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After Hours (Adonis twist)

※今回のnoteは当店のInstagramにアップしたカクテル解説になっています。

<Instagram>
https://www.instagram.com/p/CbOjplbvYuh/?utm_medium=copy_link

Jill_gaman_cocktail氏とLE CLUB(愛媛県松山市)村田氏による企画、アドニスチャレンジのレシピと軽い解説を。
何はともあれまずレシピ。

After Hours
<stir>
アモンティリャード シェリー(Valdespino / Tio Diego)40ml
スウィートヴェルモット(Noilly Prat / Sweet)15ml
コーヒーウォッカ(自家製)7.5ml
グレナデンシロップ(1883 Maison de Routin)1tsp
チョコレートリキュール(自家製)1tsp ※グラスへ先にドロップしておく

比較として基本レシピも。

Adonis
<stir>
シェリー 2/3
スウィートヴェルモット 1/3
オレンジビターズ 1dash

いかがでしょう?かなり手を入れております。

多くの紹介で書かれているように完成度がかなり高いカクテルです。
という事は手を入れる余地が残されていないように思えます。が。意外や意外、かなり大きく手を入れられる場所があるんですね。
どこか?
それはシェリーに指定がないところ。
誕生当初はfinoで作られていたであろうということですが、当時のことを調べてみると確かにそうだろうなと思います。
事実、国内外問わずfinoで作るレシピがとても多い。
ちなみにアモンティリャードを使うレシピというのは1990年代くらいからのようです。
僕がなぜアモンティリャード・レシピをチョイスしたのかというと、単に覚えた基本レシピがこれだったいう実も蓋もない話。
他を試そう・調べようって発想がなかったという点でダメですね…。まあそのお陰で今回の発想に行き着いたわけだから無思考というのもごく稀にいい答えに導いてくれるのかもしれない。おすすめは全くしませんが。

このtwistは「Adonis×コーヒー&チョコレート、間違いなく相性いいよな。じゃあいっしょにしちゃえ!」と「降りてきた」直感ほぼ1発です。数年に一度くらいの確率であるやつですね。普段はもっとめんどくさい工程を踏みます。才能ないんで。

まずは降りてきたイメージからレシピの分量、全体のラフデザイン。
僕はどうしてもオリジナルの個性は残したいのでそこを根底に置きつつ進める。
海外のtwist recipeを見ると「残っているのは名前だけ」みたいに見えるのもあったりします。
音楽に例えるならRe-mix的なアプローチ。
読み解くことは可能ですが、わかりやすいとは言い難く、そういうのは僕の作りたいものじゃない。好むのは原型のわかるRe-arrange的アプローチ。
当然だけど試作を重ねて着地させる(最近作った中で試作回数最多だった)。
今回はカクテル解説なんで工程については端折ります。

さて、材料について解説いきましょうか。
>アモンティリャード
キャラクターをしっかり残したかったので基本と同量で固定。
そもそもこの存在を出さないならAdonisを名乗らせる必要がない。Adonisのアイデンティティです。
また、コクと酸味と熟成香で全体をまとめ込んでくれる割に他より主張がおとなしいので、下げると喰われる可能性も高いのが固定の理由。

>スウィートヴェルモット、グレナデンシロップ、チョコレートリキュール
アモンティリャードは骨格、スウィートヴェルモットはその上に乗るもの。トップノートと言っても良い。
基本レシピにあるオレンジビターズはミドル~ラストノート&ヴェルモットの引き立て役なイメージと解釈しています。
ここをグレナデンシロップとチョコレートリキュールに置き換える。
1883のグレナデンシロップは程よい酸味と華やかな香りがあるので、口腔内で飽和しそうな甘さに適度なラインを引かせるイメージ(別メーカーのものだとちょっとこれやりづらいかもしれません)。
チョコレートリキュールは主張が強いのであまり多く入れる必要がないけど、ステアでまとめこむと隠れすぎるので先にグラスへドロップ。こうすることで他材料の結合からズラしたレイヤーを作ることが可能+特有の甘味で飲み口のアンダーを出す(=重心を低くする)。加えて香りにおけるラストノート補正の役目。

>コーヒーウォッカ
全体を苦味で締める(香味の飽和防止と輪郭強調)、アルコールのボトムアップ、ミドル~ラストノートへ焙煎香でアクセントをつける。

こんな感じですね。
それっぽく書きましたけど、出来上がってからの分析がほとんどです。実際のところ。
降って湧いたアイデアをカタチにしたものなのでご容赦ください。

ネーミングその他についてここから書くとうんざりする長さになるのでもう1本書こうと思います。

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