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小説なんて、書いてどうするのだろうか(エッセイ)

5月19日(日)に開催される文学フリマ東京38に、文学サークル「ペンシルビバップ」で参加します。

「幽霊」がテーマのエンタメ小説・純文学・エッセイ・詩・短歌の詰まった文系総合同人誌を持って、「第二展示場 ブース:つ-19」にいますので当日ご来場される方は、ぜひお立ち寄りください。

🕙5/19(日) 12:00〜17:00開催
📍東京流通センター 第一展示場・第二展示場
📘文学フリマとは?→https://bunfree.net/attend/
📕イベント詳細→https://bunfree.net/event/tokyo38/
🎫チケット→https://bunfree.net/event/tokyo38/tokyo38_admission/


小説を書いてイベントで出す、といった直後に書くのも何ですが、小説を書いていると時々、小説なんて書いてどうするのだろうかと頭をよぎる時があります。

私が小説を書き始めたの小学生の頃で、ワープロをオモチャ代わりにして小説を書いていました。当時は小説だけではなくて、ノートにマンガも描いていたし、RPGツクールでゲームを作ったり、とにかく創作遊びが好きな子供でした。

今の子供たちも言われているのかも知れませんが、私が子供だった当時は「最近の子供は本を読まない」などと言われておりました。実際、私の周囲にも本を好きで読む友達は少なく「文字ばっか読んでると頭が痛くなる」と言う友達ばかりで、本が好きなことはまるで特別な才能であるかのように得意になって、私は小説を書き続けました。

マンガはそのうち描かなくなり、ゲーム作りも続かず、でも小説だけは書き続けました。中学を卒業する前にはもう将来は小説家になるとしか考えていなくて、進学先も就職先も「どうせ小説家になるから関係ない」とすべて適当に選びました。10代の当時はまともに作品を完成させられず、何も考えずに思いつくまま書いては飽きたら作品を捨てるという行為を繰り返していたにもかかわらず20歳までにデビューできるし30歳までにハリーポッターを超える作品が書けるはずだと何の根拠もなく信じていました。

当然、現実はそう簡単にいきません。
どれだけ書いてどれだけ応募しても新人賞にかすりもしないまま時間だけが過ぎていきます。子供の頃と変わらず小説を書き続けて、子供の頃と変わらず無名のままです。

執筆活動には変化がなくても、生活は変わっていきます。就職、転職、転居に結婚、夫になって父親になり、自分の小説のことばかり考えているわけにもいかなくなります。仕事、家事、育児、それらの合間を縫うようにして執筆を続けます。時間を捻出するために朝は四時半に起きて書き、満員電車の中でスマホを睨みながら推敲します。そうして完成させた小説を新人賞に送ってもかすりもしません。「小説なんて、書いてどうするのだろうか」という疑問にぶち当たります。選ばれてデビューしたプロの人たちでさえ本の売れない時代にあがいているのに、選ばれなかった自分は何の意味があって書き続けるのだろうか。ファンがいて作品を求められている人でさえ筆を折るのに、誰にも求められずに何故書き続けるのだろうか? ここで「何故なら私は書くのが好きだからです」と結論をつけられたら良かったのに、残念ながらマンガを描くのだってゲームを作るのだって好きだった。けれどもうやっていない。「好きだから」だと小説だけは続ける理由にならない。考えても答えが出ないということは本当はもう書き続ける理由なんて何ひとつなくて、ただ惰性で作品を書いているだけじゃないのか? 書くのを辞めても生活は何も変わらないし、むしろ創作に使っている平日の時間を睡眠にあてれば睡眠不足も解消できるし、土日の浮いた時間は山登りに使えば運動量も増えて一石二鳥じゃないか。考えれば考えるほど小説を書き続けるより辞めたほうが健康的な生活ができる気がする。決めた。もう小説なんて書かない。二度と書くもんか。これからの人生は山に登ることだけ考えて暮らそう。自分が書いた過去の作品は紙もUSBもハードディスクもGoogleドライブもすべて焼き払い、生まれてから一度も小説なんて書いたことありませんて顔で生きてやる。創作をしていた過去なんて誰にも一言も話さないし晩年を迎えても遺言状すら書かずに死んでやる。その頃には東武という筆名で創作をしていた男がいたと覚えている者は誰も居らず、無名の男として私は墓の下に葬られる。それでいい。いいはずだ。それともやはり未練があるのか? 心の底では執筆への未練があって、死んだら幽霊として化けて出るのだろうか。東武の幽霊は創作を辞めようとする人間のところに夜な夜な現れては「辞めるならお前の代わりに俺が書く」と恨み言を述べるのだろうか。あるいは創作を楽しむ人の背後に立って妬みの眼差しを浮かべるのだろうか。いずれにせよ執筆に未練を残した幽霊は創作者に取り憑こうとして現世を彷徨うのだ。そう、今はアナタの後ろに……。こんなオチじゃありきたりかな?「アナタのうしろにいる」というラストだといかにもホラーの定番って感じがするからウケないか? いやテーマはホラーじゃなくて幽霊なんだから、あえて定番の「アナタのうしろに」系のオチを使ったとしても、面白くする方法はありそうだな……かといって幽霊がテーマだからコメディとかは避けてなるべくなら王道のホラー要素はいれたいし……

などと「小説なんて書いてどうするのか」を考えていたはずが、いつの間にか小説のネタを考えてしまうのです。小説なんて書いてどうするのか、未だに明確な答えはないのですが、答えを出さないまま書き続けられるのは、10代の自分が何も考えずに書き続けて執筆の習慣を身に着けたからで、それだけでも当時の選択は間違っていなかったと信じています。

そんな私の書いた「幽霊」がテーマの小説他、メンバーの心温まる小説やエッセイ、詩や短歌も揃えておりますので、5月19日(日)は東京流通センターで開催される文学フリマ東京38「第二展示場 ブース:つ-19」までぜひお越しください。

よろしくお願いします!

第二展示場の二階
【つ-19】です!
素敵な表紙はこちら!




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また新しい山に登ります。