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【会津地域で活躍する人・団体レポート④】"50点"の空き家活用を提唱し、誰もがチャレンジしやすい空き家活用を目指す「空き家てらす」

会津若松市を拠点に活動する「空き家てらす」は、2017年に立ち上がった、会津エリアを中心として活動する空き家活用事業を行なっている団体です。
空き家活用を考える多くの方が、ボロボロの空き家から綺麗になる未来をイメージする事ができません。
0から100を想像するためにその間を繋ぐ、"50点"の空き家活用を提唱し、費用をかけないDIYイベント等の空き家活用を多く行っています。
今回、代表の齋藤拓哉さんにお話を伺いました。

 

▶︎空き家活用をはじめたきっかけと、周囲で起こった変化

福島県二本松市出身の斎藤さんは、会津若松市にある会津大学に進学。大学時代はゲストハウスが好きでいろんな地域のゲストハウスに足を運んだそうです。そこで出会った長野県下諏訪町にあるゲストハウス「マスヤ」。

「マスヤは地域や訪れる面白い人たちをつなげるハブのような存在でした。自分も、会津の街並みや古民家を活かしたゲストハウスをつくって、会津の面白い人たちをつないでていきたいという思いで、大学卒業後も会津に残ることを決めました」

 会津には歴史ある古い街並みも、古民家も、古道具もあります。それらを活かしてゲストハウスやそれに関する事業をやりたいと思ったものの、斎藤さんにはゲストハウスで働いた経験も、空き家を活用した経験もありませんでした。古民家を活用したいと思って不動産会社に訪問するも、観光系のつながりもなかったので、門前払いされることも多かったそうです。

逆の立場で考えると、新卒で、観光の経験も、ゲストハウスの経験もない自分に空き家は貸さないだろうと思い、まず空き家活用の実績をつくろうと立ち上げたのが「空き家てらす」とのことでした。

最初に手掛けたのは、築80~90年のラーメン屋「三春軒」。たまたま物件の所有者からなんとかして欲しいと付き合いで借りていた方から相談を受けたのがきっかけでした。実績ができると「うちにもこんな物件があるんだけど……」と相談が入るようになり、それから4~5軒ほど空き家の活用に携わったそうです。

そんな繋がりの中で、会津若松市の中心地の歓楽街の路地裏の、築70年ほどの物件を借りるご縁があり、住宅宿泊事業法を活用して2018年「KAKUREGA GUEST HOUSE」を開業。会津若松市で初めてのゲストハウスとなりました。物件の状態が良かったので、購入したものは寝具等くらいで、廃材・古材を活用して手直しで済んだそうです。

ゲストハウスでは、旅する人と町をつなぐべく、自分の宿ではご飯を出さないようにしたそうです。歓楽街の裏路地にあるので、数歩あるけば食べるお店はたくさんあります。また、近くに銭湯があり、ゲストハウスでは風呂桶の貸し出しも行っているそう。そして、いつの間にか銭湯と宿泊者の交流が自然と生まれていました。ゲストハウスの風呂桶を持っていった人に、銭湯の方が起き上がり小法師という民芸品をプレゼントしてくれたのです。
これは斎藤さんが仕掛けたことではなく、自然発生した動きとのこと。斎藤さんが銭湯の方にお礼を伝えると、逆に感謝されたそうです。ゲストハウスの宿泊者が銭湯に行くことで利用者が増えて、性能の良いドライヤーが女風呂に導入されたのだと、斎藤さんは嬉しそうに語ります。

「来たタイミングでは旅の人だけど、帰るときには「町民、市民」になっている関係性になっている。ゲストハウスはそのための入り口なんです」

▶︎新たな挑戦としての「やまやど」と仲間をつくる「事業承継」

「隠れ家ゲストハウス」の宿泊定員は7名。
住宅宿泊事業法には180日以内という制約もあるため、20~30人が宿泊できる大きいゲストハウスをつくることも、斎藤さんの1つの目標でした。会津若松市内に素敵な物件を見つけ、5年掛けてさまざまなツテも使ってオーナーにアプローチをしていたそうですが、なかなか折り合いがつかず、一旦断念。

家族との時間を大事にしながら「旅する人と地域の人を繋ぐ場をつくりたい」という思いに立ち帰り、現在は磐梯町の地域おこし協力隊の活動をしながら、新たな挑戦を考えています。

 「空き家活用をしたゲストハウス運営などの役割は、観光客が泊まって地域と交流して好きになってもらって帰るところ。まちやどを進めている地域も増えてきていますが、まちやどをやるためにはつなぐ「点」となる人や場所があることが前提になります。
磐梯町を含め、磐梯エリアはまだ点の芽があるけれど、点になっていないところも多いのでもったいないなと感じています。なので、今後は地域の点を増やす活動にも力を入れていきたいと思っています。
先日、磐梯山エリアの観光に携わる広域市町村の方(事業者、行政職員、地域起こし協力隊等)が参加するワークショップがありました。自分が参加したチームとして発表したのが、まちやどの拡大版「やまやど」と「事業承継」です。
やまやどは広域観光でまちやどに取り組むというものです。
磐梯町に限らず、廃業等が地域の課題になっています。事業承継はこの問題をやまやどに関わるみんなで解決していこうというもの。後継者がいない宿や飲食店などに対して、そうしたこをやりたい人をマッチングする事業をつくりたいと思っています。宿や飲食店をやりたいと夢を語って物件を探す人もいますが、地域の特徴を生かしつつ、しっかり事業計画を練ることも、事業を始める上では大切です。やまやどに関わる人は、磐梯エリアの観光の特性をよくご存知です。そこで、何か始めたい人に、広域連携でサポートやアドバイスし、やまやどの仲間を増やしていきたいと思っています」 

▶︎どんな人に磐梯エリアに関わって欲しいですか?

「この地域のことを知って、地域と旅の人など外の人をつないでくれる人に関わって欲しいです。まずはこのエリアのことを知って、好きになって、暮らしたいと思ってもらえると、移住してくれます。そうして、地域の事業者になって、地域の住民になって地域の案内人の一人になってくれると、地域に人が入ってくるサイクルがつながれていくんだと思います。
元々この地域にいる方は地域のことを愛しているけれど、みんなシャイで発信しない方も多いように感じています。でも、発信しないと外から人は入ってこないので、発信してつないでくれる人に来て欲しいですね」

斎藤さんは会津若松市で週末ゲストハウスの運営をしつつ、古道具のお店や磐梯町の地域おこし協力隊と活動を広げています。
次のレポートでは、これまでの知見も生かしてチャレンジしている、磐梯町での空き家活用についてお話を伺います。

今回お話を伺った斎藤拓哉さんが代表を務める「空き家てらす」は、2017年に立ち上がった、会津エリアを中心として活動する空き家活用事業を行なっています。
https://www.tsuranari-aizu.com/about

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