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バーテンダーの普段飲み

「普段はなに飲んでるんですか?」

これもたまに聞かれる質問である。

なぜかこの職種の人間は仕事が終わった後も小難しい顔をして酒を飲んでいるイメージを持たれているようだ。
缶モノにはまず手をつけず、ウイスキーのロックやストレート、或いはそこそこなワインを仕事終わりに飲む、と。

いやいや。

そんな品のいい、優雅に構えた生活ができるのならみんなこの仕事をすると思うぞ。
たしかにごく一部、そういった美味しいものしか飲まないというバーテンダーもいるにはいる。しかし大多数は缶ビールや缶チューハイはもちろん、居酒屋でウーロンハイやレモンサワー、ホッピーだって飲む。僕もそうだ。

職業イメージは確かに大事だけどここまでくると妄想である。

昔、友人の先輩はお客様に「美味しい和食以外はいっさい口にしない」と公言していたにも関わらず、某牛丼チェーン店から出てくるのを見られてしまうという失態をしたという。そう言ったのはイメージを保つためだったのか見栄だったのか聞いてみたいところだ。もしかしたらその牛丼も「美味しい和食」認識だったのかもしれない。

閑話休題。
僕らの仕事は昼の方々の始業時間をおよそ反転させた状態である。スタンバイの時間はそれぞれとしても多くは18~19時くらいのスタート、2~3時にクローズといった感じだろうか。

当店のある場所は住宅街なので、こちらが終えた頃には周囲の飲食店のシャッターは当たり前に下りている。繁華街が栄えていて夜のお店が多い地域なら朝までやっている飲食店というのも存在するだろうが、ほぼ無いと言っていい。
この状況で終わった後に美味しいお酒を愉しむことは不可能だ。

少しでも美味しく愉しみたいなら自ら手をかける必要があるが、自分のために作る気には到底なれない。いきおい手軽な缶モノに手が伸びる。これはもう必然である。だから24時間営業のスーパーやコンビニにはとても感謝している(補充されて冷えていないのが前にあるととてもがっかりするが)。

言い訳がましいけど、自分で作るとなると飲み物も食べ物も必要以上に手を入れたくなり、ほぼ仕事みたいな様相を呈することが多く、その時間を愉しむより前に疲れるのだ。
それに、プルタブを上げた時の「プシュ!」というあの音を聞くと「今日も終わったなー」という安堵を得られる。あの音を聞くためだけに缶モノを飲んでいると言っても過言ではない。
故に家にシェリーやスティル・ワインがあろうとウイスキーがあろうと必ず1杯目はあの音がするモノを選ぶ。ペットボトルの開栓音ではダメなのだ。かと言ってシャンパンの華やかな音でもない(そもそもそんな贅沢ができるほど豊かではないし)。もっとカジュアルな、親しみのもてる音を聞いて1日を終えたい。

こんなわけで仕事終わりの普段飲みは缶がほとんどです。休みの日はもちろん別だけど。

これはあくまで僕個人の話だけど、かなりの同業者はそうじゃないかと思っている。同業者のみなさん、いかがでしょうか?

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