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色使いや光の当たり具合で木の立体感や湯気などの難しい描写を見事に表現する藤井りんさんの作品を鑑賞しました。

作者:藤井りん

この作品は寒い季節が舞台の作品であり、寒い日に美味しい、屋台のラーメンの湯気がとてもよく描かれています。湯気などの揺れ動く気体は描くのがとても難しいと思いますが、湯気特有の湯気の向こう側の景色が見えるうっすらと、くぐもったった透明感や温かい湿気までもが表現されており、ラーメンの熱、温度がこちらにもしっかりと伝わってきます。
また偶然かもしれませんが、ラーメンの器の赤色と女の子が首に巻いている赤い襟巻きの色がお揃いで、女の子の着ているオレンジ色のコート以外、暖色系統の色が少ないのでさらに鮮やかに映えて見えます。
ここからも作者さんの細かい作品に対する工夫が見て取れます。

この作品は女の子を見つめる犬の表情が絶妙で犬が何を考えながら、女の子を見つめているのかと考えて作品を見るのがとても楽しいです。
私が驚いたのは女の子と犬の後ろに広がる木々の風景です。木ひとつひとつの幹の色や葉の色を単純に緑一色や茶色一色にべったりと塗るのではなく、木の幹の円柱状の物に対する光の当たり具合をうまく表現して木の幹の立体感を表現したり、奥にある木ほど枠線をぼかして手前の木より小さく描くことによって奥行きを出しています。また木の茶色い幹の色や緑の葉の色にも微妙な色遣いの違いを出して、グラデーションをつけています。

この作品は女の子の目に光が宿った生き生きとした表情が印象的な作品です。この年齢特有のふっくらとした健康的な肌の張りや、血色の良さをとても上手に表現されており、また若干、赤い頬の色が寒さを見事に表現しています。とても色使いがうまく、色使いを工夫することによって、絵を見る人にここまでいろいろなストーリーを届けることが出来るのだなと驚きました。

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