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読書備忘録

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高田郁著「あきない世傳金と銀12 出帆篇」

高田郁さんの時代劇小説シリーズは欠かさず読んでいます。本作も早12巻が出ました。予約していた順番が回ってきたので早速読みました。 1.読んだ本の紹介 9歳で大阪呉服商五鈴屋に奉公に上がった幸も40歳。江戸浅草田原店で店を開いて10年経ちますが、藍染浴衣地で江戸中にその名を知られるも再び呉服を扱えるようにと、いう願いが本作で徐々に道筋が見えてきます。 2.この本を読んだ理由高田さんの作品の中で描かれる女性たちが特に魅力があります。主人公の幸はもとより、彼女を精神面で助ける

「ミシンと金魚」永井みみ

昨日久しぶりに紙の本を読み終えました。 1.読んだ本の紹介 暴力と愛情、幸福と絶望、諦念と悔悟……絡まりあう記憶の中から語られる、凄絶な「女の一生」。 2.この本を読んだ理由 第45回すばる文学賞を受賞した作品であること、そして著者が今一番身近な問題である介護・認知症と向き合うケアマネージャーであるということから興味を持ちました。 3.あらすじ認知症を患うカケイは、「みっちゃん」たちから介護を受けて暮らしてきた。ある時、病院の帰りに「今までの人生をふり返って、しあわせ

カツセマサヒコ著「明け方の若者たち」

コロナ禍での読書のため、購入しておいたKindle本を1冊昨夜読みました。 明大前で開かれた退屈な飲み会。そこで出会った彼女に、一瞬で恋をした。本多劇場で観た舞台。「写ルンです」で撮った江の島。IKEAで買ったセミダブルベッド。フジロックに対抗するために旅をした7月の終わり。 世界が彼女で満たされる一方で、社会人になった僕は、“こんなハズじゃなかった人生"に打ちのめされていく。息の詰まる満員電車。夢見た未来とは異なる現在。深夜の高円寺の公園と親友だけが、救いだったあの頃。

山白朝子著「私の頭が正常であったなら」

雪に埋もれた昨日でしたが、やっと雪が止み、一息ついています。 さて久々に本を読み終えました。 最近部屋で、おかしなものを見るようになった夫婦。妻は彼らの視界に入り込むそれを「幽霊ではないか」と考え、考察し始める。なぜ自分たちなのか、幽霊はどこにとりついているのか、理系の妻とともに謎を追い始めた主人公は、思わぬ真相に辿りつく。その真相は、おそろしく哀しい反面、子どもを失って日が浅い彼らにとって救いをもたらすものだった――「世界で一番、みじかい小説」。その他、表題作の「私の頭が

吉本ばなな著「違うこと」をしないこと

第6波が広がり、いつも以上に自宅で過ごす時間が増えて、時間は有り余るほどあるはずなのに、いつしか本を読む時間が減っています。不思議。 そんな中手軽に手に取ることができるKindle本は便利で、夜寝る前にベッドでゆっくりと味わって読むのは至福です。 そして昨夜読み終えたのは吉本ばななさんの作品。 「違うこと」とは、“その人の生き方の中で、今ここでするべきではない”こと。「なんか違う。」その直感がそう教えても、義理とかしがらみ、習慣に縛られて、我慢したり、そんな風に思う自分を責

綾崎隼著「死にたがりの君に贈る物語」

久しぶりに予約していた本が貸出可能と連絡が来たので、人に少ない昼下がりに図書館に行きました。その作品がこちらです。 未来屋書店大賞候補作品で、読みやすくて最後まであっさりと読めました。けれど、ストーリーの設定も内容も私にはあまり合いませんでした。展開も確かにミステリー風でしたが、その点も期待とは違いました。 人に傷付いたり信じられなくなってしまった人に対して、もう一度前を向く力を与えようとする作者の意図だけは理解できました。 全国に熱狂的なファンを持つ、謎に包まれた小説家

まさきとしか著「彼女が最後に見たものは」

夜中に幾度も雷鳴がし、隣のベッドで寝ている夫は何かストレスがあるのか、しきりにベッドの端を叩き、眠れぬ私はKindle本を読み、3時間ほど寝たところで、眠気が浅くなり久々に9時までにベッドから出ました。 眠れぬ夜に読んだ1冊がこちらでした。 著者の作品は初読みですが、この作品の前に「あの日、君は何をした」という作品があるそうで、この作品は続編に位置付けられています。このシリーズに登場の三ツ矢秀平刑事の個性と作品解決への道筋と作品テーマ「理不尽な死と家族の崩壊」によるもののよ

川上弘美著「某」

最近は年末年始で購入したKindle本を眠れぬ夜に少しづつ読んでいます。 やっと読み終えたのがこちらです。 「あたしは、突然この世にあらわれた。そこは病院だった」。限りなく人間に近いが、性的に未分化で染色体が不安定な某。名前も記憶もお金もないため、医師の協力のもと、絵に親しむ女子高生、性欲旺盛な男子高生、生真面目な教職員と変化し、演じ分けていく。自信を得た某は病院を脱走、そして仲間に出会う――。愛と未来をめぐる破格の長編小説。(Amazon内容紹介より) 説明するのが難し

逢坂冬馬著「同志少女よ、敵を撃て」

いよいよ来週発表の直木賞ですが、今回はデビュー作が候補になった作品があって、とても楽しみです。その作品がこちら 独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃っ

伏尾美紀著「北緯43度のコールドケース」

おはようございます。箱根駅伝の様子を聞きつつこの記事を書いています。 年末にこの作品を借りて読みました。 本の帯にあるように第67回江戸川乱歩賞を受賞した作品です。現在人気の高い作家を輩出した人気の高い賞です。 本作の魅力は博士号を取りながらも、付き合っていた男性の自殺をきっかけに研究者の道を自ら閉じて、キャリアの警察官となった女性を主人公としているところです。 昨今男女雇用の均等化を図るため、特に官の世界で女性の管理職登用の動きが活発化しています。 しかし、登用され

林真理子著「李王家の縁談」

久しぶりに紙の本を借りて読みました。 実在する梨本宮伊都子妃の日記によって、史実をもとに皇族の婚姻が細かく描かれています。 朝鮮併合、日中戦争という苦難の時代に、皇族の一員である一人の女性がたくましく時代を先駆けるように婚姻を通じて生きていく様は、時代を超えて私たちにも勇気を与えてくれます。 今はウイルスとの戦いで疲れている時代、本作を読んでさらなる未来に向かって、私たちは知恵を振り絞る必要があるようです。 いつの時代も、高貴な方々の結婚問題はむずかしい―― 梨本宮伊

「ミッテランの帽子」アントワーヌ・ローラン著

昨夜は今日からきちっとした時間で過ごそうと考えていたのに、朝になったら頭が重く、先ほどベッドから起き上がり、可燃ごみを捨て、洗濯を始めました。プロテインを1杯飲み、ルイボスティを入れて、PCに向かってこれを書いています。 その帽子を手にした日から、冴えない人生は美しく輝きはじめる。舞台は1980年代。時の大統領ミッテランがブラッスリーに置き忘れた帽子は、持ち主が変わるたびに彼らの人生に幸運をもたらしてゆく。うだつの上がらない会計士、不倫を断ち切れない女、スランプ中の天才調香

アントワーヌ・ローラン著「赤いモレスキンの女」

昨日は久しぶりにwebでの読書会「BookClub 紅茶はアールグレイで」の今月と来月の課題本を読みました。それがこちらです。 男はバッグの落とし主に恋をした。手がかりは赤い手帳とモディアノのサイン本。パリの書店主ローランが道端で女物のバッグを拾った。中身はパトリック・モディアノのサイン本と香水瓶、クリーニング屋の伝票と、文章が綴られた赤い手帳。バツイチ男のローランは女が書き綴った魅惑的な世界に魅せられ、わずかな手がかりを頼りに落とし主を探し始める。(amazon内容紹介)

小池真理子著「月夜の森の梟」

予約している本がなかなか貸し出し可能にならないので、夜ベッドの中で電子書籍を楽しんでいます。 朝日新聞で連載され大好評だったエッセイの書籍化です。圧倒的共感を呼んだと朝日新聞出版noteで知りました。 まず藤田さんの死に寄せて2020年2月19日掲載されたエッセイで シンプルな言葉によって、死別の悲しさが迷うことなく伝わりました。 さらに 日々が流れ周りに平気なふりをしていても、愛し生活を共にした日々は忘れるはずはありませんが、亡くした人との思い出はいつしか違ってき