映画館

人生初挑戦~映画『ガリーボーイ』覚え書き

 きっかけは、ブルータスの記事だった。
 去年出た映画特集の号を偶々手にしたところ、監督と、ラッパーの対談を読んで、心が動いたのだ。
 調べたところ、目黒シネマで上映中と知り、早速足を運んだ次第。

 これが、人生初のインド映画、そして名画座行きだった。

 そんな挑戦の結果は・・・・・・、

 ずばり大当たり!
 インド映画というと、極彩色のイメージがあったが、この作品は、色ではなく、言葉の力、内からわき出る炎のような言葉でもって、見る人を巻き込んで、熱くする。

 スラムのムスリムの家庭に生まれ、狭い家の中で祖母や両親、弟と暮らす主人公。
 大学には行かせてもらっているが、夢も希望もない、底から這い上がれる可能性など微塵も見えない。
 ラッパーとして活動し始めたことに対して父親は激怒、「いつまで夢を見ている」「身の丈に合わない夢を見るな」と叱る。が、彼は、冒頭では妻に無断で若い第二夫人を連れ込むわ、怪我をした自分の代役(運転手)を息子に押し付けるわ・・・「諦め」に胡座をかいているとしか思えない。
 だが、ラップとの出会いが、ムラドに力と勇気を与えた。父の生き方の押し付けや暴力、社会の理不尽に抗い、戦い、生まれた時にはめられた、あるいは自分の思い込みで作ってしまった足鎖を溶かして、上へ、広い世界を目指していく。

 言葉の炎で足鎖を溶かすーーー初めて主人公ムラドが書いた詞の中でも印象に残る一節である。

 俺たちには価値がある!時代が来ているんだ!

 どんな国のどんな言語であっても、心から吐き出された言葉は、人を動かす力を持つ。

 見るだけで元気の出てくる映画として、『ガリーボーイ』は、是非勧めたいと思える一本になった。

 欠点をあげるなら、長すぎることだろうか。

 PVを撮るシーンといい、のめり込むシーンもそこかしこにはあったものの、150分以上はさすがに…(笑)

 映画館を出た時には少々頭痛がしていた。

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