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網内人 (39-50)

三連休の方も最終日ですね。ゆっくりお休みできているでしょうか?

まずはいつも私のnoteを読んでくださっている皆様にお礼を申し上げます。

このnote事務局からのお知らせで、更なるnoteを書く気力をいただきました。これからもよろしくお願いします。

さて先週に借りた本は日本の作品ばかりでしたが、今回の貸し出しで、私は翻訳本をいくつか借りてきました。

今日紹介するのは香港の大学を卒業し、台湾で執筆活動しつつ、日本の文芸誌での作品発表、受賞歴もある陳浩基氏の作品です。

ネットいじめを苦に女子中学生が自殺。姉のアイはハイテク専門の探偵アニエの力を借りて、妹の死の真相に迫る―。『13・67』の著者がいま現在の香港を描き切った傑作ミステリー。著しい貧困の格差、痴漢冤罪、ダークウェブ、そして復讐と贖罪。高度情報化社会を生きる現代人の善と悪を問う。(「BOOK」データベースより)

中学生の妹を自殺に追いやったのは誰なのか?ネットを介して巧妙に名前を隠し執拗に追い込む手口から犯人にたどり着いて、復讐を遂げられるのか?

という基本的な構造なのですが、「虐め」「IT」「世相」「格差」「学歴社会」「拝金主義」「香港」などたくさんのテーマが見え隠れする、単純なミステリーの枠を超えた読み応えのある作品です。

比較的早い段階で犯人は特定されるので、

姉は復讐を決意するのか、できるのか

というさらなる二重、三重の伏線にも見事にそして心地よく騙されました。また「インターネット」を漫然と使い続けている危険性に震える思いもしました。

本作で描かれている社会問題は決して香港だけの問題ではなく、日本を含めた今現在の先進国全てが抱えるものであり、そこから「正義」や「復讐」等の哲学的かつ根本的な領域にまで踏み込んでいた感があります。

特に「復讐」と「憎しみの連鎖」が本作の根幹となっている点は非常に考えさせられました。

本作で現在の香港の問題を提起し、今後連作を構想していると、あとがきで著者が述べているのは嬉しいことですが、訳者が述べているように、2020年以後の香港情勢を考えると、香港社会でこうした仕事人が活躍するストーリーを果たして描けるのであろうかと不安な状況ではあります。

とは言っても、陳浩基の作品は社会派の堅苦しい作品ではなく、純粋にミステリーを味わえます。ミステリーが好きにはオススメです。

著者の作品を読んだことがある方はもちろんのこと、まだ彼の作品を読んだことのない方にも是非手に取っていただきたいです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。これからもみなさんの読書に一役買えるようなnote記事を書きたいと思います。

明日からもよろしくお願いします。

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いつも読んでいただき、ありがとうございます。これからも励みますね。