ゲーム業界のVFXデザイナー向け〜就職作品プレゼン準備〜
そろそろ専門学校巡りの季節がやってくる。
今年もリモート開催が大半になってしまうだろうけど毎年楽しみなイベントだ。前回に続き、採用側の観点で「こういうところを見たいな~」ってポイントを解説。
今回はVFX(エフェクト)の分野について。
■VFX志望の学生さんが増えてきた
大手専門学校にも5、6年前くらいはVFX志望の学生はほぼいなかった。
HALのような大きな学校でもゲームのパーティクルを触っている学生は2、3人。もっと遡るとゼロだった。
でも近年は10数人、昨年なんかは20人近くいた気がする。
・ということは…
つまり競合が増えているということ。
となると、頭1つ抜きん出る策も必要になってくる。策と言っても単に目の前の目標ではなく、働き始めてからも役立つもののはずだ。
本題のポイント解説の前に志望者が増えた背景にも触れておきたい。
それを知ることで求められることの理由も見えてくるのではないだろうか?
■志望者が増えた背景
●ゲームエンジンの普及
1つ大きな理由は、ゲームエンジンの普及が大きいように思う。
ゲームエンジンとは、ゲーム開発に必要なツール一式が丸ごと入った便利ソフトと思っておいて欲しい。
代表格として、
この2大ゲームエンジンの存在が大きいと思う。
昔は開発者が実務でしか触れなかったツール群が、一般にも公開されたことで入り易くなったってことだ。
当然、そこにはエフェクトを作るためのプロと同じ環境が搭載されている。
●ゲームエンジンとパーティクルエディター
Unreal Engine
Unity
それぞれのエンジンにパーティクルとマテリアルを編集できる環境が用意されている。
これらの普及のおかげで学生さんもゲームのエフェクトを触りやすくなった。
■採用側が見たいもの
こういった背景があるとすると、採用側が求める物も変わってくる。
ひと昔前は、Bishamonでも使わないとなかなかゲームエフェクトには関われなかったはず。マテリアルを好きにいじれなかったからやりにくい面はあった。それにエフェクト単体しか作れないから見せ方も難しい。
だからある意味、優しい目で見ていられた。
しかし今は上記のようなエンジンをフリーで触れる。
厳密にはUnityには使用制限があるものの勉強する分には支障無い。
ということは、もうプロと同じ環境で作れるってことになる。そうなれば見る側の求めるハードルは当然上がっしまうので学生さんには厄介な側面もある。
が、心配は無い。
ここからが本題で、当然やるべきことをやっているかが問われるのは変わらない。そういった基本をちゃんとやってれば大丈夫。
以下に、基本として重要なポイントを解説して行こうと思う。
●ポイント1
・起承転結
キャラクター、背景など影響するオブジェクトを使っているか?
ゲームも映像もエフェクトにストーリーがあり、
上のような要素が見て取れないとユーザーの誤認を招くので、明確に意識しないと作れない。
意外と派手さばかりに気が行って、これが無い人が多い。
先生、ちゃんと教えてあげて…
●ポイント2
・キャラ、背景と絡みがあるか?
多いのが、ガシャガシャッて魔方陣が出てきて消えるだけの単体エフェクトを見せる人。
もうこういうのは、お腹いっぱいです…
コメントも難しく見所が分からない。
これらにエフェクトが加わることで起承転結が成り立つはずだ。
●ポイント3
・消え方に仕事の丁寧さがあるか?
意外とおろそかにしがちなのが消え方。
エフェクトの発生は結構瞬間的に出ることが多い。
しかし消えた方は余韻分の尺が長いケースが多い。
消し方こそ、作った人の観察眼や仕事の丁寧さがモロに見えてしまう重要ポイントなのだ。
細かい火花や加算のボケなどの素材以外の目立つ箇所は、透明度で消したりしない方がいい。ゲームエンジンを使っているならマスクアニメーション(ディゾルブ)はマストでやって欲しい。
・マスクアニメーション(ディゾルブ)
上の動画は、マテリアルで制御している。
これをパーティクルのパラメーター側から↑を制御しているパラメーターを動かす。このような手間を惜しんで半透明で消されると手抜きに見えてしまう。
実はこの消し方、消し方以外にも応用範囲が広くセンスも問われるかなり重要な手法だったりする。
マスク画像の作り方次第で表現は無限に広がる。
■シミュレーション系の落とし穴
・まずは基本をおさえてから
ゲームのエフェクトを作るならまずは、基本のスプライトやメッシュを使ったオーソドックスなパーティクルエフェクトをやろう。
スプライトのオーソドックスなエフェクト作りを手付けアニメーション。
シミュレーション系のエフェクト作りをモーキャプアニメーション。とアニメーションに例えると違いが分かりやすいかもしれない。
アニメーターの腕を見るのに、手付けアニメーションを見ないと技量が分からないのと一緒だ。
なのでHoudiniを使ったシミュレーション系をやる場合、それのみにならないよう構成を考えた方がいい。
シミュレーションのエフェクトに加えてエンジン内でスプライトエフェクトと合わせてゲームに使える物になってないと厳しい。他にもNiagaraと連動させるとかリアルタイムとの絡みがある方が望ましいと思う。
シミュレーションはレンダリング時間かけて見た目だけはリッチなものが作りやすい。ただ、まだリアルタイムとの親和性は低い。
だからそれだけを武器にゲーム業界へというのは、現時点では厳しいというのが現実だ。
■まとめると「おもてなし」が大切ということ
ポイント1~3は基本ではあるがある意味”全て”でもある。
「パーティクル」を見てって出すのではなく「エフェクト表現」を見てって意識がすべてだ。
「パーティクル」は1つのゲームアセット。
「エフェクト表現」は、ユーザーのプレイ結果を視覚的に示唆するインフォメーション。
だからゲームのVFXをやる人は、後者であって欲しい。
そんな視点で、もう一回自分が作ったエフェクトを見つめ直してもいいんじゃないかと思う。
今日はマジメなVFXのお話しでした。
~終わり~
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