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3冊目『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』/永田カビ

 私のファーストキスの相手は同性──女の子である。
 しかも、私に対して、事あるごとに嫌がらせを仕掛けてくる女子であった。彼女はクラス内のカースト上位組だった。激しい暴力を振るうことはないものの、ゴミ捨てやクラス当番は押し付けてくるし、開けっぴろげな嫌味は当たり前。陰口も然り。遊戯の理不尽なルール変更により、多大な損害を被ることも普通だった。
 そんな子と、なぜ唇を重ねたのか。単純な話だ。罰ゲームだったのである。
 彼女に、半ば強引に押入れに連れ込まれた。アミューズメント施設で購入した小さなライトに照らされながら「ゲームをしましょう」と告げられた。ルールは単純。ジャンケンをして、負けたら相手の指示に従う。ただそれだけ。
 ジャンケンが頗る弱い私は、何度も彼女からの命令を聞く羽目になった。これ以上の詳細は、以降の話に全く関係ないので省略。

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 タイトルが衝撃的なので、表紙を晒しながら人前で読むのは躊躇われる。
 しかし、内容は「レズ風俗行った! 女の子エロ可愛かった!!」というような、単純なルポルタージュではない。私のような過去の経験により、性趣向や性癖が歪んでしまった人間の話でもない。
 本書は、現代社会の中で何かと生き難い思いをしている筆者が如何に自己と向き合い、レズ風俗へ馳せ参じる決断を下したのか。実際にレズ風俗を利用した際の感想と、後日譚を明け透けに描いたエッセイ漫画である。

 恥ずかしいことなん全然なかった。寧ろタイトルからエロを期待した自分が恥ずかしい。

 筆者は摂食障害など色々な(こういう言い方はしたくないが)問題を抱えていて、序盤はその辺りのことを語っている。私は摂食障害などになったことがないので「へえ、そういうことしちゃうんだ、大変やなあ」程度の感想しか出てこなかった。共感出来るようで出来ない。中途半端な感覚で、物語にも余り身が入らなかった。
 けれど、筆者が『親の期待に応えようと頑張る自分』と「抱き締められたい」欲求に気付いた時。共感が爆発した。本やネット記事を読みながら「わかる〜!!」と叫ぶ作中の筆者に対し、「わかる〜〜〜!!めっちゃわかりみが深い〜〜〜〜!!!!」と叫んでいた。心の中で。二秒だけで良いから抱き締めて欲しい。その気持ちが、痛いほど分かった。
 でも、そこから「そうだ、レズ風俗に行こう」となるのは全く解せない。思考回路が凄すぎた。きっと自分は、その着地点には辿り着けない。

 一応ラストは綺麗に切りよく幕を下ろしている。が、おまけ漫画を読む限り、成長の道のりはまだまだ長く厳しいものなのだろう。筆者の言う「甘い蜜」が増えて、少しでも生きやすい人生を送って欲しい。
 そして生き難いと感じている全ての人に、本書を手に取って欲しいなと思う。いや、生き難くなくて順風満帆な人にも勧めたい。タイトルはアレだけど、品のない風俗ルポ漫画だと思わず読んで欲しい。

(※本文は後日、加筆修正を予定しています)


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