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東崋山
2023年11月11日 12:23
鈴木が会社に来なくなったのは先月のことだった。台風の日でも休まず出社する彼が、急に会社に現れなくなったのだ。体調不良も考えられたが、携帯電話でも連絡がつかず、家も留守状態になっていた。一体どこへ行ったのか。犯罪の可能性など、周りが本格的に騒ぎ出した際にそれは判明した。◆「会社を辞めようと思っている」鈴木から相談を受けたのは、失踪する1週間前のことだった。滅多に愚痴をこぼさない彼
2023年11月6日 20:58
奇書についての小話を考えてみた。今後話を書く時に活かしたいと思う。まずは由来について。カトリックの告解において神父が書き残したもの。本来の守秘義務を守りきれず、複数人の神父が持ち寄って編纂したもの。配布方法について。正規のルートでは手に入りにくいように、古書店や雑貨店に置かれている。ただし、店主の目を盗んで勝手に置かれたため、流通ルートは制作者しか知らない。(偶然性に神性を見出
2023年11月5日 12:55
「珍しい食材が手に入ったのだけど、食べに来ない?」ライターの鈴木は、ある日メッセージを受け取った。差出人は以前知り合った富裕層の女性だ。お金と暇を持て余した人種なので、唐突にこういったメールを送ってくる。そして、大抵はロクなことがない。嫌な予感がしたが招かれることにした。「面白そうなことにはなるべく顔を突っ込め」職場の先輩の教えに従ったのだ。そして、鈴木は給料前で金欠だった。零
2021年8月26日 08:05
その日、鈴木は酔っていた。給料日後の金曜ということもあり、先輩たちに飲みに連れ回された。2軒目以降の記憶がない。そして、顔がチクチクする感覚で目を覚ました。ここはどこだろうか。目だけで辺りを見渡すと、少女がしゃがみながら鈴木を見ていた。微笑みながら、スマフォで写真を撮っている。知り合いのユーさんだ。丘の上の豪邸に住んでおり、金と暇を持て余している。どうやら会社の先輩が、酔い潰れた
2021年8月22日 18:52
8月のある日、ライターの鈴木のもとに封筒が届いた。差出人の名前は書かれていない。封筒には蜜蝋で封がしてあり、手で持つと少し重量がある。軽く振ると、中からは金属が触れ合うような音がした。こういう凝った真似をする知り合いは1人しかいない。3年前、上司から紹介された洋館の少女だ。明らかに年下なのだが、自分のことを「ユーさん」と呼ぶことを強要している。莫大な資産を元手に上質なネタをくれるが