弁理士業の魅力 弁理士業は儲かるの?
こんにちは、40代弁理士の石川です。今日は、これから弁理士を目指す若い方や学生さんが、本当に知りたいであろう本丸に切り込みたいと思います。
弁理士業は儲かるの?
なかなか難しい問いです。ですが、若い人や学生さんにとっては、最も重大な関心事となりますから、私なりに、思うことを書きたいと思います。
1.特許出願手数料の単価は高い
1件の特許を出願するために、弁理士に支払う手数料は、ページ数加算を考慮して、25~30万円程度と思われます。安くしている特許事務所でも、20万円くらいはかかると思われます。
そうすると、世の中のサービス業の中では、高いほうになりますね。
飲食店で飲食をすれば、800~2000円程度かかります。美容師さんにヘアカットをお願いすれば、5000~8000円程度かかります。風邪やインフルエンザになって病院に行けば、保険適用となっても、薬代を含めて少なくとも2000~5000円程度はかかるでしょう。
世の中のあらゆるサービスの中で、最もサイフが痛むと思われる車検(車検代行)でも10~16万円程度が相場であると思います。
そうすると、弁理士の特許出願手数料というのは、世のサービスにおいて高いほうに分類されると思います。
なぜ、そのように高い手数料が維持できているのでしょうか。それは、安売りが難しい業態だからです。特許出願用の明細書は、依頼者から発注があってから製作する一品制作物ですから、工業製品のように予め大量に製作しておき、コストを抑えるというようなことができないからです。
芸術家が、正式な発注依頼を受けてから、彫像などの美術作品を製作するのに近いのです。明細書作成には、大変なもので1か月程度かかるので、最低でも20万円程度を頂かなければ、割に合いません。
なので、特許出願を1か月に数件こなしつつ、その間に適宜、国内・海外の中間処理をこなせるような実力があれば、当然、高収入を狙えるようになると思います。
2.原材料費はかからない
さらに、弁理士業では、製造業などとは異なり、原材料の仕入れなどというものはありませんから、売り上げ≒利益ということになります。
必要なものは、紙と鉛筆(現在ではパソコンとコピー機)と自分の頭脳のみです。あと、当然ながら弁理士資格も要ります(非弁行為になってしまいますから)。
事務所の規模が大きくなれば、人件費、オフィスの家賃、パソコン代(ワード、エクセル等のライセンス費用含む)、勉強用の書籍代、研修受講費用、電気代、出願管理ソフト費用、税理士費用、その他の諸経費がかかってきますが、それでも他の業種に比べれば必要経費としては微々たるものでしょう。
なので、他の業種に比して、利益率は非常に高いのではないでしょうか。
3.新規参入が難しい
業務独占の国家資格ですから、資格がない人が弁理士業を行うと、弁理士法違反になります。このため、新規参入者の脅威というのは、競合の他の弁理士だけということになります。
さらに、仮に弁理士資格があったとしても、新規参入はなかなか難しいのが現状です。
人は習慣の生き物ですから、変化を嫌う性質があります。企業の知財担当者も同じで、特許事務所が変わると、これまでと出願までのオペレーションが変わることになるので、事務所を変えることに抵抗を覚える方が多いと思われます。
したがって、新規参入は難しい反面、古参の弁理士には有利な環境があります。よって、一旦、顧客企業との信頼関係ができれば、その後は安定的に依頼を獲得し、利益をあげていくことができるように思います。
4.商標登録出願手数料は低め
商標登録出願は、近年、手数料が下落する傾向にあります。理由としては、インターネット広告で集客し、廉価で出願を請け負う弁理士によるビジネスモデルがメジャーとなってきているからです。
商標登録出願手数料の下落は、時代の流れですから、逆らうことはできません。弁理士となるからには、やはり特許出願を扱えるようになることが高収入への近道かと思われます。
ただ、商標弁理士は、上記のように価格面でそうとうに過当競争が進んで、ライバルが少なくなっていますから、将来的にはニッチなスペシャリストとなり得る可能性があります。よって、今は苦しいかもしれませんが、今後さらにプレーヤーが少なくなる可能性がありますから、逆に将来的には有望なのかもしれません。
さらに、我が国の商標登録出願の件数は、近年、増加する傾向にありますから、仕事の量という意味では、将来有望な業務です。
意匠は、近年ユーザーフレンドリーにするための大改正がありましたから、今後、出願件数が増加していく可能性があります。が、今は未知数です。
5.化学弁理士は絶滅危惧種
化学の弁理士は、団塊世代、現役を含めて少なく、絶滅危惧種であることはすでにお話ししました。
ということは、将来の商標弁理士と同じく、プレーヤーが少ないのであるから、希少性から将来有望であると思います。化学弁理士は、企業間で奪い合いになると思うので、価格競争など起こるはずもありません。これからの化学弁理士は儲かるのではないでしょうか。化学の学生さん、ウェルカムです。
6.私個人としての感覚
弁理士の知り合いや旧友に会うと、大抵の方が成功されており、お忙しい様子ですので、やはりこの業界は恵まれているのだと感じています。
他の業界と比較しているわけでもなく、何ら客観的な意見ではないのですが、私達の肌感覚として、この業界の人たちはそれなりに儲かっているのではないかと推測しています。
それなりに、一定程度の需要があるのではないかと思います。したがって、この業界で弁理士として平均的な能力さえあれば、それなりに皆さん成功されているように思います。個人の能力に応じて程度の差はあるかと思いますが、それはどの業界・業種でも同じことだと思います。
年収としては、会社勤めの方よりも少し良いかなというところですね。ただ、会社勤めと言っても、キーエンスのような会社ですと、平均年収は二千万に近いようですから、そちらには正直、負けるのかなというところです。
7.まとめ
まとめると、特許出願の単価は高いので、特許出願を担当できるようになることが高収入への近道かと思います。弁理士資格とパソコンとコピー機があればできる仕事なので、経費はそれほどかかりません。古参の弁理士に有利で、新規参入は難しい業界です。
商標弁理士は、今は苦しいかもしれませんが、将来的には有望かもしれません。意匠は今後の件数増加に期待です。化学を扱える弁理士であれば、なお有望でしょう。
私の知り合いの弁理士も、皆さん飛ぶ鳥を落とす勢いでご活躍されています。逆に、弁理士になって、うまくいっていないという方にお会いしたことがほとんどありません。
そういうことから、弁理士は、それなりに稼げる職業であると思われます。一定程度の需要がある業界ですから、弁理士資格があれば、少なくとも食っぱぐれることはありません。
こうゆう次第です。
もし若い方や学生さんで、知財に興味がある方は、ぜひ弁理士を目指されてはいかがでしょうか。
弁理士の石川真一のフェイスブック
facebook.com/benrishiishikawa