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異彩を放つガラスアーティスト・木村直樹さんが提案する生活空間の輝き。

北海道、小樽。
この北の大地に工房を構えるガラス作家、木村直樹さん。
ガラス産業で有名な小樽の町から車で20分、小さな漁村に工房を構え、独自のスタイルでガラス作家として活躍されている。

小樽は古くからガラス産業が盛んで、街の中心である小樽運河の周辺にガラス商品を取り扱う店や製作所、工房が集まり共存共栄を続けている。
木村直樹という作家は、そうした環境から一線を画しているように思え、群れから離れた孤高の一匹狼のような方なのだろうと、勝手に想像を膨らませていた。
けれど、実際にお会いした木村さんはハキハキとして取材対応もそつが無くスマート。クールなタイプかと思えば、ガラス製作の話になると熱くこだわりを語り、時折見せる少年のような真っすぐな眼差しとシャイな笑顔も印象的だ。
表現が豊かな人は、人を惹きつける。
木村直樹という人は、アーティストという面だけでなく、いろいろな感性を備え持つ人なのだろう。

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※工房のある祝津漁港周辺を高台から見た風景。

Interview
遊びこころ&モダンアート&じゃぱにずむ
何にも属さない多種多様な輝き

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北海道で創作活動を続ける木村さんの作品を知る人は、そう多くはない。ネットで検索すれば大概のことが出てくる今の時代、根気よく探し当てなければ木村さんの作品にたどり着かないかもしれない。
そうやって、わたしが偶然見かけた彼の作品は、不思議な光を放っていた。大胆のようで強すぎない。Made in Japanの繊細な美しさ。異素材との組み合わせ、カラフルな色合い。
特徴をあげたらキリがないが、いろいろな魅力が織り交ざった作品には、日常の生活を楽しい気分にさせてくれるパワーがあるように感じられた。

「オブジェを購入してくれるのは圧倒的に海外の方ですね。欧米の方が多いです。ネット販売? ネットではあまり積極的に売っていこうと思っていないので、ネットショップから広まったということはないですね。旅行者が立ち寄ったり、気に入ってくれたお客さんがSNSでアピールしてくれたり。皆さん、この工房に買いに来てくれています。
オブジェは、売ろうとか、賞をとろうとか、そういうことを頭において作っているわけではなく、作りたいと思ったものを自由に表現しています。
遊びに近いかな(笑)。
自己満足的に感じるまま、作りたいままで、僕自身が楽しんだり、挑戦しながら作っているんです。」

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作品には、異国の雰囲気が感じられる。西洋?アジア?どこもピタリと当てはまらない想像の国のオブジェたちは、どこかユーモラス!楽しんでいる、遊んでいるという木村さんの思いがそのまま現れているようだ。創ることへの無心な喜びが伝わってくる。
木村さんの作品は、存在感はあるが、圧迫感はない。
見る人の想像力を引き出してくれるし、楽しくさせてくれる。

いつもの空間、普段のテーブルに少しの余裕。
気の利いた洒落っ気をプラスしたい。

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カラフルな色合いが好きという木村さん。オブジェだけでなく、テーブルウエアとして食卓に並ぶガラスの器も目をひくものが多い。
存在を主張する個性的な器は、直観的なひらめきから生まれたものが多いのだろうか?
「僕は、直感とか、ひらめきとか、発想がわいてきて…みたいなクリエイタータイプでは全然ないんです。
この色、新しいな。この素材、組み合わせたら面白いかも。
そんなふうに、ガラスとは別の面でアイデアを得て、それを取り入れていくとどうなるか、試行錯誤しながら完成に近づけて、できた作品にあわせて最後にテーマとなるタイトルを決めるという流れが多いんです。
なので、アーティスト気取りではいるんだけど、アイデアが降りてきたー!というようなアーティストタイプではまったくない(笑)」

異素材との組み合わせなど、挑戦することにも意欲的。木村さんが、大切に思うこと、こだわりとは?

「新しいことに挑戦するには、僕の場合、“人との出会い“がきっかけになることが多いです。
例えば、以前、鉄を取り入れた作品を作りましたが、それはすごく魅力的な金工作家の方との出会いから生まれたんです。金工作家さんのアトリエを訪ねて作品を見た時に、
『金属って面白いなぁ』『この作家さんと一緒にモノ作りがしたい!』という思いが込み上げてきて、作品づくりに協力していただきたいとお願いしました。
その思いが伝わり、新しい作品作りができたのですが、出会いがなければ、そうした発想は出てこなかったと思う。人との“出会い”は、とても大切だと思っています。

制作のこだわり、というかはっきりした考えがあります。それは作品(オブジェ)と生活の中で使うための商品を、きっちりわけていること。
だからといって、普段使いの器がシンプルな量産タイプばかりということはなく、むしろ反対に『KIM GLASS DESIGN』のものだと一目でわかるようなデザイン性のあるものがほとんど。
それも、こだわりと言えます。
商品は普通の家庭で使われるものだけど、僕は色ガラスや金箔を加えてみるなど、一癖あるものを作るようにしているんです。
個性的な器は、食卓の雰囲気をガラリと変えるだけの力をもっている。
ベーシックな色合いの中に、少しだけでも鮮やかな色がプラスされると、いつもの生活に新鮮さが生まれて、その空間にいる時間がもっと楽しかったり、大切なものになっていく。そんな生活空間づくりをイメージして作っているし、それが『KIM GLASS DESIGN』の個性でもあります」

経営者とアーティスト。
バランスをとりながら世界に発信!

現在、工房にいるスタッフは総勢6名。アーティストとしてだけでなく、『KIM GLASS DESIGN』の社長として、経営面でも手腕を振るう。
「工房としては、ウチは北海道で指折りの生産力だと思います。大きな取引としては、風鈴や薩摩切子の下地を作って納めているんです。」

木村さんにとって、経営者とアーティスト、どちらが主なのでしょう?

「どちらも、同じだけ必要だと思っています。アーティストとして自由に創作することを続けられるのは、工房の量産的な仕事やテーブルウエアの販売があってのことです。反対に、オブジェ創りから商品作りのヒントを得られたり。
両方があって、成り立っている。それはこれからも変わらないと思います。」

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※工房に隣接するギャラリーではたくさんの作品を見ることができる。

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北海道小樽市祝津3-8 『KIM GLASS DESIGN』
TEL / FAX: 0134-61-1213 
MAIL:info@kimglassdesign.jp

海外のお客さんもわざわざ足を運ぶという『KIM GLASS DESIGN』。
これまでほとんど取り組んでいなかったネットでの販売や作品情報の配信を積極的に行い始めたとのこと。
「ネットを利用する必要性は以前から感じていました。でも、ネットで作品が独り歩きして売れていくことに抵抗があったんです。自分が作ったものだから、自分の手で世の中に出したいという思いがあったし、一歩、一歩、確実に前に進んでいるという手ごたえみたいなものを実感したかったから。
ただ、そろそろ、ネットでの戦略にも取り組み始めていい時期かなと思うようになって、まずはホームページをリニューアルしました。けっこう、こだわって作ったので、反応が楽しみです。商品も購入できます!
これからですか?
もちろん、海外を視野に入れてどんどん発信していくつもりです」

小樽から世界へ。
木村さんの作品が、もっと広く、もっと自由に、世界に向けて羽ばたくのもそう遠くはないようだ。


今、我が家の食卓では、存在感を放つ木村さんの作ったグラスがレギュラーメンバーに加わり、心なしか毎日の晩今、我が家の食卓では、存在感を放つ木村さんの作ったグラスがレギュラーメンバーに加わり、心なしか毎日の晩酌も気持ちが弾む。見慣れた生活空間に彩をもたらしてくれたガラスの器に感謝して乾杯!

グラス (2)

Writing:Rie Maeda





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