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夜明けのすべて

「PMSってどういうものなんですかね」⁡⁡⁡⁡

たまたま見かけた映画の予告で印象的だった台詞だ。
PMSのことが映画で語られる日が来るなんて。
私も多少なりともPMSで毎月苦しんでいるため、気になったフレーズだった。

映画のタイトルは「夜明けのすべて」。
2024年2月9日から映画館で上映されるそうだ。

だけど、私は見に行けない。
私は映画館が苦手だ。

登場人物の山添君のようなパニック障害のような症状は出ないけれど、照明の暗さ、閉塞感、密接感、空調、人の話し声、食べ物の匂い、劇中の高音など…具合悪くなる要因が多い。

ただ、山添君のパニック障害もわからないわけではない。
私も交通機関に乗れなかったり、エレベーターが恐くて仕方ない時があった。
ビジネスホテルなんかは、その閉塞感が恐くて、「早く帰らないと窒息して死んでしまう」なんて思ったこともあった。
藤沢さんのPMSと山添くんのパニック障害、どちらも私には共通項があった。
だから、原作を読んでみることにした。
これなら映画がAmazonプライムビデオになるまで待てそうだ。

「夜明けのすべて」
原作は瀬尾まいこさん。
2020年10月に発売。
瀬尾まいこさんと言えば、「そして、バトンは渡された」が2019年の本屋大賞に選ばれ、2021年に映画化されている。
これは期待できそうだと思いながら、今回も読み始めた。

あらすじ

PMS持ちの藤沢さんとパニック障害の山添君。
2人はただの同僚。
ある日、藤沢さんは”あること”をするために、山添君の家を予告なく訪ねた。
2人は特別仲がいいわけではなかったので、強引な藤沢さんに山添君は驚いた。
しかし、”あること”のおかげで、山添君は数年ぶりに大笑いをした。
この日から2人の関係は少しずつ変わっていった。
山添君は藤沢さんがPMSになる時期が何故かわかった。
何か力になれそうだと思った。
それは藤沢さんも同じだった。
パニック障害のことはあまりわからないけど、山添君の力になれそうだと思った。
それまではおのおの1人で悩んできたが、2人は友達でも恋人でもないけれど、お互いの良き理解者となった。
それは時に不躾だったり、大胆だったり、無鉄砲だったりしたけれど、「彼が」「彼女が」が少しでも楽になってくれればという支え合い、助け合い、思いやりだった。

自分ではどうしようもないことが原因で諦めてしまっている人に光を見せてくれる作品

小説を読んで、あまりくすくす笑うことはない。
だけど、藤沢さんがあまりにも無鉄砲過ぎて、思わずくすくす笑ってしまう場面が何度かあった。

映画ではこのあたりが忠実に描かれているかわからないが、原作を読もうと思った方はぜひ、藤沢さんの無鉄砲さを楽しんで欲しい。
おすすめな場面だ。

もちろん笑ってばかりではない。
特に最後はぐっときた。
「私は○○だから仕方ない」そうやってすべてまで諦める必要はないのだと学ばされた。
例えば前述したとおり、私は映画館が苦手だ。だけど映画は好きだ。
映画館が苦手だからと言って、映画を好きなことまでやめる必要はない。
Amazonプライムビデオで見ればいいし、待てなければこうやって原作を読めばいい。
できることがちゃんとある。
人生にはそういうようなことがたくさんある。
回り道になってもできることはないか。だけどけして無理にではなく、自然とやりたくなってしまうこと。
そうやってひとつひとつ小さなところから乗り越えることで、可能性は広がっていく。
そして自信となっていく。
それを山添君から教えてもらった。

「夜明けのすべて」の単行本は270ページしかないが、自分ではどうしようもないことが原因で諦めてしまっている人に光を見せてくれる深い作品だと思う。
原作を読んで改めて映画の予告を見ると、違うところが結構あるなと感じるが、大胆な藤沢さんと笑い転げる山添くんが映画でも描かれているなら、その動く姿を絶対見たい。

ただ上映はこれからだ。
Amazonプライムビデオになるまで1年か、それ以上かかるだろう。
だけど、本から飛び出した2人に会えるのなら、その長い時間も楽しみ待てそうな気がしている。

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