見出し画像

【詩】嘆き

冷たい手先。

刻一刻と進んでいく秒針。

ぼーっと眺める。


陽と、陰を、行ったり来たり。

輪郭のない靄のかかった色たちは

意思を持つ者が、持たない者を

平気な顔して染め上げてしまう。


不安が舞い降りる毎日。

衝動的に動き出す身体。

と思ったら、鉛のように引きずる身体。


締め付けられる心臓、苦しい。

わたし、どこにいるのだろう。

無気力で、空っぽで、孤独だ。



夜が怖い。

人が怖い。



「やりたいことやっていいんだよ」

「休んでいいんだよ」

「やりたくないことはしなくていいんだよ」


やらなくちゃ、自分はこうであるべき、は

"わたし"の身体のなかを長いあいだ反芻していた。

握っていたはずの"それ"は、無くした。

輪郭も無くした。ふわふわと。


いい色に染まるように

黒や紫は奥底に隠してきた。

白をかき集めて、鮮やかな色をかき集めて。


大切に握りしめてきたはずの

"本当のわたし"を見失ってしまった。


自由で開放的で

白く輝いていると想像していたその世界は

陰湿で錆びついた茶色をしていて

光さえ奪われた世界。


向けば向くほど、遠退く。

信じられず、遠退く。


耳をかすめる声と記憶。

天井へ上がる"それ"と、床へ這いずり回る"それ"。

わたしはベッドに座る。


まだ秒針を眺める。


ああ、足先も冷えるな。



わたしには制御できない。

"わたし"が制御できない。

現在地はどこなんだろう。



冷めたなら、温めなおせばいい。

嫌なら、やめればいい。

元気がないなら、休めばいい。

みんなおなじだよ、普通だよ。


浴びせられた凡庸な言葉が

すんなりとわたしの身体に入ってくれれば

どれだけ生きやすいのだろうか。


まだ、夜が、続いていく。

不安定な道が、続いていく。


「温かで穏やかな光を見失わず、貴方が生きていけますように。」 そんな気持ちでnoteを届けています。 気に入ってもらえたら【スキ】【フォロー】 さらに【サポート】で応援して頂けるととっても光栄です。