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争いの中で、もっとも意味のないもの

8人の作家が二つの一族が対立する歴史を競作の形で描くという「螺旋プロジェクト」

今日読み終えたのは、プロジェクト5作目で、ここから女性作家が2人続くのですが、まずは乾ルカ氏が登場し、「蒼色の大地」の明治と「シーソーモンスター」の昭和後期の間を埋める形で昭和前期を舞台にして描かれた作品です。

        (Amazonから画像をお借りしています)

太平洋戦争末期。敗色濃厚の気配の中、東京から東北の田舎へ集団疎開してきた小学生たち。青い目を持つ美しい少女、六年生の浜野清子もそのひとりだった。その目の色ゆえか、周りに溶け込めない孤独な彼女が出会ったのが、捨て子で疎開先の寺の養女、那須野リツ。野山を駆け巡る少年のような野性を持つリツも、その生い立ちと負けん気の強さから「山犬」と揶揄される孤独な少女だった。だが、それは「海」と「山」という絶対に相容れない宿命の出会い。理由もなくお互いを嫌悪するふたりだが、ひとりの青年をめぐり、次第に接近してゆく…。これは、戦争という巨大で悲劇的な対立世界を背景に、血の呪縛に抗い、自らの未来を変えようとした、ふたりの少女の切ない物語。 (「BOOK」データベースより)


読みやすく、読後感も悪くないです。

これまでの作品に比べて地味ですが、ジワリと胸に染みてくる場面も多く、螺旋プロジェクトのルールを荒唐無稽にならず、特に付けているものの命を一度だけ救って壊れてしまうという、蝸牛(螺旋を意味?)型のアクセサリーを物語の中心に置いたところはうまいと思いました。

太平洋戦争、疎開先で出会う都会の女の子と田舎の女の子、喧嘩、仲直り(?)を、しようと頑張る筋書きは、 夏休み真っ最中の中学生にうってつけと言えるかもしれません。

原爆投下、終戦の日を迎える今、大人にももちろん読んでいただきたい作品だと思います。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。これからも励みますね。