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産業医大 永田智久 准教授×バックテック福谷 | withコロナ時代におけるテレワーク者の健康課題・生活習慣の変化を最新データから紐解く(イベントレポート)

大変、遅くなりましたが...2020年9月8日(火)に『withコロナ時代におけるテレワーク者の健康課題・生活習慣の変化を最新データから紐解く』オンラインイベントを開催させていただき、各省庁・産業保健職・健康増進施策ご担当者様にご参加いただきました。参加できなかった!という方もいらっしゃったので要点を絞りイベントレポート的にnote書きましたので、一つでも参考になる情報があればと思います。

特に、テレワークを推進している企業・健保の健康増進ご担当者様はぜひご一読ください。

COVID-19によるテレワーク開始と座りすぎの健康影響

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まずは、永田先生より、「COVID-19によるテレワーク開始と座りすぎの健康影響」というテーマで10分程度お話をいただきました!

COVID-19の流行に伴い、準備期間を伴わないまま、急激な、そして、ほぼ強制的なテレワークが開始されました。そんな状況下での課題といえば、みなさんも共感できるかと思いますが、”座りすぎ問題”!

「テレワークしていると、ついついオンオフの切り替えが難しく、座りすぎてしまう」という問題です。

長時間座っている場合、総死亡リスクがあがるのはもちろんなのですが、11時間以上座っている場合、運動しても総死亡リスクは高いままというデータも出ているようです。

日本人のデータでは、40歳以上の勤労者において、仕事中に座る時間が長いと、エンゲージメントが下がるというデータも出ています

これに対する簡単な対策は、非常にシンプルですが、小さな休憩をとって動くこと。30分ごとに3分間の休憩(立って動く)をするだけでも、疲労感が溜まらないということも分かっています。また、非常にインパクトのあるデータですが、連続作業時間が45分を過ぎると、仕事のミスの発生頻度が増加し始めるという報告もされています。

緊急事態宣言前後で労働者の健康課題はどう変化したか

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今回のデータは、緊急事態宣言がキッカケでテレワークを開始した労働者に対象を絞った研究データであることを念頭に置いて、データを見ていただければと思います。

どの症状も緊急事態宣言後に増加しています。肩こり・目の疲れ・腰痛というような不定愁訴が増加している理由として、「作業環境の不整備」「時間管理の不慣れ」「運動量の低下」などについて議論しました。特に急激なテレワークの移行でもあったため、作業環境の不整備は大きな要因の一つかもしれません。

また、運動量の低下に関しては、いちばん重要なのは「運動の継続」ではないかという永田先生のコメントを頂きました。人によっては、ウェアラブルデバイスなのかもしれないし、You Tubeでの運動なのかもしれないし、家族とともに目標設定した内容が継続できるかもしれません。

重要なのは、大きな目標ではなく、小さな目標をまずは立てて、それを実行することかもしれません。GOの三浦さんが素晴らしいツイートをされています。これも、まずは小さなステップからやってみることの重要性ですね。

あと楽しみながら運動するという体験も必要なのかもしれません。下記は、ポケットセラピスト導入企業様向けの毎月の勉強会で話した資料なのですが、ある程度の負荷量があった方が、簡単な運動よりも楽しみながら継続しやすいということです(ビリーズブートキャンプがわかりやすい事例です)。

誰でも出来るように、簡単なものをと考えてしまうこともありますが、行動変容ステージやそれぞれの身体状況に合ったコンテンツ提供が必要なのかもしれません。

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緊急事態宣言後の運動習慣の変化について

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フィットネスジムにいけない、集合型の研修も中止、歩数イベントも中止というように、運動不足のパンデミック時代とも言える時代になっているかと思っています。

運動不足の悪影響として、「生活習慣病の悪化」と「睡眠」への影響を懸念しているというお話はもちろん、糖尿病や高血圧で受療中の人は、新型コロナの影響により受診間隔がのび、病気のコントロールが悪化している人もいるのではないか。そのような人が運動習慣もなくなることにより、慢性疾患の状態が悪化する場合があり、企業の健康管理スタッフとしては注意してみる必要があるという議論もしました。

特に「運動が嫌い!」という人もいると思うので、そのような人は、座っている連続時間を短くする、つまり、座っている姿勢をリリースするような習慣を身に着けることが重要であるということが共通認識として議論されました。

また、”運動”という定義も、もしかしたら認識をもう少し変えても良いかもしれません

”身体活動”という言葉は本来、”運動+生活活動”から構成されていて、withコロナの時代は、生活活動を中心とした身体活動も重要になってくるのではないかと思っています。

下記も当社の顧客のみの勉強会でお話した資料なのですが、withコロナ時代の身体活動は、ジムでの運動や屋外でのランニングでなくても、自宅での掃除や庭仕事、買い物に行くことでも、まずはファーストステップとしては十分かと考えています。

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日本運動疫学会も声明も参考になるかと思いましたので、お示ししておきます。

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テレワークと身体愁訴の関連について

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冒頭でもお話した通り、作業環境(デスクや椅子などの環境)は、カラダの不調と大きく関わるのではないか。そんな仮説のもと当社と産業医科大学さまとテレワークに関わる共同研究を進めておりますが、非常に面白い結果が出ています。

赤色のセルの部分が統計学的に有意に関連が見られた項目ですが、「デスク環境の不整備」「情報機器が不十分であること」「周囲の音がうるさい(同居人もテレワークをしていてオンラインMTGの声がうるさいなど)」「作業空間が暗い」などの項目が、様々なカラダのお悩みと関連していることが明らかになりました。

本テーマで議論したのは、まずはこのような現状を可視化した上で健康増進施策を進めるべきか、それとも、施策をとにかく打っていくべきか。ということについてです。

永田先生曰く、「調査(アンケート)をやる場合、その対策まで考えてからやることが鉄則です。ただし、可視化して初めて、対策の必要性・重要性に気付くこともある。特に今回は皆が初めての経験(環境変化)であり、不安である。そのようなときは、状況を把握することを優先してもよいのではないかと思う」とおっしゃられていました。

これらの可視化は、当社と産業医科大学が共同で、無償で提供しておりますので、興味を持って頂ける企業さま・健保さまは福谷まで直接ご連絡ください!

テレワークとメンタル不調について

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最後のテーマとして、テレワークとメンタルヘルスについて議論しました。ここは意外な結果だったのですが、テレワーク者においてはメンタル不調が増えていると懸念されるかなと考えていましたが、「テレワーク環境・テレワーク日数」と「メンタル不調」に関連がないか、色々と調査しましたが、統計学的な関連性は見えてきませんでした。非テレワーク者とテレワーク者で比較しても、メンタル不調の割合が高いというわけでもありませんでした。

一方で健康増進施策のご担当者さまにお話をお伺いすると必ずといっていいほど、「テレワーク者のメンタルヘルス問題」というテーマが出てきます。永田先生ともこの差分(担当者が不安視している部分と、現状のファクトデータで分かっていることの違い)について、実はイベント前に議論していたのですが、一つの仮説として、「テレワーク者のメンタル状態の変化が見えていないから(可視化できていないから)、不安ということもあり、過大視しているのではないか」というところに落ち着きました。

しかし、もしかしたら、このテレワークがより長期化することで不調者が増加することも考えられるため、継続的なデータで評価していく必要性があると考えています(当社は継続評価も無償で実施しています)。

一方で、テレワークで肩こりなどの身体愁訴が増えていますが、これらの症状とメンタル不調の関連を調査したところ、全ての症状とメンタル不調は統計学的に有意に関連しており、双方向的にカラダとココロが影響しあっていることが分かりました

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永田先生曰く、筋骨格系の症状や疲労感がメンタル不調と関連していることが顕著にでている。これらの症状は、メンタルヘルスの状態と相関関係が高いことは明らかであり、いずれの因果の方向もあり、また、それぞれが影響し合っている。筋骨格系症状が悪化している人は、それを糸口に、メンタル対策として声掛けすることも必要。具体的には、今後ますますラインケアが重要であろう。繋いでもらう人の中では、元気がない、だけでなく、睡眠や筋骨格系症状にも目を向けてもらうよう、管理職に情報提供を行うことが必要ではないかとコメントされていました。

ニッセイ基礎研究所のデータでも、(今回のうつリスクとは概念が異なりますが)高ストレス者に産業医面談を進めても62%が面談を受けなかったことが分かっている一方で、自身で行動変容していた人の特徴として、身体愁訴で悩んでいた人は、メンタル対策の行動変容を起こしやすい事がわかっています。このことからも、メンタル対策を従業員の行動障壁を下げるということからも、フィジカルから進めていくことも一つかもしれません

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また、メンタル不調がある方は、緊急事態宣言中に「睡眠時間が減った」と回答する方が多いことも分かっています。ただ、この関連は、テレワークで業務時間が増えた影響ではないことが分かっていて、より詳細を今後分析していこうと思っています。

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今回、永田先生との議論で印象的だったのが、「まずは、現状を可視化して、現場レベルではこのような変化が出ていますよ」と管理職にしっかりと伝えることが、withコロナ時代の健康増進施策として重要ではないかという議論は非常にしっくりと来ました。

現在、当社と産業医科大学では、約2000名の健康状態・生活習慣の変化のデータを可視化しておりますが、平時の頃と比較すると、役員や部長が直接聞きたいと言ってくださることが増えています。10月末までにご連絡を頂いた企業さま・健保さまは無償で可視化レポートを発行できますので、ぜひ興味がある方は、バックテックまでご連絡ください。



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