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平成の最後だからこそ『仮面ライダーオーズ』を観るべき理由

仮面ライダージオウの9話・10話に火野映司が出る!?自社を日本から独立させて王を自称する面白社長に完全にカモフラージュされたサプライズに全おれが沸き立った。火野映司が出る?仮面ライダージオウに?

これはちょっとどころかとんでもない事件だ。過去の仮面ライダーの戦いを『無かった』ことにする仮面ライダージオウの物語において、火野映司が仮面ライダーオーズに『ならない』ことを描くのは、歴代仮面ライダー作品の中でもめちゃくちゃ難しいifストーリーであることは間違いない。もちろんあの『オーズ』の物語に魅せられたファンを納得させるという意味でだ。


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(仮面ライダーオーズ第一話あらすじ)
必要なものは、ちょっとのお金と明日のパンツだけ。欲とは縁遠い青年、火野映司が警備員のバイト先で出会ったものは、鳥の模様の入った不思議なメダル。メダルに引き寄せられるように、800年の時を経た悲劇の歯車が動きだす。そして、映司に訪れる運命の瞬間(とき)。

『仮面ライダーオーズ』とは欲望をテーマにした作品である。欲望とは言い換えれば願望、つまり夢や希望ともとれ、さらに突き詰めるとそれはエゴだ。つまり『仮面ライダーオーズ』はいかに自身のエゴと向き合うかということを問うドラマなのである。


火野映司/仮面ライダーオーズ

住所どころか身分証も持たず、その日暮らしに日雇いバイトで生活している自由気ままな青年。警備員のアルバイト先の美術館から復活した怪人と戦うため、成り行きで『仮面ライダーオーズ』に変身し戦う。根っからのお人よしで「あまりにも一方的すぎる」という理由で、怪人にボコボコにされていた腕だけ怪人(アンク)を助けるため仲裁に入ろうとする。普段は温厚だが命を軽視する者に対しては強い敵意を持ち、何より人の命を救うことを優先するため、メダルを優先するアンクとしばしば衝突する。物語が進むにつれ、他者を救うため危険を顧みない行動をとるなど自己犠牲の面があることが明らかとなり、一見欲とは無縁そうに見える彼の出自と過去、そして胸に秘めた願望のクソデカさはこの作品のハイライトであり、最高のエモポイントである。


アンク

『グリード』と呼ばれる怪人であり、体を構成するメダルが足らないため腕のみしか実体化できていない。1話で怪人との戦いに割って入った映司を「使える男」と判断しオーズに変身するためのアイテム『オーズドライバー』を手渡す。その後現場で倒れていた刑事の肉体を借り、人間体として行動するようになる。他のグリード同様、自身のコアメダルを取り戻し完全体となることを目標とし、自分自身の持つ欲望を制御できない人間をバカにし、人命よりメダル収集を優先しようとする。人間の体を得たことで本来グリードが持ち合わせていない味覚などの人間の感情を獲得。物語の後半に大きな影響を与えることとなる。アイスキャンディーがめっちゃ大好き。


本来は相容れないはずの二人が出会い、人間とグリードという境界を超えた唯一無二の関係になるという最強のバディムービーが『仮面ライダーオーズ』だ。

『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FINAL 』より。おれは泣いた。

その『欲望』について

欲望というのは人間なら誰しも持つもので、「有名人になりたい」「金持ちになりたい」のような典型的な欲望から「美味しいものを食べたい」「綺麗になりたい」といったありふれたものもまた欲望だ。それは夢や希望を掴む原動力になる一方で、嫉妬や不安など負の感情を呼び込むこともある。それは『ライダーと怪人の力の諸元は同じもの』という仮面ライダー作品群に脈々と受け継がれる文脈を完全になぞらえており、「悪いやつは許さない」という強い正義感もまた欲望であると示した21話・22話はオーズという作品を象徴するエピソードだ(しかもその欲望から生まれた怪人がバッタをモチーフとしているというオマケ付きだ)。この2話だけでオーズという仮面ライダーが十分に分かるのでマジで観てほしい。

「欲しいって思うのは悪くない。大切なのは、その気持ちをどうするか」という台詞のように、『仮面ライダーオーズ』はもっと禁欲的になりなさいとかいう自制を促すのではなく、逆に欲望を肯定し、人間らしさの象徴であると描いている。その作風も、敵味方入り乱れての騙し騙されが全編に渡って展開されるも決して陰湿ではなく(むしろコミカルでさえある)、怪人であるグリードたちでさえある種の人間臭さを備え、そして終盤に語られるどちらか片方しか助からないかもしれないという不安に対して飛び出した「そんなのつまんない。もっと欲張っていいじゃない」という台詞の通り、スーパーヒーローとは現実を塗り替えるものだというヒーローフィクションとしての完璧な結末を迎えるのだ。


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その物語のメッセージ性や結末、何より映司とアンクの関係性があまりに最高オブ最高過ぎてテレビ本編終了後の劇場版や『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FINAL 』でもかなり気を遣われた(平ジェネクソ最高でした)『仮面ライダーオーズ』の物語が仮面ライダージオウでどのように語られるのか、はっきり言って気が気でないのだがどうやら東映は本気らしいのでおれも覚悟を決めて臨まなければならない。ただ一つ言えることは、放送から何年たっても『仮面ライダーオーズ』はコンテンツとしての強度を微塵も落とすことなく、我々の心に残り続けているということだ。


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