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コロさん日記(9)〜コロさんはラブコの稼ぎ頭〜

そういうわけで今日もコロさんは元気である。

つい二か月前に余命宣告を受けた(第一話を参照)とは思えないほど、朝になって私がホスピス──じゃねえし、おれの書斎だし──を覗けば膝に乗せろとせがみ、それに満足するとホスピスから出せとせがみ、ホスピスを出ると推定十六歳とは思えない健脚でもって、カタパルト射出される戦闘機よろしく廊下をすっ飛んでいって日課の巡回へと向かう。元気すぎる。

だからそう、この日記を楽しみにされている一部の奇特な方たち、どうか安心してほしい。コロさんはすぐには死なない。つか死にそうにない。これで数日後にぽっくり逝ってしまったとしたら、それはきっと持病とは関係なく、天変地異のたぐいの運命のいたずらであろう。

さて、そんなコロさんは元々、ラブコという非営利団体を運営する家人──と書いてはみたものの、今のご時世、“家人”という言い回しは男の主という視点から見ている感があって上から目線で、あまり歓迎されない気もする。要するに“嫁”のことなのだけれど、かといってこの“嫁”という表現もなんだか横柄な嫌いがあって尻込みする。が“家内”はもっとあかんだろう。“家の中にいる人”だなんて、あまりに前時代的な常識に基づいていて苦笑すらしてしまう、ああどうしよう──と、心の声が異様に長くなってしまったけれど、とにかくそういった時代の趨勢的な理由もあって、今後は家人または嫁または家内のことを“同居人のヒト亜族(女)”と呼ぼうと思う。

では気を取りなおして。

そういうわけで、同居人のヒト亜族(女)が運営している、ラブコという会社からやって来たコロさん。このラブコはざっくり言えば保護猫会社なのだけれど、最大の特徴は保護猫たちに働いてもらうことで運営費の一部を賄っているという点にある。

こう書くと「御社では猫ちゃんに働かせているのですか?それは虐待です、当局に報告させていただきます」とか言ってくる方が割と現実にいらっしゃるので、同居人のヒト亜族(女)も色々大変だなあと同居人のヒト亜族(男)である私なんかは同情してしまうのだが、言うまでもなく一般的なヒト亜族のように出勤させて働かせているわけではないので、どうか安心していただきたい。

要は猫たちをモデルにしたグッズを売っているのである。

そんな働き者のラブコキャッツの中でも、コロさんは稼ぎ頭だ。今までに販売されたコロさんグッズ──ロシアで手作りされたマトリョーシカや、コロさん柄が踊る風呂敷──も、すべて完売してしまったそうだ。すごい。コロさんは今接宅のホスピスにいながらも、遠隔的にラブコの運営ひいてはそこで保護された猫たちを助けているのである。

どうすればそんなに稼げるようになるのかな、コロさん。教えてくれよ。

ちなみにコロさん柄の風呂敷第二弾が、こちらで好評発売中です!

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“コトバと戯れる読みものウェブ”ことBadCats Weekly、本日のピックアップ記事はこちら!ヤケド注意のライター、チカゼさんによる『デューン』も大ヒット中のティモシー・シャラメの代表作についてのエッセイ。

寄稿ライターさんの他メディアでのお仕事も。ラノベ作家の蛙田アメコさんがカーサミアさんで連載している、フリーランスの赤裸々コラム!

最後に編集長の翻訳ジョブも。ちょっと前のお仕事ですが、リリース5周年を迎えた冒険アクション『Owlboy』のデモ版が、突然Windows PC向けに配信されたようです!個人的にもとても気に入っているお仕事で、勇気と友情の少年ジャンプ的な名作です、この機会にぜひ!


これもう猫めっちゃ喜びます!