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AIがイラスト・写真・文章・音楽・動画をすべて作れてしまうようになったとき、人間は何をすべきか?

Alの進化がすさまじく、深津貴之さんの記事によると、「あらゆる創作に携わる全ての人を巻き込む、歴史的な転換点」が迫っているということです。

もちろんまだ実験的な段階なので、誰でも今すぐに使えるわけではないようですし、商用サービスになった際の費用や利用制限なども不明で、すぐにAIが人間のクリエイティブを凌駕してしまうということではないようです。

しかし、AI技術の指数関数的な進化スピードを考えたとき、遠くない将来に相当な範囲のクリエイティブがAIに置き換わると考えてもおかしくはありません。


これはクリエイターにとって仕事を失う危機ですし、仮に失わなくても安価で高品質な競合が多数出現する状況を意味します。

また一般の人にとっては、文字だけのものにビジュアル、歌詞だけのものにコーラスと楽器演奏、音声だけのものに映像、平面だけのものに3Dがほぼ自動で付加されるのが当たり前になる世界が来るそうです。

反面、フェイクの増加、それを利用した犯罪、ブームに乗った粗製乱造など、決して良いことばかりではないだろうと予想します。

しかし一番大きな変化は、オリジナリティとはいったい何か?が問われるようになることだと思います。


データがあるものはすべて学習して模倣可能


AIは読み込めるデータならすべて読み込んでパターン化し、学習の結果、それを再現することができるようになります。

現在はデータ容量や処理速度の限界がありますが、じきにそれが拡大され、すべてのものを学習し、アプトプットが本物と見分けがつかないレベルに達すると思います。

しかも現在の法律では、そういったパターンの学習による模倣や再現はそのままコピーしたわけではないため違法ではなく(国によって異なるようですが)、精度が向上すると、合法な範囲で本物と見分けがつかないものが流通し始める可能性があります。

そうなったとき、目の前にあるコンテンツが、人による創作かAIによる学習の結果かを見分けられる人はいなくなり、AIの作品で埋め尽くされてしまうと恐れる人もいるかも知れません。

しかし私は、そんなこともないんじゃないかと楽観的に考えています。
その理由は下記の2つです。


① 法律やルールが整備され、オリジナル作品が保護され続ける


音楽、絵画、小説などはかつてすべて手作業だったため、オリジナルが1点かほんの少ししかなく、大量に複製されることはありませんでした。

しかし印刷技術、写真技術、録音技術の発達により、高精度の複製が可能になり、複製の権利=コピーライトという考えが生まれました。

複製自体は技術的に可能でも、オリジナル作品の権利者が許さなければ市場に出回ることを認めないというルールができ、今もそれは続いています。
むしろNFTなどの技術でそのルールは今後強化されると思います。

AIによる学習や模倣が現行法には抵触しないとしても、NFTでオリジナル作品を守ることはできると思います。
その前にAI学習のルールが変わる可能性もありますが。

当然新しい技術が普及するまで過渡期特有の混乱はあると思いますし、NFTもきっと完璧ではないでしょうが、改善されていくと思います。


② 複製技術によってむしろコンテンツが進化する


オリジナルと複製のせめぎ合いというのは、複製技術の向上によって常に発生してきましたが、音楽の分野は特にその影響を早く受けたと思います。

ラジオ、レコードとステレオによって、歌手や演奏家の生の音が容易に再現できるようになり、テープレコーダーによって個人が音を記録・再生できるようになりました。

さらにシンセサイザーによって疑似的に楽器の音を再現でき、サンプラーによって記録した音を再構成して別の音楽を作ることができるようになりました。
楽器の構造と演奏技術をコンピュータ内で再構築し、実際の演奏と理論的に全く同じ音を出すことも可能です。

それだけでなく、レコードをDJがこすって音を出したり、回転数を増減させて別の音楽を作ったりもしました。
80年代初めにDJがレコード盤をこすってビートを作り、それがスクラッチと呼ばれて流行し、ターンテーブルを楽器とみなす考え方が生まれました。

Herbie Hancock | Rockit スクラッチを広めたと言われる曲

最近ではPCで音楽を作ることが当然となり、ボカロのように合成音声に歌わせるのも普通に行われています。
人が音を出さずにすべてPC内で作ることも出来ます。

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ちなみに私は、1990年代にジャングルという音楽ジャンルが生まれるのを見ました。

最初はレゲエなどの既存の曲からリズムだけを抽出した音源を高速で流しながら、そこにラップとサンプリング音とベースを爆音で合わせただけの曲が多く、非常に刺激的でしたが、粗雑で低品質の音ばかりでした。

M-Beat | Sweet Love ジャングル初期の名作

しかしそれが今やドラムンベース、リキッドファンクとも呼ばれる一大ジャンルに成長し、何がクリエイティブのきっかけになるか分かりません。
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ここまで複製技術によって進化した音楽ですが、すべての始まりである「歌手や演奏家が生で音楽を披露する」コンテンツはその複製技術によって淘汰されてしまったでしょうか?

もちろんされていないですし、オリジナリティという付加価値が認められ、むしろ以前より生の音楽が求められていると思います。

また進化の過程で生まれたさまざまなジャンルの音楽は、いずれも消えずに併存し、音楽の豊かさに貢献しています。

私は音楽の進化と同様に、AIによる作品がより人間のオリジナリティやクリエイティビティを刺激して、多様なコンテンツが生まれるきっかけになると思います。

厳しくなるのは、オリジナリティがなくクリエイターの顔が見えないコンテンツで、素早く安価に高品質で製作できるAIにはすぐに太刀打ちできなくなるでしょう。
でも私は、それはそれで仕方がないと思います。



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