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儘ならぬコトバ。

繁華街の真逆、住宅街ど真ん中。BARだか民家だかわからないような当BARでも偶に(稀ではなく)日本人ではないゲストがある。
それは旅行や仕事で滞在している人もあれば周囲に居を構えている人もある。
前者・後者ともに(体感として)90%オーバーで日本語が不自由で、しかし母国語ではないにせよ(僕からすれば十二分に)英語が堪能だ。故にまず英語で話しかけられる。
ご想像通り、こちらは英語が得意じゃない。
自分の専門の-つまりアルコールに関する-本を読むくらいなら大きく困ることはないが、日常会話は難しい。とても。
これは日本の英語教育のおかげ(「せい」という方が適当かも知れない)か、それとも「ちゃんとできないならするべきでない」という完璧主義的で島国的かつ内向的国民性か、はたまた遥か古来よりの舶来コンプレックスの顕れか。或いはその全てかも知れない。

そもそも僕は対日本人だってコミュニケートするのは得意じゃないのだから、言葉も通じにくい人間とのそれなんて輪をかけるどころじゃなく得意じゃない。
が、ゲストとして迎え入れたならこれもうお仕事なわけで「得手不得手なんて聞いてねえよ。オマエ仕事しろよ。」と自分に言い聞かせて拙い英語と翻訳アプリを駆使してなんとか会話「らしきこと」をする。

先日は日本語を勉強中という英語話者(日本在住)が来てくれて、お互い拙い言語を駆使して話していたら「英語話せるようになりたいの?」と聞かれた。
「もちろん」と答えたら「じゃ、今から英語で話そうか」とまさかの英会話教室スタート。
仕事中とは言えありがたいお話である。

最初は他愛もない話をポツポツしていたのだけど(こういう時に天候の話はなんて使い勝手が良いのかと心底思った。しかしそこから展開させるにはやはり会話術が必要である…)、進むにつれて日本経済や国としての在り方、精神性についてとかとんでもなくディープな話になってしまい、「こんなの英語どころか日本語でだって難しい話!」と、なし崩し的に英語10%日本語90%くらいになり、わかってもいないことにさも自分の意見があるかのような顔して会話するというアタマが煮えることをした。
ああいう時、必死に「英語を使わなきゃ!」とか思うと日本語と混ざった結果としてルー大柴氏や出川 哲郎氏みたいな事になるんだなと改めて思いました。
そしてそれでも大枠は(おそらく言いたいことの10%くらいだが)伝えられるし、口をつぐむより遥かにマシ。「発音が」とか「言い回しが」なんて考えるのはとりあえず話せるようになってからで良い。とにかく口に出す。わからないならわからないなりに話してみる。恥ずかしがらない。これが一番上達のコツですね。

その昔、英会話教室の教師が夜な夜な集まるような店で仕事していた頃はもうちょっとまともな会話ぽいことできたんだけどなあ。
でもそれはおそらく、彼らが生徒に対峙するようなスタンスで接してくれたからだとは思うのだけど、それにしてもね。

それでも慰めか本当にそう思ってくれたのか、件の方は「あなたは道に迷っているツーリストを助けられるよ」と言ってくれたのはほんのちょっとだけ自信になりました。
ちなみにこの数年、語学アプリで遊びレベルで学んでいる(つもり)のフランス語は、去年来てくれたカナダ人にトライしてみた結果、まるで学べていない事が判明しました(当たり前)。
英語すらままならないのにフランス語まで手を出すなんていい度胸してるよな、と苦笑せざるを得ない。
まあそれでも「学びたい」と言って学んでいないよりはマシだと思うのだ。

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