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小説

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#短編小説

プロボックス・ランナウェイ

プロボックス・ランナウェイ

鈴木が会社に来なくなったのは先月のことだった。
台風の日でも休まず出社する彼が、急に会社に現れなくなったのだ。
体調不良も考えられたが、携帯電話でも連絡がつかず、家も留守状態になっていた。
一体どこへ行ったのか。
犯罪の可能性など、周りが本格的に騒ぎ出した際にそれは判明した。



「会社を辞めようと思っている」
鈴木から相談を受けたのは、失踪する1週間前のことだった。
滅多に愚痴をこぼさない彼

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奇書について

奇書について

奇書についての小話を考えてみた。
今後話を書く時に活かしたいと思う。

まずは由来について。
カトリックの告解において神父が書き残したもの。
本来の守秘義務を守りきれず、複数人の神父が持ち寄って編纂したもの。

配布方法について。
正規のルートでは手に入りにくいように、古書店や雑貨店に置かれている。
ただし、店主の目を盗んで勝手に置かれたため、流通ルートは制作者しか知らない。
(偶然性に神性を見出

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奇妙な晩餐会

奇妙な晩餐会

「珍しい食材が手に入ったのだけど、食べに来ない?」
ライターの鈴木は、ある日メッセージを受け取った。
差出人は以前知り合った富裕層の女性だ。
お金と暇を持て余した人種なので、唐突にこういったメールを送ってくる。
そして、大抵はロクなことがない。

嫌な予感がしたが招かれることにした。
「面白そうなことにはなるべく顔を突っ込め」
職場の先輩の教えに従ったのだ。
そして、鈴木は給料前で金欠だった。

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バッキボッキゲーム

バッキボッキゲーム

その日、鈴木は酔っていた。
給料日後の金曜ということもあり、先輩たちに飲みに連れ回された。
2軒目以降の記憶がない。
そして、顔がチクチクする感覚で目を覚ました。
ここはどこだろうか。
目だけで辺りを見渡すと、少女がしゃがみながら鈴木を見ていた。
微笑みながら、スマフォで写真を撮っている。
知り合いのユーさんだ。
丘の上の豪邸に住んでおり、金と暇を持て余している。
どうやら会社の先輩が、酔い潰れた

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有閑少女の展覧会

有閑少女の展覧会

8月のある日、ライターの鈴木のもとに封筒が届いた。
差出人の名前は書かれていない。
封筒には蜜蝋で封がしてあり、手で持つと少し重量がある。
軽く振ると、中からは金属が触れ合うような音がした。
こういう凝った真似をする知り合いは1人しかいない。

3年前、上司から紹介された洋館の少女だ。
明らかに年下なのだが、自分のことを「ユーさん」と呼ぶことを強要している。
莫大な資産を元手に上質なネタをくれるが

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