できない相談piece of resistance(37-50)
誰もが日常的に何かと気持ちをすり合わせながら、生きているとお思います。
「ひとがなんと言おうと、私は我慢しない」こうはっきり言えたらなんと気持ちよく生活できることだろうと、多くの人が思っているでしょう。特に、今年のようなcovid-19で我慢を強いられている時は尚更かもしれません。
昨夜読み終えたのはそんな日常の小さなことに抵抗する短編が収められた、森絵都氏の作品です。
なんでそんなことにこだわるの?と言われても、人にはさまざま、どうしても譲れないことがある。夫の部屋には絶対に掃除機をかけない女性、エスカレーターを使わないと決めて60年の男性……。誰もがひとつは持っている、そんな日常の小さなこだわり・抵抗を描いた38の短篇。スカッと爽快になったり、クスッと笑えたり、しみじみ共感したりする38のresistance。人生って、こんなものから成り立っている。そんな気分になる極上の小説集。(Amazon内容紹介より)
私が思わず納得してしまったのは、「書かされる立場」と「羊たちの憂鬱」の2作品。
「書かされる立場」ではヘルマン・ヘッセの「少年の思い出」」によって、男子2人女子2人が作中登場者の立場で感想文を書いているのですが、4人目の女子がこう最後に書いているのが、今学生達が共通して抱く読書感想文への思いだろうと凄く納得してしまいました。
先生達は何かと生徒に読書感想文を書かせたがりますが、小説の好みは十人十色です。(中略)教科書という選択不可能な教材から一方的に「道徳的な読書」を押しつけられた上、感想文までも強要される生徒の立場にも立ってみてください。p38
さらに「羊たちの憂鬱」では、ある一人の女子大生が学生時代友人の口癖が気になりながら、友情を壊しそうで言えず、社会人になって集まった席で、思い切って言おうとしたところ友人たちの方から、自分の口癖を指摘されるというものでした。
その口癖というのが
「いま思えば」「わたしなんか」そして「なんか面白いことない?」
結構女性が使いやすい言葉ですよね(もちろん、言葉を変えて男性も口にする方見かけますけど)著者の視点が鋭くて、ついニヤとする短編でした。
このほかにも読む方にとって、うなずける場面が必ず見つかるだろう作品集、気軽に手にとって読んでみてください。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。これからも励みますね。