菊池万博の誰にも内緒にしてたこと

ミュージシャン菊池万博が横目でみた日常

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最近の記事

〈はしがき〉生きなぐり〜曲解説と談話〜

特報が入った。 寡作でお馴染みの菊池万博氏が実に1年ぶりとなる新作を発表するとのこと。 題名はその名も“生きなぐり”。相変わらずの重い腰を上げた氏の新作とは如何なる物なのか。今回は弊誌に〈はしがき〉と称され届いた、今作の解説文と氏本人による談話を紹介する。発表に先立ってご一読頂ければ幸いである。 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈✼••┈┈┈┈••✼ “生きなぐり”は菊池万博による楽曲。 作詞作曲は2023年5月3日に為された。最初期のデモ音源(参照①)には、メロディ

    • 細工は流流仕上げはロケンロール

      あけましておめでとうございます。 今年も野望がありつつも、宣言の場を設けず、ライブや打ち合わせ、稽古など、こなしつつも感覚的には無為に過ごした一月を終えようとしている菊池です。 これではいけないと思いたったのと同時に、明日のライブについてふと考えていた事をまとめたくなり、実に二ヶ月ぶりに筆を執っています。 あす(2023.1.26)は僕も心待ちにしていたライブがあります。 初の試みである三人体制。 決めた時は、何から手を付けたら良いやら、アイデアを箱から散らばし、腕組みしな

      • 確かな成長と床に転がるパンツ

        「なんじゃこりゃ!」僕は思わず口に出していた。 ✳︎ 初めてコロナの濃厚接触者になり、しばらく自宅待機する運びとなった。身体は元気だし、この際まとまった時間を有意義に使おうと思い、僕はまた計画を立てた。溜まっていた家事、事務作業、各所への連絡、読みかけの本を読み切る。完遂時を思うと胸が躍る。 ✳︎ 昔からかなり腰が重いタイプである。風呂に入ろうと支度をしたものの、急に面倒になり、浴室脇の階段に全裸で座り込んだ事があるし、ランニングでもしようかとシューズを下駄箱から取り

        • 美人局が読めない

          正確に言うと「よく考えないと読めない」となる。 滅多に目にするような文字列ではない−幸か不幸か、私は小説の中でしか見たことがないように思う。–が、不意に視界に飛び込んできたり、頭に思い浮かぶ事がある。 「美人局」 脳内で波打つように浮かぶこの魅惑的な文字列は、半年に一度ほどのペースだろうか、文字通り私を“惑わせる”。もしあなたがコンビニ前の喫煙所でこの文字列を思い浮かべたならば、タバコの火は気づかぬうちに指に近づく事になるだろう。電車に乗っているのならば、目的の駅を2つほ

        〈はしがき〉生きなぐり〜曲解説と談話〜

          あの角を曲がれば…

          僕にとって“惹かれる音楽”とは、廊下の角を曲がった時に突然現れた見知らぬ女子との“衝突”のようなものだ。 避けようもなく彼女と衝突し、「ごめん」と言いながら教科書を拾う。次の日彼女は隣のクラスであることが分かり、その次の日には何やら大きな楽器のようなものを背負った彼女を見かけ、雨の日には赤い傘をさすこと、体育がどうやら苦手らしいということ(走り姿を見てしまったのだ!)、ときどきべっこうの眼鏡をかけることなどを知る。 いつもの場所、いつもの時間、いつもの心情に、いつもは存在しな

          退路絶たれり知らぬが仏

          朝9時30分。 灼かれてうだるような部屋で起床。 容赦ない光線。素直すぎる部屋。そんな季節か。 耳鼻科の予約は9時15分。 予感はしていた。夕べは考えなくて済む動画を止めることが出来なかった。 最近の日課(?)で、その日最初の音を祈りながら聴く。声を出せば今朝も左側に耳鳴り。 音に呼応した耳鳴りー例えば「あ・い・う・え・お」というと(もしくは聴くと)「ピ・ピ・ピ・ピ・ピ」と鳴るーは2週間続いている。 耳鼻科の予約をとり直す。15時30分。逃避を諦める。『恐怖』は最早明確だ。

          ゾロ目が出るまで

          午前。 11時半起床 晴れ。 急に目まぐるしくなった5月。 天気はとても良い。やるべき事が山積みだと気分は沈む。 「菊池万博」は一切の自分を隠しているようで、さらけ出している。自分でも調整が難しいのだが、バランスが大事。 思いついた言葉をそのまま歌詞にする事はまずない。恥ずかしすぎる。 同じ意味の言葉に変えたり、言い回しを変えたり、性別を変えたり、架空の物語の中に忍ばせる。 得体の知れないものが出来上がる。その実は紛れもなく自分そのもの。 朝食の為に長芋を擦りおろし、白米にか

          しわくちゃのメモ

          午前中。抜けるような青空で気分が良い。 家中の窓という窓を開ける。風が淀んだ空気を瞬く間に新鮮なそれに変えていく。窓を開けるだけで良かったわけだ。 洗濯物を畳む。最後に残ったのは柄の違う二足の靴下(二足だと四つになるのだろうか。この場合は柄違いが片足ずつ残ったということ)。 どこを探しても互いのパートナーは見つからず、不可解なまま二足をタンスにしまう。 夕方遅く。 腕時計のベルト(数日前にカバンを下ろす拍子に何かに引っかかり、ちぎれた)、無性に食べたくなった青椒肉絲の具材、

          かぽかぽ

          急に思い出したことがある。 「溺れた時は何もせず上を向いていなさい。」 10にも満たない私に祖母が言った言葉だ。 天井を見上げながら、口を“かぽかぽ”する滑稽な姿も思い出された。 当時の私はその姿が面白く、ただ笑っていた。 なんの心配事もない、平和な家族団らんのいち場面だったと思う。 なぜこんなことを今思い出したのかは分からない。 祖母が『優しいひと』であったことや、その『笑顔』は漠然と覚えている。『愛情』のようなものも注いでくれたのだろう。 しかし、結局私の中に祖母

          熊手とクレープと眉間にシワを寄せた男

          本当に久しぶりに温かい人だかりを見かけて自然と足が向かった。 するとそこでは酉の市が開催されていた。 この情勢なのでさすがの厳戒態勢での開催のようだったが、今年の状況に疲弊しきってしまっていた私は懐かしさも手伝って冷やかしでもこの際構わぬかと鳥居をくぐった。 するとどうだろう。 私はすっかりその賑やかさに気圧され、なんとも侘しい気持ちで結局5分ともたずに神社を後にした。 本来縁日やお祭りごとが好きなのだが、これはどうした事だろうと考えてみると、やはり1人で入ってしまったこと

          熊手とクレープと眉間にシワを寄せた男

          ぬくくなった銃の引き金をひいて

          腰が重いタイプだ。 風呂に入るのが面倒で、気付けば洗面所前の階段に小一時間平気で座り込んでいたり、朝ランニングへ出ようとジャージ姿に着替えたまま夕方を迎えるような人間である。 音楽を作る時でさえ録音機材の前に座ったままくだらないYouTubeの動画からなかなか切り上げる事が出来ない。 元旦に『ムダな時間を無くす』と何度誓ったか分からない。 … そんな私でも、何のきっかけか引き金をひくようにひとたび作業を始めると、目をみはるようなエネルギーで作品を作り上げてしまう。それも

          ぬくくなった銃の引き金をひいて