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映画『ペンギン・ハイウェイ』がめちゃくちゃ面白かったっていう話だけする

ペンギン・ハイウェイが死ぬほど面白くて、ただちょっとこの映画の何がどう面白いのかを説明できる自信がない。ただ一つ言えるのはおれがペンギンという生き物が死ぬほど好きで、水族館に行く機会があろうものなら、真っ先にその水族館にペンギンはいるのか、いるとしたらどのような種類のペンギンがいるのか、館内マップを確認して水族館のどの位置にペンギンの展示があるのか必ず確認をするし、ガラス越しにペンギンの黒目がちな目を延々と見つめ続けたりするくらいなのだ。そういう訳で、『ペンギン・ハイウェイ』のティザービジュアルが公開された段階でそのキャッチ―なビジュアルに完全に心を奪われた。

市街地の歩道に一羽のペンギンが佇んているだけでめちゃくちゃSFだし、実際SF映画だった。お姉さんと少年という構図もいい。特にアオヤマ少年は他の同級生に比べても一線を脱した利発さ、聡明さを醸し出していながら、本質的に小学四年生なのが素晴らしい。おっぱいとかぼうけんマップとかレゴブロックとかそういうところだ。お姉さんも、親族でもないあれだけ年の離れた女性というすごく不思議な存在であり、大人でも子供でもない、それでいて一介の人である人間味のある性格で素晴らしく、こんなことを言っていたら出てくる登場人物一人一人がみんな奇跡的な人物造形で脱帽した。あとペンギンね。ペンギン。

こんな絵がガシガシ出てくる。ペンギンを全く出し惜しみしなくて感動したし、開始5分でなぜか涙が出てくる訳の分からなさをバーフバリぶりに体験した。市街地をペタペタ歩くペンギンというありえないパラドクス。これは相当なSFでありペンギンはカワイイ。

SFといっても個人的には未来ガジェットをいかに理屈っぽく説明するかよりも、未知の存在や超科学テクノロジーが普遍化した世界でいかに人が人間らしい感情を持つか、どんなアクションを起こすかという点に思いを巡らす方が好きだし、具体的に言うと『ブレードランナー2049』のライアン・ゴズリングの「チクショー!!」はSF最エモ候補オールタイムベストであり、『ペンギン・ハイウェイ』ではハマモトさんの渾身のビンタが激エモすぎて頭が沸騰するかと思った。この映画はマジでだれもが感情豊かだし、アオヤマ少年も公園のベンチで「ペンギンとは……海とは……クジラとは……」とかも絶対言わない、理詰めでありながらガンガン行動するタイプの真の小学四年生なので最期まで全くダレずに観ることができた。

その終幕も夏の終わりを感じさせつつも、どこか納得している自分があり、恐ろしく精巧な小説を読み切ったかのような読後感だった。無駄なものがない、脚色され過ぎず、少年特有のキラキラしたフィルターを通して世界を見渡したような感覚。この映画を語るにノスタルジーやジュブナイルのような言葉を使うこともできるが、それはあくまで表層的な表現に過ぎず、その深部にはもっと得体のしれない、言葉にできない感情が常に渦巻いている。いや、本当に参った。平成最後の夏にすごい映画を観た。チョー面白い。

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