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ヤフコメという魔境に集う普通の人たち

Yahooニュースのコメント欄は、匿名のため無責任な発言が飛び交い、荒れるので有名です。
政治やコロナ、芸能系のスキャンダルなど荒れやすい題材の記事は特にひどい状況で、コメント欄が閉鎖されていることも少なくありません。

私は以前ただの好奇心から、「ネットで荒らす人ってどんな人なんだろう?」と興味がわき、Yahooニュースではないですが、別の場所で荒らす人への探りを入れてみようと画策したことがありました。


どんな人が荒らしているのか


ある程度参加者の属性が絞られるマイナーな匿名掲示板サービスで、その場所にそぐわない発言で騒がせている人に対し、今までの発言内容の分析や、私からの質問にどう反応するか見てみるという方法です。

その場所は実際に私が興味を持って利用していた場所で、普段はほぼ平穏なのですが、ある時期に急に毛色の違う人が現れて荒らすことが増え困っているという状況がありました。

荒らす人の発言をよく読んだところ事実と違う点が多く見られたので、冷静にそれを全部指摘し、なぜそんな発言を繰り返すのかという質問をしたところ、相手はこのように言いました。

「偉そうに正論ぶって重箱の隅をつつく若造め、今はそんな奴ばっかりだ、正々堂々と議論してみろ」


えっ、散々荒らしてるあんたがそれ言うの・・・と思いましたが、そういうニュアンスの逆切れ発言の後、愚痴を少し言って退散していきました。
私は年齢を明かしていないのになぜ若造と思ったのかも謎です。

同じような数人に対応した際も基本的には似た状況で、捨て台詞を吐いて退散していく人が多かったのですが、共通点は下記のようになります。

・知識はありそうな高年齢の人、普段から高圧的な物言いで、文章を書く仕事や、多くの人の前で発言することに慣れているような男性

・男女問わず積極的に発言してしまう人で、リアルではそれが受け入れられているようだが、ネットでも感情をそのまま出してしまい誤解される人

もちろんこれは私の非常に狭い範囲の観測結果でしかなく、世の中の傾向ではありませんし上記もただの推測に過ぎません。

しかしこのような人は確かにいて、隣にいたらウザいですが、むしろリアルでは強気にうまくやっているタイプのようにも感じました。


匿名という楽しい罠


私の推測では、ネットのコメントで荒らしている人もリアルな世界では普通の社会人である可能性が高く、素質として「高圧的」「感情的」といった傾向は感じられるものの、明らかな悪意や陰謀的なものはないようです。

ただ、匿名という彼らにとって自由を感じられる状況にいるときに、その場の議論や世間の動向が気に入らない方向へ流れていくと、途端に迷惑発言のスイッチが入ってしまうようです。

そして、一方的な悪口、根拠のない非難、感情的な発言が繰り返されます。

まるで普通の人がアルコールの力で普段の自制心が解け、何気ない言葉に過剰反応して喧嘩してしまうような状況です。

私にはまったくない感覚なのですが、「匿名」という自由はそれほどまでに心を解放してくれるマジックなのでしょうか?


可視化される悪意


このように「匿名」という状況は、ある種の人に対して無責任な発言を助長する可能性があると言えます。

当然それ以外の理由もあると思いますし、何かの目的を持って組織的に荒らしている人もいるようですが、それはたぶん一般社会人ではない別の立場の人なのでここでは言及しません。

アクセス数を稼ぎたいネット事業者が匿名でコメントすることを許容して利用者の心理的ハードルを下げ、広告や登録による収入を最大化したいという気持ちは分からないでもありません。

しかしこのような状況では、アルコールが法律で管理規制されているのと同じように、「ネットの匿名利用」に対する規制が強まると思います。

個人的には「多くの人がいる場にふさわしくない匿名の意見は制限しても良い」というルールがあれば十分で、ヤフコメであれば、非表示をデフォルトにして見たい人だけ表示するようにするだけで相当違うと思います。


現在は匿名のネット空間が「悪意の可視化」装置として機能していて、かつては思っていても口に出すのは下品と考えられてきた言葉が表に出てきてしまっています。

品性、品格のような数値化できない態度はネットのような情報密度の低い場では伝わりづらく、初めからそんなものを持っていない人々が悪意むき出しで争っているという構図です。

そうでない多くの人々に今できることは、そんな荒れた場には赴かず、黙って自分が正しいと思うことをするだけです。
そういう静かな連帯感がnoteのような場で得られればうれしいです。



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