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「覚醒」と見るのは時期尚早。岡崎に帰ったのは、元康的には大失敗では?第2回「兎と狼」もっと深掘り【どうする家康】

NHK大河ドラマ『どうする家康』第2回の深掘り感想です。
前回の感想はこちら↓

(※以下、ネタバレ注意)

本当は「覚醒」なんかしてない!ラストの「どうしよう?」の意味

今回の「もっと深掘り」は、岡崎に帰ることを選んだ元康(家康)くんの心情を深掘りしていきたいと思います。

個人的には「早くもヘタレ主人公、覚醒したよ!」と思って第1周目視聴した時にはボロボロ泣かされた回ではありました。しかしネットでは「もう覚醒?」「展開が薄っぺらい」「なんで松平昌久に『道を開けーい!』と叫んだだけで通してもらえたのか意味不明」といったネガティブな意見も上がっているようですね。

そうか、俺は薄っぺらくて意味不明なものに感動していたのか……って、そうじゃネーダロ!wやっぱり、割と深掘りできてない方が多いんじゃないかな?と思ったわけですよ。こりゃ補足が必要だと。

見方がわかってないだけなら、見方を示してあげれば一気に楽しめるようになるハズ。僕も去年の『TARO MAN』なんか、当初はYoutubeで見て「ツマンネ」とけなしてましたけど。先輩ライターさんに「あれは番組終わりの、サカナクションの山口一郎の70年代当時の振り返り(※虚構)トークまで込みで楽しめる」と見方を教わりまして。テレビの再放送で見てようやくゲラゲラ笑えるようになったもんです。

……と、話が逸れたな。

ともかく元康が「覚醒」したかどうか。少なくとも1回目見た時はそう思えるので、少年漫画好きの僕みたいな人は興奮したでしょうし、そうじゃない人は冷めたと思うんですよ。

でも、ラストシーン。また元康が「どうしよう!」と一人で部屋に閉じこもって言った瞬間に「あれ?」となったと思うんですね。「またヘタレに戻っちゃった??」と。

そもそも元康、「覚醒」なんかしてなかった、というのが今回の記事で深掘りしていきたいところです。

そもそも駿府に行くはずでは?なぜ岡崎に帰ったのか

だって元康くん、最初は岡崎なんかに帰るつもりなかったじゃないですか。「(人質だから)勝手に帰ってはいけないことになっておる」とか言ってましたけど、何より瀬名と子供に会いたかったんですよね。

でも、松平昌久とかいう敵に襲われてしまった。ちなみに苗字が同じという点からもわかるように、元康くんとは遠縁に当たります。

けれど家系図を探しても、遠縁すぎてなかなかつながりを載せてくれてるやつが見つからないんですよ……一応、某SNSでは、昌久の曽祖父が、元康の曽曽曽曽祖父に当たる??みたいな家系図を見たのですが、ソース(出典元)がわからないので載せません。

ただ、父である松平昌安の代には岡崎城の城主だったらしいんですけど、元康の祖父である清康の代にバトルがあって、城を明け渡してしまう、と。

それで元康一族の軍門に降りながらも、「元康!テメーのジジイのせいで俺は城の主になれなかったんだ!もともと岡崎城は俺の父ちゃんの城だ!いつの日か、岡崎城を奪い返してやるからな‼︎」って闘争心をたぎらせて何度も裏切ってくるということだったようで。

そして今回の、桶狭間直後の裏切り。ハッキリ言って昌久的には大チャンスでした。元康が頼りにしていた今川義元も死んでしまったし、元康にはいま後ろ盾が何もない状態だ、今なら倒せる!と。

しかしここで元康くんが言い放ったセリフですよね。

「岡崎で我が帰りを待つ千の兵たちが怒りの業火となって、貴殿の所領に攻め入るであろうからしかと覚悟せよ。また、いったんは敗れたる今川であれど、新当主・氏真様のお力で早晩立ち直るは必定!その今川と我らを一度に相手できるならばやってみよ!」

たぶん長台詞すぎて、1周目しか見てない人には何言ってるかわかんなかったと思うんですけど……要は「覚醒」したのではなく、「ハッタリをかました」だけ。

しかしそのハッタリのせいで、実際に部下たちを鼓舞しなきゃいけなくなりましたから。それで岡崎に帰る必要ができてしまいましたし、瀬名の元には帰れないという状況を自ら作り出してしまった、と。

それゆえの、岡崎に帰ってからの「どうしよう」だったってわけなんですね……。

兵糧を運んだ軍勢が千人。結果、ウソップばりの大嘘に?

そもそも大高城に兵糧を運んだときの軍勢が千人らしいですから、丸根砦を攻める時なんかでも相当数の兵力が削られてるわけです。そして大高城を後にした際には、多くの兵に暇(いとま)を取らせて岡崎に帰らせてますけど、残った数名の家臣たちもまた、昌久の攻撃で大ダメージを喰らってると。

スタート時点の千人からだいぶ減ってるのに、どう考えても「千の兵たちが怒りの業火となって、貴殿の所領に攻め」入れられるわけがないんですよね。『ONE PIECE』のウソップみたいなもんで、「俺の後ろにはウン万の子分たちがついてるぜ」なんて言って相手を脅すようなもんです。

ただ、昌久にとっては岡崎に残ってる兵の数なんてわかってませんから。しかも今川まで攻めてくる⁉︎なんて言われたら、そりゃ尻込みもするでしょう。

なお、今川に関してはまったく未知数。嫡男の氏真だけで立て直せるかどうかもわからないのに、早晩立ち直るは必定なんて言っちゃっていいの?そして、立ち直したからって、勝手に岡崎に勝手に帰るっつってる元康の手助けなんかするの??と、冷静に考えればツッコミ所満載なんですけど、あの剣幕で言われたら素直に従っちゃうよねと……。

つまり「『道を開けーい!』と叫んだだけで通してもらえた」のではなく、しっかり「俺にはまだ後ろ盾があるんだぜ」と交渉した上での突破劇だったというわけなんです。

「覚醒」ではなく「狸親父」の片鱗を見せただけの元康。古沢ドラマならではの邪道展開にワクワクw

というわけで……「覚醒」したのではなく単に「ハッタリ」かましただけの元康くんだったということで。イケメンな元康くんではなく、将来「狸親父」と呼ばれるに至るような、詐欺師の片鱗を見せたという結末だったんですね。

深掘りしていくと、ぜんぜん少年漫画な感じじゃなかったでしょう?王道をいくと見せかけて、完全に邪道のストーリーが展開されていたのです。

僕みたいに、「少年漫画的な展開!」と思っていた人たちには「嘘だろ、俺が流した涙、返せよww」なんて気持ちになるかもしれません……。

もともと古沢良太ドラマ、『リーガル・ハイ』もそうですし、『コンフィデンスマンJP』もそうでした。登場人物たちも人を騙すし、最後には視聴者をも騙す。どんでん返しにつぐどんでん返しのストーリーテリングを得意とする作家さんです。今回もその古沢節がきいた作品展開になってるなーと思わせるんですが。

ただ、「どんでん返しに次ぐどんでん返しって、結局ミステリーってこと?コメディってこと?そういうんじゃなくて、ヒューマンドラマ的な展開で普通に泣きたいんだけど……」なんていう視聴者の方もいらっしゃるかもしれません。大丈夫です。ずっと古沢ドラマを見てきた僕だから言えるのですが、泣かせるところはちゃんと泣かせてくれる作家さんでもありますから。

特にこのあとの展開を考えたら……おっと、史実の先取りはやめておきましょう。もっとも、ドラマなのですから、史実通りに進むとは限りませんけどねw


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