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ことば

今まで何度か書いてきたが、いまうちのチームに6年生は2人しかいない。

息子と、もう1人。


最近聞いたのだがそのもう1人の子が、試合に行くのを嫌がっているらしい。。。


発端は怪我だった。


去年の5月に息子が怪我をして約3ヶ月プレイできなかった。

復帰してからもブランクの重さに苦戦しつつも、ようやくふつうにプレイ出来るようになった頃、今度はもう1人の同級生の子が怪我で戦線離脱。


息子は復帰に3ヶ月かかったが、同級生はもっと長かった。


いや、正確には今も痛みは残っているらしいからまだ完全には治ってなんだろう。


詳しい病状も事情も知らんが、その子は早くプレイしたかったんだろうと思う。

チームメイトたちとサッカーがしたかったんだろうと思う。

もしかすると休んでる間にみんながどんどん上手になって、自分だけ置いていかれるような焦りがあったのかも知れん。


親御さんも行かせてやりたいよな。

本当なら経験できるはずだった試合や遠征も全部経験できないっていうのは親としては忍びない。

気持ちはわかる。


ただ、痛みが残ったままプレイしてもあまり上手くいかなかった。

上手くいかないどころかケガをかばいながらのプレイのせいで別の箇所も痛むようになった。

痛むので平日の練習は休まざるを得ない。で、平日休んだおかげで試合はなんとか来る。なんとか来るがやっぱり痛みがあって上手くいかない。

そしてまた試合で無理をするせいか平日の練習には来れなくなる。。。

その繰り返しでしばらく時が経ったが、痛みもなくならないし、プレイも上手くいかない。



傍から見れば「ちゃんと治るまで休んだら?」と誰もが思うと思う。

ただ当事者じゃない人間がそう言うのは簡単なんだけどで、彼もずっと休んで、ずっとずっと休んで、半年近く休んで。

休むことも苦痛になっていったんじゃないと思う。それでも痛みはなくならず、いつになったら治るのか焦りもあっただろうと思う。

休むのが正解だと誰もがわかっているが、休み続けるのも先が見えず、なかなかに苦しいものがあったんだろうと思う。



そうやって痛みを誤魔化すようにプレイを続けるうち、あまり上手くいかない彼にコーチから檄が飛ぶようになる。


「練習も来ねえんだから試合でくらいやれよ」
「練習も来ねえし、試合もやれねえでどうするんだ」



コーチのフォローをするわけじゃないが、コーチの考えや選手(子どもたち)に求めるものは単純明快で、

「試合出るならちゃんとやれ」「出来ないなら休め」「ちゃんと自分で(出る・出ないの)判断しろ」

この考えはずっとブレない。


自分のことは自分で決める自立した選手になれ、出る以上はケガを言い訳にするな、ってことだ。



その考え自体はなにも間違ってないと思う。

「練習も来ねえで」の言葉も、コーチからしたら「ケガして復帰してうまく行かなくて辛いけど、お前頑張れよ!」というエールなんだと思う。

鼓舞してるんだろうと思う。


ただやっぱり言葉が強いんだと思う。

特に上手くいかず自信を無くしている子にとっては、あまりに強気の正論でこられるとなかなか厳しいものがあると思う。

誰もが逆境でナニクソと奮起する強さを持っているわけじゃない。



復帰当初は、上手くいかなくても出来ないなりにチャレンジしていた彼も、次第にミスを恐れ出来ないところを隠すような消極的なプレイになっていった。


そして遂に試合に行きたくなくなってしまった。

これがもう少し上の年齢になれば、気にするなよ、とチームメイトが励ましてくれたり、一緒にかげでコーチの文句でも言ってストレス発散したりして気も紛れるんだろうが、大人が絶対の世界に生きる小学生にはそれはなかなか難しい。


親としても難しいところだ。

出来ることが限られている状況でも頑張ろうとしている子どもが叱られているのを見るのはツライだろう。

でも出来ていないのは事実なわけで、そこから崩されてピンチになるという場面があったりもするわけだ。



発された言葉をとって判断するか、言葉の裏の思いを汲み取って判断するか。

ただ一番は子どもで。結局は子どもがどう感じるか、だ。


息子も先日の試合で強豪相手に奮闘していたが、その試合中にコーチから

「お前がやれよ!お前がやらねえでどうするんだよ!」と叱られていた。


息子からしたら、何か悪いプレイをしたという自覚がないのに叱られて少し混乱してしまっていた。


あれも悪いプレイをしてたから叱られたんじゃない。

強豪相手になんとかギリギリで耐えるような苦しい展開だったあの場面、

「何とかしてくれ、チームを救ってくれ、打開してくれ、お前ならできる」

というコーチからのエールだったと思う。


たとえ違ったとしてもそう思った方がポジティブだし、そう思えるところがあるからこのコーチの元に息子を預けているわけである。


試合の帰り道にあれはこういう意味だったんだよ、おれが解説することで息子も、意味が分からず混乱したあの檄を、逆に意気に感じるくらいにポジティブなエナジーに変換できた。



息子が今のチームで続けたいと思っている以上は、親としてコーチと息子の間に立ってその関係をアシストする。それがおれの出した答え。


一方で、真意はどうあれ我が子が傷付くことをする人から子どもを引き離すのもまた正解だとも思う。

このチームだけがすべてじゃないし、サッカーがすべてじゃない。

ただこれも大人の出す正解で、子どもからしたらやっぱり目の前のものは失いたくないだろうしな。

なかなか難しい。



息子の同級生が今からどう復活するか、或いはこのまま辞めてしまうのか。

その子の親御さんもどう判断するのか。

その子にとって良い方向にいくといいなと思っている。


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