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読書備忘録

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金子玲介 著「死んだ山田と教室」を読んで

急に気温が下がって、体調もすぐれない日が出始めていますが、未来屋書店大賞発表までに読める作品は読んでおきたいと、頑張って過ごしています。 今日紹介するのは「死んだ山田と教室」という作品です。 作品を手に取ってから、発売後TV番組「王様のブランチ」に作者の金子玲介さんが出演されていたのを思い出しました。 第65回メフィスト賞 受賞作であるこの作品は、各メディアで作者が述べておられるのですが、多くの純文学の賞に挑戦するも落選し、純文学に向いていないのではと、エンタメ系の文学賞

心にじんわりと染み入るとは、こういうことなのか

色々と身の回りを片つけていたら、こんな時間になってしまいました。もう少し早くnote更新に向かうはずが、一昨日より修正していたnotionの家計簿データベースが思うようにいかず、手こずってしまいました。 今日は阿部暁子さんの「カフネ」を紹介します。 2024年4月号「小説現代」に掲載されたものを加筆改稿して2024年5月22日講談社より304ページの単行本として発売されています。 主人公は野宮薫子41歳。法務局で働く公務員ですが、遅い結婚のせいか子宝に恵まれず、不妊治療

お久しぶりです

誕生日に記事をアップして、またしばらくおやすみいただきました。 その間にも私の記事に辿り着いて、読んでくださった方、さらにはフォローしてくださった方など本当に感謝です。 これからも連続投稿に縛られることなく、noteは続けていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお付き合いください。 お休みしていた間に、動画配信サービスで映画やドラマをつい観てしまっていましたが、ここ最近読書も再開しています。 12月には未来屋書店大賞というものが発表されるそうで、その候補作をいくつか

笑う森

ここ数日週末に私としては早めに起き出しています。やはり季節が移ろい、朝が冷え込んできたことが、頭に影響を及ぼしてきているようです。 頭痛も激しくなる時があって、やっぱりなとこれからの季節、秋冬に向かい覚悟を決めねばと思っているところです。 数日黙々と本を読む時間を作ったので、昨日も本を1冊読み終えました。 この作品は、出版している新潮社さんのメールマガかあら知り、図書館でも購入されたので借りて読むことができました。 今でも夏休みや観光シーズンになると、1、2件山の川辺

わたしの知る花

本作も思いがけず、借りることができた町田そのこさんの作品です。情報を何も仕入れることなく読んだのですが、それが良かったのでしょうか、それが幸いだったのか、とても心に沁みる作品でした。 安珠の幼馴染の奏斗は、「立派な男になってほしい」という母親の強い願いに生きづらさを感じています。そして安珠の軽いノリの言葉と、母親の言動に自殺を図ってしまいます。冒頭にこんな事件から始まり、偶然知り合った老人に興味が湧く安珠。 実際に罪を犯し、住んでいた町を追われるように出た老人平さんがなに

最後は笑ってさよならをしよう

題名に惹かれて手に取った本は、Twitter現在はXで140字の小説を掲載してまとめた作品でした。 まず「最後は会ってさよならをしよう」という作品があって、その第2弾として刊行された作品で、2024年7月2日KADOKAWAから240ページのソフトカバー単行本として発売されています。 一つの作品が140字ですので、とにかく読みやすく、あっという間に読めてしまいます。内容は恋愛に関するものが多いですが、友人や家族等に関するものも描かれています。 私が心に残った作品は 「

一穂ミチさんの描く世界

一押しの柚木麻子さんの作品「あいにくあんたのためじゃない」が直木賞を逃したことで、今回の直木賞受賞作「ツミデミック」をようやく昨晩一気に読んでみました。 Web bookshelfの「ブクログ」で一穂ミチさんの作品読書記録を確認したみたら、今までに5作品既読でその全てが高評価をつけていました。 今回はどうだったのか、 素直にとても面白かったです。どの作品も身近に起こりうる、まさにスーと腕の鳥肌が立つような寒さを感じる、巧みなストーリーです。 私の心に残ったのは、「ロマン

ひとりで暮らす、ひとりを支える

北欧というと、幸せな国とか福祉国家などとイメージが先行、食器や雑貨の流行、以前は北欧で描かれた日本人監督による映画も人気があったりして、特に女性には人気が高いように感じます。 私たち夫婦も高齢となり、お互いの親を介護する老老介護真っ只中です。 そんな時「この本をお守りのように読んでいます」という記事を見かけて、すぐに図書館蔵書を検索、幸いに私の通う図書館にあったので借りました。 本書は2019年4月23日に青土社から256ページのソフトカバー単行本として出版されていまし

終わりなき夜に少女は

久々に翻訳本を読み終えました。それがこちら 「われら闇より天を見る」で2023年の本屋大賞翻訳小説部門1位となった、クリス・ウィタカーの2024年5月22日に翻訳が発売された最新刊です。 前作の翻訳は未読ですが、私が通う図書館は、割とミステリーが蔵書となることが多く、この作品も新刊蔵書と紹介されていたので、手に取りました。 いつもながら、登場人物の名前が頭に入るまで苦労し、また作品の流れが、失踪したサマーの双子の妹レインの視点、連続少女誘拐事件を担当する警察署長ブラック

六月のぶりぶりぎっちょう

2006年第4回ボイルドエッグズ新人賞を受賞した『鴨川ホルモー』でデビューされたこの著者の作品たちは、万城目ワールドと紹介されるほど、独特で面白く、多くが映像化されるのも頷けます。 しかしデビュー作以降、賞レースになぜか縁がなく、満を持してというか、やっと前回直木賞を受賞され、東野圭吾さんが直木賞を受賞された時同様に嬉しかったです。 そして直木賞受賞後の作品として、著者が選んだのは まさかの「本能寺の変」の真相、女子寮に14年も学生としているその正体に臨むというものです

一切なりゆき〜樹木希林のことば

9月に入って最初の本は、樹木希林さんが、対談等で話され、雑誌等で掲載された言葉を収録した「一切なりゆき〜樹木希林のことば」 テレビ番組全盛期に活躍された俳優というイメージの強い樹木希林さん。 2018年9月に癌によって75歳で亡くなって、6年が経ちます。 私にとっては先輩だと思っていた歌手や俳優が亡くなって、どんどんとその年齢に近づく、当たり前だけれど寂しさが込み上げてきます。 この文章どおり表紙の笑顔は、さすが俳優さんと言わんばかりだし、題名の「一切なりゆき」という言

多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ

題名に惹かれて、手に取ると監修が精神科医の名越康文さん、帯には第1回メンタル本大賞受賞とあって、類は類を呼ぶなと苦笑してしまいました。 著者のJamさんは、ゲームグラフィックデザイナー、イラストレーター。 そして日常で起こる人間関係の悩みを描いたマンガ「パフェねこシリーズ」が、Twitterで累計50万以上リツイートされるほど話題になるほどの漫画家でもあります。 SNS・会社・友達…ここにいない誰かからココロを守る64の考え方が、漫画と共にエッセイ風に処世術が書かれていま

天使と悪魔のシネマ

今年の夏は本当に異常な暑さが続きました。その余韻は残っているけれど、季節は移ろい、台風の季節へとやってきました。台風10号は、どれくらい被害が出るのか心配です。 8月も終わりに近づいて、まだ暑さが残るのでこの作品を読んでみました。 紹介に書かれている「ひと」は私も好きだった作品です。その著者が傾向の違った作品を書いているのを知って手に取りました。 印象的だった短編は2編 物語は理路整然値していますが、どこか暗く、影があり、背中がゾクゾクっとするものばかりです。そんな物

みしのたくかにと

題名を読んで、いやはやバーバもボケてなのを書いているのやらと思われた方も多いと思います。普段の私を振り返れば、そうなってもおかしくはないけれど、これは昨夜読んだ絵本の題名です。 小学校に勤務していた頃、月に1度全職員が持ち回りで朝読書の時間に読み聞かせをする必要がありました。上学年には興味がありそうなフィクションを読むことが多かったけれど、下学年にはやはり絵本が主流。司書さんにも選書を手伝ってもらい、子どもたちの前で読むのは、緊張の連続でした。 退職してから、愚息たちの絵