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小さな学校の挑戦〜土佐清水市立幡陽小学校からのメッセージ〜

幡陽(ばんよう)小学校は、高知県土佐清水市の大岐・以布利地区の間にある、2021(令和3)年に創立100周年を迎えた歴史ある小学校です。全校児童は11人。小さな学校ではありますが、「幡陽に通ってよかった」「通わせてよかった」と思ってもらえるよう、

・一人ひとりに合った学力の保障
・豊かな自然環境を生かした体験学習
・さまざまな人々と関わり合えるカリキュラムづくり

の3つを柱に学校づくりに励んでいます。

ここ数年の全国学力・学習調査では、子どもたちの本来の実力に見合わない結果に止まっていました。課題は、集中力や持続力にあるように思いました。

そこで、授業改善を行うため、

①学習に本気で向かうための安心安全の教室づくり
②「伸び」を実感するための学習成果の可視化
③子ども全員を教員全員で「みる」ための教科担任制への移行

を進めました。2022(令和4)年度の調査では、全国平均を上回り、特に記述式の正答率が大きく向上しました。何よりも、子どもたち一人ひとりがいろいろな場面において、自分の力を出し切ろうとするようになったことが、学校全体の自信につながっています。

今年度からはさらに持続力を向上させるために、教育活動全体において「凡事徹底」を合言葉に取り組んでいます。

教室での学びと同様に大切にしているのが「体験学習」です。大岐・以布利両地区の豊かな海・山・川を最大限に活かし、「ここでしかできない」探究的な学びの場をつくってきました。

例えば、以布利地区はジンベエザメが定置網にかかることで有名です。巨大なジンベエザメと一緒に泳ぐ「ジンベエスイム」は毎年恒例の、子どもたちが心待ちにしている授業です。しかし、海流などの変化から、昨年度はジンベエスイム体験ができませんでした。そこで、「なぜできなくなったのか?」を考える授業に切り替えました。「できなかった」体験を入口に、地球規模の海流・環境の変化、海洋生物の生態を科学的に学ぶことができました。

ジンベエスイムは毎年の恒例授業でした

子どもたちの心に浮かぶ「なぜ?」が学びの始まりです。海に詳しい地元の大人に聞いたり、本やインターネットで調べたり。さまざまな手段で原因にたどり着くことが「納得」につながり、納得は、新たな「なぜ?」へとつながります。次から次へと浮かぶ「なぜ?」は、教室での学びを主体的なものにします。主体的に得た知識は、体験の場をさらに豊かなものにします。

今年度は新たな取り組みとして、体育の授業の一環で「サーフィン」を取り入れました。大岐地区はサーファーの聖地である「大岐の浜」でよく知られています。授業では、地元のサーファーが講師となり、プールで練習をした後、大岐の浜でのサーフィンに挑戦しました。

サーフィンが初めての児童も、運動が苦手な児童もいましたが、それぞれが自分で決めた目標に向かってチャレンジをする姿がありました。地元の大人たちはその姿に感動し、授業のあと「来年もやらせてほしい」というありがたい声も聞くことができました。

こうした地域の資源を生かした学びは、地域の協力なしにはなし得ません。子どもたちの学びには、地域の支えが不可欠なのです。「小規模校」と聞くと、よく「社会性が育つのか」という議論が起こることがあります。しかし、児童は少なくても、地域にはたくさんの、さまざまなことを経験してきた大人たちがいます。子どもたちに必要な、地域に根ざした教育活動をしようとすると、必然的に地域の人々との関わりが増えていきます。自分の母校の子どもたちのために動いてくれる大人たちが多いことは、幡陽小学校の大切な財産です。

こうした一連の取り組みが、本校の教育目標である

明るく 元気で 認め合える 児童の育成

につながっていくと考えています。

世界中に自慢できる大岐・以布利の大自然。自分たちを応援してくれる地元の大人たち。両者の力を借りることで、11人の子どもたちのまなざしは力強く輝いています。経験豊富な2人の外部講師、フットワーク軽く、底力のある3人の支援員、そして、学校づくりに真摯に向き合う4人の教員が、幡陽ならではの教育をつくろうとしています。私を含めた学校に関わるスタッフ全員が、苦手なことも、得意なこともあります。でも、本校のスタッフは、それぞれがそれぞれを信頼し、献身の心を持って、学校づくりに向き合っています。

小さな学校の挑戦は続いていきます。

幡陽小学校校長
渡辺昌幸

ウェブサイトもリニューアルをしました。ぜひご覧ください。
https://tosashimizu-schools.com/banyo-e/

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