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上空へ伸ばす手を握りしめてくれるという「救い」

昨日は1日冷えましたが、今日は朝から暖かい日差しが降り注いでいます。

連日夫はゴルフに出かけていますので、私は家事を一通り終えると読書に専念しています。

そして昨夜読み終えたのは小林由香さんの新刊です。

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音海星吾は美術サークルに所属する大学生。中学生時代、不良に絡まれた星吾は、彼を助けようとして身代わりに刺された青年を見捨てて逃げてしまう。青年はその後死亡したため、星吾はネット社会を中心とした世間の誹謗中傷を浴び続ける。
大学入学後も星吾は心を閉ざして生きていたが、ある日、ホームから飛び降りようとした中年男性に「そんなに死にたいなら、夜にやってよ。朝やられると迷惑なんだ」と心無い言葉をぶつけてしまう。現場を目撃していた同じ大学の学生・紗椰にその言葉を批判されるが、それがきっかけで星吾は彼女と交流を持つようになる。星吾は心惹かれるようになった紗椰に思いを告げようとするが、自らの過去の重みのため、踏み出すことができない。コンビニのバイト仲間の吉田光輝、美術サークルの顧問・宇佐美ら周囲の人間との交流を通して、徐々に人間らしい心を取り戻しかける星吾。
そんななか、星吾を狙うように美術室の花瓶が投げ落とされ、さらに信号待ちの際、車道に突き飛ばされるという事件が起こる。星吾を襲う犯人の正体は? そして星吾の選択とは――。(Amazon内容紹介抜粋)

14歳の少年は自分を救ってくれた青年が亡くなったことに、少年は直接的な罪を犯したわけでないけれど、現場から逃げたという罪の意識に悩み、苦しんでその後生活しています。
しかし少年を救い亡くなった青年の遺族や恋人の無念は、加害者犯人が刑罰を受けても晴らされることなく、むしろ事件の発端となった少年に向け復讐心を強くしていくという物語です。

さらに主人公音海星吾が知り合う人々が、彼同様に過去に罪の意識を持って暮らしている人ばかりというのも、物語の中で大きな意味を持っています。

最後50ページ以降で衝撃の事実が明らかになりますが、ミステリーとして多重構造であるこの作品は、被害者遺族について深い問題提起がある作品と言えると思います。

星吾の亡くなった祖父の言葉

「星吾はじいちゃんの大切な宝物だからな。これだけは忘れないでくれ」

星吾が好意を抱く黒川紗揶に対して

「一度過ちをおかした自分は、人を好きになる権利がないんだ」

どんな人間でも家族は愛しく、人を愛する気持ちを持つことは罪でないと著者が声を大きくして訴えている気がして、この2つの言葉が心に刺さりました。

さらに最後に出てくる星吾が描いた「救い」という油絵が、この物語に登場する全ての人への彼の思いが詰まっていて、これにも感動しました。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
2月も今日で終わりです。あなたにとってかけがえのない1日となりますように。

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