Perfume loves マルコム・マクラーレン
Perfumeは約20年前の2000年(平成12)、広島の地元系グループアイドル「ぱふゅーむ」としてスタートしました。
その後2006年のポリリズムのヒットを経て、アイドルらしからぬテクノ・ダンス系のサウンドや、非常に凝った大規模な演出のライブパフォーマンスなど、他にはない個性と魅力を発揮しています。
面白いのは、表記されるジャンルが「テクノ」「J-POP」「アイドル」などさまざまで、前例がないために解釈が分かれてきたのではと思います。
実際はテクノというよりEDM、エレクトロハウスなどという方が適切と思いますが・・・
そしてPerfumeにはいい曲が本当にたくさんありますが、個人的に紹介したい曲をいくつかご紹介します。
Enter the Sphere
アルバムLEVEL3の1曲目、ライブのオープニングなどでもよく使われる曲で、始まりを予感させるスピード感が非常に好きです。
インストゥルメンタル中心の凝った構成で、中田ヤスタカ氏のやりたいサウンドが全面に押し出されていて素晴らしいです。
車で聞くとさらにいいですね。
中田ヤスタカのユニット CAPSULE - Sound of Silence (Remix)
マカロニ
ポリリズムと同じアルバムに入っていたちょっと異色な曲で、自らの内面を歌ったような歌詞とプライベートムービー的なMVが非常に切ない感じを与えています。
やわらかい歌詞と太いベースラインが対照的で耳に残りました。
2008年の作品なので、10数年前の代々木公園から渋谷、代官山方面の風景が懐かしく感じます。
途中に映っている、東横線の代官山の坂の途中にあった踏切は数年前になくなりました。
ナチュラルに恋して
これは個人的にMVが凝っていて非常に印象に残った曲で、Natural Beauty BasicのブランドCMにも使われていました。
NBBとPerfumeというのは、ブランドのイメージを考えると少し意外な組み合わせにも感じましたが、MVの仕上がりが素晴らしかったのでいいかなと納得したのを覚えています。
こういう雰囲気のMVは当時も今も、あまりないように感じます。
ちなみにこの曲は、それまでのPerfumeのダンス系サウンドとはかなり違う洋楽っぽさを醸し出しています。
実際はどうか分かりませんが私の耳には、マルコム・マクラーレンという80~90年代にイギリスで活躍した知る人ぞ知るアーティストのサウンドを感じました。
マルコム・マクラーレン - World’s Famous
アイドルにアイドルではないものを入れる試み
Perfumeのプロデューサーである中田ヤスタカ氏は、「アイドルが普通やらないことをさせるプロデューサー」として、既存のアイドルの常識を逸脱する新しいアーティストを作ることを目指していたように見えます。
そのため彼が関わってからのPerfumeは、感情的に歌を歌い上げない、無垢な少女を演じない、私生活を売らない、音楽を知らない層に合わせる音楽をしない、という戦略を取っていました。
私が特にいいと感じたのは、タレントを売るための歌ではなく、サウンドが中心でボーカルや歌詞は曲の構成の一部という作り方です。
2008年に出されたシングル「love the world」は、確か初めての大型タイアップCM曲(au)で、雰囲気がそれ以前とは変わり、表現が難しいですがブラックコンテンポラリーのサウンドも取り入れたようなスタイリッシュな曲でした。
今聞いても新しく、大人の音楽の要素を取り入れつつ、Perfumeらしさもちゃんとある曲だと思います。
love the world
そしてその戦略は見事に当たり、ここからチャート上位だけでなくドームツアーを行えるような一流アーティストへの道を進んでいくことになります。
TVには収まらなかったPerfume
またもうひとつ特筆すべきことは、ライゾマティクスとのコラボです。
真鍋大度氏率いるライゾマティクスは2010年ごろからPerfumeのライブ演出に関わっていたようですが、その後、国内だけでなく世界でのパフォーマンスや、アートといえるレベルの映像や照明の技術を発揮し、エンタメの世界を超えるパフォーマンスを実現してきました。
ただ、そのような先進性に向かい過ぎたからなのか、いわゆるお茶の間にはPerfumeは浸透せず、歌手やモデルが年を重ねてTVタレントとして生き延びるといった姿を彼女たちが見せることはあまりありません。
一番それに近づいたのはのドラマ主題歌のTokyo Girlだったかもしれません。
Perfumeは、中田ヤスタカ氏という異才の戦略で、他に例のない新しい音楽ユニットでありアイドルであるという形を作りました。
テクノ、ハウスからマルコム・マクラーレン(?)まで多方面に至るマニアックなサウンドと、それから最も遠いはずの若い女性アイドルが出会って起きた衝撃は、今後もそう簡単には発生しないだろうと思います。
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