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★月間まとめ(続):11月に聴いた音楽、そのメモと小噺など

11月に聴いた新譜(主にサブスクなどで発表されたシングル)についてのメモを、健忘録も兼ねて発表しよう、と思い立ち、12/6に突然始まったこのシリーズ。

前回で書ききれなかった部分で、泣きのもう一回!ということで、続編を発表しました。11月分はこれで最後にします。
例によって文字数が多くなりがちなので、レビューではなく楽曲やアーティストについての一言・・にしているつもりです。

如何せん思いつきのシリーズなのでタイトルも何もまとまっていませんが、前回の投稿が思いの外ご好評でしたので、お読みいただいてとっても嬉しいです。ありがとうございます。

前回の記事については下記を参照ください。18アーティスト/18曲+番外編というかたちで公開しています。

というかこのシリーズ、月末や月初にまとめて書こうとすると(主に執筆者が+情報過多で)地獄を見る気がするので、もしかしたら週末とか、何か区切りを設けて定期的に発表した方がよいかもしれませんね・・

なお、最後の「◎まとめ」セクションでは、最近よく耳にする「Woozy」という英単語についてと、個人的ベストについても書いています。

それではどうぞ!

No.19〜No.27、Steve Buscemi's Dreamy Eyes〜Best Coastまで

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左上からSteve Buscemi's Dreamy Eyes、M!R!M、Dizzy Mizz Lizzy、Bad Sounds、Lanterns on the Lake、Girl Ray、Sleepy Soul、Liturgy、Best Coast

19.Steve Buscemi's Dreamy Eyes「Moon」

スウェーデンはストックホルムの4人組バンド。爽やかで疾走感のあるサウンドで、メディアが少し騒いでますね。

バンド名の「スティーヴ・ブシェミ」の由来が知りたいなと思ったんですけど見つけられませんでした。多分、デビューアルバムが出たらインタヴューなどで載るかしら・・?(その昔、「ポール・ニューマンの瞳があったらなあ」と歌っていたバンドがいましたが、それを何となく思い出しました。)

20.M!R!M「Survive」

ヨーロッパのアンダーグラウンドシーンで異彩を放っていたという、イタリアで生まれ、ロンドンを拠点にするアーティスト。

全編を通じてノイズのかかった聞き取りづらいヴォーカルといい、このRitual的なヴィジュアルといい、うめき声+打ち込みドラム+シンセの昔の音楽性といい、ノイズ・インダストリアルや昔のウィッチハウスの芳しい薫りをそこはかとなく感じましたが、「Survive」は80sっぽく甘酸っぱいシンセにスラッピングが乗っていて、軽やかに踊れる感じになっていますね。

これは完全に余談なんですけど、こんな感じのヴィデオ、どこかで見たことありますね。

21.Dizzy Mizz Lizzy「California Rain」

日本にかなり来られている方のイメージがありますが、今回も来日されるんでしょうか。

22.Bad Sounds「Sympathetic Vibrations」

クラブでブレイク・タイムに流れているような感じ・・というわけでもないのですが、程よくレイドバックしたダウンテンポ寄りの軽やかなサウンドで、四つ打ちのキック+クラップ+口笛&シンセの甘いメロディと歌詞のリフレイン・・シンプルですが、とっても良いです。

23.Lanterns On The Lake「Every Atom」

UKはニューキャッスルの5人組バンドですが、今回はバンドによるサウンドがやや抑えられていて、ヴォーカルが大きくフィーチャーされています。ヴォーカルの Hazelがこんな風に言っていました。

「これは深い悲しみ(grief)についての歌であり、何かを失ってしまうことについての歌でもある。架空の世界を私の潜在意識が誰かを探して漂っているような、そしてそれを追いかけようとしているようなー」
(*原文はこちら

宇宙空間や生物の拡大映像などがモノクロで展開されるヴィデオも良いですね。

24.Girl Ray「Girl」

エコーのかかったヴォーカル、心地よいギター・ストリングス、空間に含みがあってかなり耳触りのよいサウンド。開始数秒で展開されるエキゾチックなリフから筆者はモデスト・マウスの「ダッシュボード」を思い出しました。甘酸っぱくブリリアントで素晴らしいですね。

8mmフィルムで撮影した風のヴィデオも良いです。

25.Sleepy Soul「Trophy」

ビートの感じから何となくフレディ・ヨアキムのようなジャジーブレイクっぽいかな?海外サイトを見る限りではEPが出るとのことですが、情報が掴めませんでした・・続報に期待。

26.Liturgy「PASAQALIA」

ブルックリンのブラック・メタルバンド。昔の作品(Returner)の方は割と典型的なブラック・メタルかと思うんですが、チューブラ・ベルやピアノ、ハープなど交えた今作は、全体的にちょっと得体の知れない音楽性ですね・・。
バンドキャンプの説明に下記のような記載がありました。

"Featuring their characteristic yearning guitar harmonies, epic song structures, and intense drumming, H.A.Q.Q. boils over with harp, piano, gagaku ensemble, pitched percussion, strings, and digital manipulation."
(ギター・ハーモニクス、叙事詩的な曲構成、激しいドラムに対する憧憬がありつつも、ハープ、ピアノ、雅楽(!)、打ち込みのパーカッション、ストリングスやデジタル操作を行なっている。)

27.Best Coast「For The First Time」

2020年に新しいアルバムのリリースと、北アメリカのツアーを行うとのこと・・前回のアルバムから5年ぶりということもあり、正直なところリリースされるとは思っておらず、びっくりしました。

音は愛からわず軽やかなギターサウンドが心地よく、最高じゃないですか〜。日本にも来ないかしら。

No.28〜No.36、Emily YacinaからFkjまで

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左上からEmily Yacina、Milky Chance、Black Lips、Public Memory、Kedr Livanskiy、Pendant、Lapalux、Surf Philosophies、Fkj

28.Emily Yacina「Bleachers」

気がついたらベッドルーム・ミュージック系のレイドバックした音楽に寄りがちだなあという月間でした・・。よいですね・・。

29.Milky Chance 「Oh Mama」

ドイツのフォークグループ・・ですが、筆者としては「Oh Mama」は曲のビートの隙間に、レコードに針を落とした時みたいなグリッチノイズみたいなのが入っている気がするので非常に良い・・と感じました。

でも、テクニックの観点は抜きにしても、ノリノリで踊れます。

30.Black Lips「Gentleman」

浮遊の時代的な文脈でフリート・フォクシーズやパーリー・ゲイト・ミュージックがあったのは理解していますが、ブラックリップスが「こっち」に振れているのって何か意味があるのか?と個人的には勘ぐって、でも、やっぱり彼らって昔から「そう」だもんなあ、という、雑な感想を持ちました。

31.Public Memory「The Maze」

ERAASのRobert Toherによるソロプロジェクト。グリッチノイズ的なパーカッションにブリーピーなベースラインが乗っていて、どこから聞こえてくるかわからないヴォーカルが入っている。不穏で、素晴らしい・・。

パーカッションに使われている音も多彩で、金属をぶつけたような音が入る辺りインダストリアル・ノイズ感があるし、アートワークも自分でデザインされたとのこと。 ERAASはスロッビング・グリッスル的なインダストリアル寄りかなーと思っていたので、こっちの路線も素晴らしいですね。

32.Kedr Livanskiy「Sky Kisses」

ケダル・リヴァンスキ(Kedr Livanskiy)、アルバムの発売は2019年5月でしたが、「Sky Kisses」のヴィデオが11月に発表されたという意味でこちらに入れました。かわいい・・。

33.Pendant「Name Around My Neck」

オークランドのミュージシャン、Christopher Adamsによるソロプロジェクト。ライドやスロウダイヴに影響を受けているとのことで、確かにノイジーでシューゲイザーっぽい、リヴァーヴの感じはサイケとかドリームポップ然としているような気がします。

34.Lapalux「Limb To Limb (feat. Lilia)」

アンビエント+ブレイクビーツ的なアプローチを感じますが、空間的な広がりを感じさせるサウンドレイヤーやヴォーカルの入り方がとっても美しいです。

"Everything is an endless loop. Things that you do or think of as constant change and evolve eventually. It just depends how far away you have to go to see it."
(全てのことは無限のループで、あなたが日頃行なったり考えたりすることはやがて変化・あるいは進化する。見据えるべきものからどの程度離れているかにもよるけどね。/意訳)(シングルについて

だそうです。スチュアート・ハワード、いい・・。

35.Surf Philosophies「Ryan」

ヴァース、コーラスのシンプルなリフレインから、曲のピーク・タイムまでのスパンが短いので、甘酸っぱいメロディを何度も楽しめる気持ちの良い曲。

昔の音はMGMTとかアニマル・コレクティヴ的な、しばしばリヴァーヴのかかったヴォーカル+キラキラしたシンセを用いたサイケだったのに対し、本作「Ryan」はバレアリックに的を絞りつつ、サウンドのレイヤーもシンプルにして随分と垢抜けた印象です。

Deloreanが「Deli」をドロップした時に「ロックバンドがバレアリックサウンド?」と評されていたのを思い出しましたが、Surf Philosophies「Ryan」は、生楽器とシンセサイザー、打ち込みのアンサンブルがとっても良くて、シンセの奥で鳴ってるストリングスが綺麗ですよね。

36.Fkj「Ylang Ylang」

前作のレビューを見ていた際に「独学で音楽を始めた」と聞き驚きました。

人間のヴォーカルの再生速度を操作するアプローチはヒップポップ的、ですがアンビエントっぽくもあるし、メロウなピアノに前述のようなアプローチを重ねるという意味ではポスト・クラシカル的であるとも言えるかも知れないし・・一言でジャンルを断定することが難しいですね。

御託は抜きにしても美しい音楽です。

“Ylang” というのは僕がフィリピンのジャングルの中で数ヶ月間過ごした場所の名前だ。ほぼ人が誰もいない場所だし、電気もない。夜だけ発電機を使って音楽制作をしていた。」という、制作におけるエピソードも良いですよね。

◎まとめ

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①最近、海外メディアのディスク・レビューで「Woozy」という言葉をよく目にします。

※Woozy:(酒などのために)頭がぼんやりする、くらくらしたというような意味(*辞書的な意味はこちら

テン年代初頭に出て来た「浮遊感」的なユーフォリアって、こういう「バッド・トリップ」的な蒙昧さに収斂されていっているのでしょうか?

よくわかりませんが、言われてみれば、不鮮明に歪んだヴォーカルだったり、ノイズの混じったサイケみたいな楽曲が確かに多かったかな、という印象です。

テン年代初頭「浮遊感」の時代はユーフォリア(多幸感)があったけれど、「Woozy」の時代はバッド・トリップ的後ろ向きのアティチュードを持っているのだとしたら、昔でいうところのチルウェーヴやバレアリック、トロピカルの勃興の裏でウィッチハウスが出て来たような、これも一種のオルタナティヴなのかな、と想ったりしました。

(チルウェーヴ参考:Washed Out)

(バレアリック・トロピカル参考:El Guincho)

(ウィッチハウス参考:Ritualz)

②それからこれは私の感想なのですが、最近のシングルリリースってサブスクリプションのみ(物理盤リリース無し)の場合も増えて来ていて、いわゆる「ジャケット」だったり、アーティストのヴィジュアルイメージそのものが探しづらくなっている気がします。

また、昔のように「公式サイト」的なものを持っていないアーティストも少なくなく、プラットフォームもYouTubeのみだったり、その他の配信サイトのみだったりと、なかなか情報の収集が難しいなと感じました。

参考のために各楽曲が収録されているアルバム・シングルのジャケット写真を画像としてまとめたのですが、もしかしたら間違っているかもしれません。

③11月の月間で聴いた音楽については、新曲リリース分以外にもあるのですが、今回紹介した36アーティスト/36曲の中でベストを決めるとすれば・・
それはPublic Memory「The Maze」です。

Neon Indianの「Toyota Man」はシーン的には絶対に無視できないと思うし、ToyやSebastiAn、Best Coastなど私の好きなアーティストの新譜ももちろん良かったし、アンダーグラウンドから出て来た方達の音楽もとっても良かったのですが、
完全に私の趣味のど真ん中を射抜かれました・・はあ、好き・・。

<番外編(11月リリースではないけどリリース時に心が死んでいて聞き逃していたもの)>

MAKOTO SAKAMOTO「reflection」

Barrio Lindo「Luciernagas」

Petite Meller「Aeroplane」




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