コロさん日記(6)〜ああ、猫語が話せたら〜
コロさんさ、ひとつ訊こう。
どうか忌憚なく答えてほしい。
君って……しばらく死なないよね? 「このまま徐々に弱って往ぬる」って話だったけど(第一話はこちら)、ぐんぐん復活してるよね? 元気だよね、体? だって明らかに前よりもでかい声で、頻繁に鳴くようになったし。ごはんもモリモリ食べるし。ニンゲンの膝の上に勢いよく飛び乗ってくるし。
あなた死なないでしょ? そのつもりないでしょ?
そうやって尋ねても、コロさんは黒目があまり伸縮しない瞳をじっとこちらへ向けてくるだけなのである。
コロさんは黙して語らないが、私は知っている。この状況を。これがどこへ向かうかを。なぜなら、前にもこういった事態を経験しているからだ。
マダラがそうだった。マダラというのは我が家のマダラ猫のことで、本来はウォッカ(テキーラとバーボンという兄弟がいた)という名前なのだが、あんまり性格が“ウォッカ”っぽくないというあまりにも恣意的な理由から、そのマダラ模様にちなんで安易にマダラと呼ばれるようになった。今では「マダ」や「マ」とさらに縮めて呼ばれている。もはや誰もウォッカと呼ばない。
マダラは正式には我が家の猫ではなく、“万年居候”という階位にある。大切なお見合いの日にベッドの下でぶるぶる震えているという失態を犯したマダラは、里親さんへのお披露目が叶わず、卒業するタイミングを逃した。
とはいえ、いつかはきっと兄弟たちと同じく、マダラも素敵な里親さんのところへ貰われていくのだろうと私は信じて疑わなかったが、上記の一件によって運を手放してしまったのか、気がつけばマダラはもう八年も我が家にいる。
それもう住んでるやろ。
コロさんも今はまだ里親さんを募集中らしいが、ラブコのニンゲン(女)からは、真剣に里親さんを探しているような姿勢がまるで感じられない。私がその話題を振っても、「ああ」とか「うん」とかいった気の抜けた呻きや、「コロさんはうちにいたがっています」という代理人めいた強弁が返ってくるばかりだ。
誰かおれに猫語を教えてくれ。
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心に水を。編集長の知見を得られないミニエッセイもよかったらぜひ。最新作は「穴に入りたい時に穴があったので入ってみた」話です。
これもう猫めっちゃ喜びます!