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ネットとテレビの交わらない世界線

先日、アンミカ氏が子供の頃朝鮮半島から小舟で入国したといううわさがXで広まりました。

過去のテレビ番組で流れていた入国時のいきさつ紹介では家族の乗った船で直接上陸したと表現されており、ご本人はそれを否定し親に連れられて来たと言っていますが、いずれも証拠は示されていません。

そういった不明確な彼女の出自が、大々的なネットCMへの起用によって多くのネットユーザーに問題視されたということになります。

彼女の支持層は主婦や年配の方、歯に衣着せぬ彼女の発言を歓迎する人で、テレビを比較的熱心に視聴している層だと思います。
アンミカ氏の出演番組やCMを見てもそういった層の人気が伺えます。
オードリーの番組でもかなり大きな扱いで出演していたのを覚えています。

しかしそういったテレビでの人気とは打って変わって、今回ネット民から大きな反発を受け、さらに過去の不穏な発言も取り上げられ一部では不買運動的な動きまでありました。


メディアによって真逆な反応


今回の事件は、ネット等の新しいメディアとテレビ等のオールドメディアがそれぞれ異なる階層の視聴者を持ち、今後交わることはないという分断の未来を示していると思います。

以前ならネットユーザーといってもある程度はテレビも見ていましたが、今はネットユーザーはテレビを見ず所有もしていない場合があり、テレビユーザーと共有できる情報が非常に少ないです。

またそれらの新旧メディアは利用時の前提条件がまったく異なります。

テレビ・新聞・雑誌等のオールドメディアとそれに関連するネット系メディアは精査された正しい情報を流し、視聴者がそれを信頼して受け取るというのが暗黙の了解となっています。

片や独立系ネットメディア・SNS・個人は、それが正しいか否かに関わらず常識の範囲であれば自由に意見を表明していいとなっていて、ユーザー側が自ら情報の質を見極めなければ正しい判断ができません。

そうしたまったく性質の違う「テレビ的な安心」と「ネット的な自由」を志向するそれぞれのユーザーが、まったく交流なく併存しているというのが私の見立てです。


テレビユーザーとは誰なのか


ある特定のユーザー像を具体化するために、通常はデモグラフィック属性、つまり年齢・職業・地域などといった統計学的な情報を利用します。

しかし今は好き嫌いや置かれた状況によって、属性が違っても同じ傾向を示す、または逆に、同じ属性でも個人個人異なる行動をするというのは当たり前として理解されるようになってきました。

例えば藤井風ファンには、私のようなサウンドから入った音楽好き、ルックスやメッセージに魅了された女性や年配の人、主題歌や弾き語り動画から入った若い人や海外勢といった異なるデモグラの人が混在しています。

そういった観点でテレビユーザー、ネットユーザーというものを考えたとき、やれお年寄りや主婦だからテレビ派だ、オタクで家にこもっているからネット派だ、なんていう単純な見方は通用しません。

そこで私が考えたのは、情報感度や情報処理能力による区分です。


嘘を嘘と見抜けなければネットは使えない、という名言がありますが、嘘を見抜くための情報収集力や分析力はネット中心のユーザーが高く、オールドメディアを愛用するテレビ中心のユーザーは明らかに低いです。
情報の伝達速度・リスクへの敏感さも同じく言うまでもありません。

アンミカ氏の件でも、Xを数時間眺めているだけで、彼女の発言の矛盾に関するエビデンス、日本の出入国や外国人の在留資格等のルール、1970年代の日本と韓国間の外交的問題の存在などを知ることができました。
(もちろん自分でも調べてその内容を確かめました)

その速さで普通に情報を処理できるネットユーザーと比べると、テレビユーザーは10分の1以下の速度しか持っていないと思います。
こういったセンシティブな問題がテレビで取り上げられるまでの長いタイムラグを考えると、もっと遅いかもしれません。


情報社会における格差


そしてそういった処理能力を身につけていない人々は、年齢・性別・地域等を問わず、その能力の低さにより複雑な情報に自分の力で対処できず、すでに情報社会の低い位置にしかいられなくなっています。

2010年代後半から義務教育で本格的な情報の授業が始まっていて、情弱な人は今後ますます取り残されていくでしょう。

現代の日本では情報社会における立場の違いが身近なメディアの利用動向として表れており、今回のアンミカ氏のような賛否が分かれる人への反応の違いがたまたまその格差を露わにした、と言えそうです。

最後に、この格差はほぼその人の能力のみに基づいているため、貧富の差や人種・性別といった条件の違いから来る格差とは違い、教育以外の方法で是正または解消するのがとても難しいと思います。



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