました。


甘美な死の罠

主な登場人物

ジョーカー

ついに登場したバットマン最大のライバルだがゴッサムシティが既にカオスなのでやることが無いと嘆きバットマンを殺そうと画策する。

アズラエル(ジャン・ポール・バレー)

バットマンにジョーカーを捕まえるように頼まれてジョーカーと対峙することになる。

解説・感想

ジョーカーとアズラエルがメインのエピソード。

子どもを人質にジョーカーがバットマンを誘い込もうとするがバットマンにジョーカーを探すように頼まれていたアズラエルが現れてジョーカーと対決をします。

ジョーカーには逃げられましたが子供を救出したアズラエルをバットマンは褒めるのでした。

真っ当にヒーローをしているアズラエルがかっこいいエピソードでした。
白昼堂々派手なコスチュームを着ながら街中を歩いているのはシュールでしたけど。


バランス

主な登場人物

アルフレッド・ペニーワース

ブルース・ウェインの執事でバットマンの活動もサポートしている。
バットマンがゴッサムシティに居ない間も多才な能力を活かして市民を助けていた。

解説・感想

アルフレッドがメインのエピソード。

アルフレッドはバットマンが居ない間に様々な特技を披露して市民を助けていました。
バットマンの語りて、護衛術、医術、偵察、さらに役者の能力等がアルフレッドにあることが明かされます。

アルフレッドは暴漢を相手に市民を守ろうとしますがそこにバットマンが現れて騎士と従者は再会をするのでした。

ウェイン邸の外でも有能なアルフレッドのエピソードでした。
子供達にバットマンのことをおとぎ話のように語るシーンが好きです。


安らぎの我が家

解説・感想

とあるゴッサム市民のおじさんがメインの短編エピソード。

元軍人で戦後まもなくゴッサムシティに住み始め、奥さんと共に過ごした家をゴッサムシティ崩壊後も守り続けていた軍曹と呼ばれているおじさんが居ました。

近所の人々や子供達に好かれていましたが、ゴッサムシティは無法地帯となり家を襲った男がかつて相手をしていた子供だったことに軍曹はショックを受けます。

ビクター・ザーズやジョーカーにも襲われますが気概に対応し、思い出の深い自身の家を守り続けるのでした。

ゴッサムシティで生きるということの大変さが分かるエピソードでした。
信念を持って生きるおじさんはかっこよかったです。


訪問者

主な登場人物

スーパーマン(クラーク・ケント)

クリプトン星からやって来た最強の正義の超人。
ゴッサムシティの惨状を知り、救いの為にゴッサムシティを訪れ発電所の復旧に成功するがゴッサム市民の現状とルールを知ることとなる。

バットマン(ブルース・ウェイン)

ゴッサムシティに来たスーパーマンに対して立ち去るように警告する。

ミスター・フリーズ(ビクター・フリーズ)

冷凍スーツに身を包み冷凍銃を扱うヴィラン。
スーパーマンが復旧させた発電所を制圧しようとしてスーパーマンと対峙する。

マッドハッター(ジャービス・テッチ)

不思議の国のアリスに憑りつかれたヴィラン。
ゴッサム市民から物資を搾取していたところをスーパーマンに蹴散らされる。

解説・感想

スーパーマンがメインのエピソード。

アメリカ政府に見捨てられたゴッサムシティの人々を救いについにスーパーマンが訪れます。
早速市民から物資を搾取していたマッドハッターの帽子を頭から首元まで下げて倒して市民達を救います。

その現場を見ていたバットマンを見つけてスーパーマンは近づいてゴッサムシティを救いたいと言いますがバットマンは立ち去れと突き放します。
しかしスーパーマンも本気でゴッサムシティを救いたいので聞き入れません。
バットマンはスーパーマンに24時間与えて正しいと思うことをやってみろと言うのでした。

スーパーマンは先ほどマッドハッターから助けた発電所の技術者と共に発電所を再建して電力を確保しようとします。
技術者のヘルメットを見つけて渡すところはとてもヒーローらしいです。

無事発電所を再建しましたがミスター・フリーズの妨害で電力が戻りません。スーパーマンにはフリーズの冷凍銃は効かず、フリーズを脅して発電所を守るように指示をします。

技術者の元には我先にと電力を欲しがるゴッサム市民が群がっていました。
技術者が断るのも聞かずゴッサム市民達は物資を渡して電力を求める様をスーパーマンは見て、バットマンの言葉が正しく今のゴッサム市民は救えないと悟るのでした。



スーパーマン「君が正しかった。今わかったよ。今の彼らは救えない」

バットマン「私も最初の頃は君と同じだった」

スーパーマン「どうする気だ?どうやって街を取り戻すんだ?」

バットマン「わからないが、方法はある。きっと」



最強の超人であるスーパーマンにもゴッサムシティは見放され、スーパーマンは去って行きました。


ゴッサムシティの闇に対してはスーパーマンも無力という印象的なエピソードでした。
ゴッサムシティを守るのは誰でも良いのではなくゴッサムシティに住むバットマン達がふさわしいと思えるような話でした。
ヴィラン達を一蹴するスーパーマンの強さは爽快感があって良かったです。

しかし他のジャスティス・リーグのメンバーや他のヒーロー達が助けに来ないあたりバットマンもゴッサムシティも他のヒーロー達から嫌われてるんだろうなあという感じです。


灰色のモラル

解説・感想

バットマンがメインのエピソード。

ロックアップ達が管理していて安全が保障されているブラックゲート刑務所に入りたくて犯罪者の振りをする市民や誰の子か分からない赤ちゃんの母親の座を巡り争う女性達などモラルの低下したゴッサム市民にバットマンが翻弄される話。

バットマンが赤ちゃんを預かることになり悩むバットマンにアルフレッドが父親トーマス・ウェインの善性がよく分かる思い出話をします。

ブラックゲート刑務所に入りたがっていた市民は2代目バットガールにゴッサム市警の縄張り内で働くことを促され、赤ちゃんを巡っていた女性2人に対してバットマンは2人で協力して育てるように誓いをさせるのでした。



「さすがのバットマンも育児のことは無知なのね」

「ええ。でも、人間のことはよく知っているわ」



地獄みたいなゴッサムシティの中でも光の兆しが垣間見えるエピソードでした。


光への第一歩/悲しみの舞

主な登場人物

アズラエル(ジャン・ポール・バレー)

ゴッサムシティで懸命に市民を守っているが物資がギリギリの状況で低下していく治安とモラルに悩まされる。

オラクル(バーバラ・ゴードン)

今まで無線でやり取りをしていたアズラエルと対面してからかったりお姉さんっぷりを発揮する。
デスダンサーに狙われる。

レスリー・トンプキンス

アズラエルを見てすぐにバットマンの仲間だと気づく。
包容力が有り若者たちに慕われている。

デスダンサー

殺す前に被害者の前で幸福の舞を踊るという仮面を付けたヴィラン。
苦しみを解放する為だと語りバーバラを狙う。

解説・感想

アズラエルがメインのエピソード③。

ゴッサムシティにデスダンサーという被害者を殺す前に舞を踊るというヴィランが現れます。

アズラエルは今まで無線でやりとりをしていたオラクルと出会い、仲を深めます。
オラクルは今までアズラエルに恋人がいるのかなど訊いていたが軽口だったとして本気にしないように言いますが本気にしていたアズラエルはショックを受けます。
しかしアズラエルはオラクルを姉のように思っていたとのことでオラクルもそれを受け入れるのでした。

オラクルからデスダンサーの件でレスリー・トンプキンスに相談するように言われアズラエルはレスリーに出会いますがバットマンのように暴力的だと言われます。

デスダンサーの被害者は増え、レスリーはアルビン・コザーズという男が怪しいと話します。
一方でデスダンサーは歩けないオラクルの苦しみを解放すると言いオラクルを殺そうとしますがそこにアズラエルが現れます。



アズラエル「アルビン、僕が相手だ」

デスダンサー「お前は誰だ」

アズラエル「アズラエル。とても苦しんでいる」



ここのシーンのアズラエルは夕日をバックにしてかっこいいです。
アズラエルはデスダンサーを倒します。

レスリーもアズラエルを受け入れて生きている限り苦しみはなくならないと語るのでした。


バットマンが一切登場しないエピソードでしたがその分アズラエルが存分に活躍していて良かったです。
アズラエルをかなり好きになりました。


まとめ

以上がバットマン:ノーマンズ・ランドの1巻の内容です。

無法地帯となったゴッサムシティとそこに生きるバットマン達とヴィラン、ゴッサム市民の生き様が交差して様々な物語が起こりました。
起承転結の起とも言える巻で色々と伏線と疑問が貼られています。

以下今後の物語に続く要素です。

・バットマンを嫌悪するゴードンとバットマンの関係性の行方
・アズラエルの追うニコラス・スクラッチの行方
・バット(2代目バットガール)の正体
・ジョーカーの行方
・トゥーフェイスとレニー・モントーヤの関係と行方

などなど・・・各ヒーローとヴィラン達がどうなるのかも楽しみですね。

1巻ではバットマンはゴッサムシティ全体を監視するような立場で個々のエピソードではオラクル、バット、ハントレス、アズラエルが動いている印象でした。
レスリー・トンプキンスも仲間とは違いますが医者の立場でゴッサムシティを癒しバットマンであるブルース・ウェインの理解者でもあるという良い立場となっています。

エピソードが豊富な分、ふだんはあまりメインで見ないキャラクターのメインのエピソードが読めたりただのゴッサム市民が主役だったりと面白かったです。


というわけで『バットマン:ノーマンズ・ランド(1)』でした!

読んで頂きましてありがとうございました!


次回の感想は『バットマン:ノーマンズ・ランド(2)』となりついにゴッサムシティにナイトウィング、ロビン、キャットウーマンが訪れます!

また読んで頂けると嬉しいです!

よろしくお願いします!

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