"DIVIN" Vol.3
『DIVIN』(ダイヴィン)は、国内外の様々な記事や読んだ本、面白いinstagramアカウントなど、生活している中で得た「誰かに教えたい情報」をお伝えするニュースレターです。
走るということ
4月は久しぶりにたくさん走った。
100kmを目標にしていたが、結果は140kmちょっと。去年の夏は月に100km走っていたので、それ以来のペースである。
ランニングする理由はいくつかある。
ジムに週3で通い、ウェイトトレーニングも行っていた2015年あたりの目的は社会人サッカーだった。
週末の”試合”というゴールに向かって、体脂肪を落とし、筋肉をつける。
体脂肪を10%以下に落とし、高校生以来の体重にしていく。身体は10年ぶりのキレを取り戻し、プレーは明らかに良くなる。
しかし、去年から本格的に始まったこのランニングの習慣の目的は、ある決められた分かりやすいゴールに向かうというよりも生活や日常の一部に近い。
愛読書の1つでもある村上春樹の「走ることについて語るときに僕の語ること 」
その中で村上春樹は「走るときに何を考えているか」を聞かれてこう語っている。
僕は走りながら、ただ走っている。僕は原則的には空白の中を走っている。逆の言い方をすれば、空白を獲得するために走っている、ということかもしれない。
時間や考えることに追われ、ちょっとしたスキマ時間にスマホを理由もなく下から上にスクロールする。そこにどれだけ有益なものがあるかどうかも分からずに。
”なにも無い時間”を得るために走る。
スマホを触りながら散歩をすると視線は自ずと下がるが、走っていると目線が上がるため、情報がどんどん入ってくる。
それは、いつもの日常では気付かないような小さいことばかり。
新しくオープンしたお店。
人々のファッション。
カップルの会話の内容。
川沿いの植物の変化。
そんな時間を楽しみにながらランニングをする。悩みごとも考えごとも、頭の中で浮かんでは消えていく日常の中に空白の時間を探しにいく。
僕がこのニュースレターを始めたのは、ランニングに似ているかもしれない。
誰からも「走れ」と言われていないように、誰からも「週に1回、noteを更新しろ」なんて頼まれていない。
それは、ただなんとなく好きだから始めたのであって、なんだかいいなと思っているからだ。
走り続けるための理由はほんの少ししかないけれど、走るのをやめるための理由なら大型トラックいっぱいぶんはあるからだ。 僕らにできるのは、その「ほんの少しの理由」をひとつひとつ大事に磨き続けることだけだ。暇をみつけては、せっせとくまなく磨き続けること。
さて、そんなこんなで第三回目の”DIVIN”。今週も宜しくお願いします。
動画配信サービスのバブル
新型コロナウイルスのパンデミックでほとんどの人が家に閉じこもる中、Netflixが2020年第1四半期の決算を発表。
誰もが彼らが業績を上げることは予想していた。が、それは予想を大幅に超えるものに。
第1四半期の新規有料会員数は予想の2倍以上となる1,577万人の増加。これでNetflixの有料会員総数は世界で1億8286万人となった。
5ヶ月前に始まったばかりの、ディズニーのストリーミングサービスDisney+の定期購読者は5,000万人を超えた。
在宅で消費できるコンテンツが求められる今、動画配信サービスはどのプラットフォームも好調だ。
そんな市況の中、2018年に創業したある動画配信サービスのベンチャーがある。
Quibiというサービス。今年のCESの基調講演も話題となった。
ちなみに、このサービス名は Quick Bite (ちょっと食べる、軽食)から来ている。
創設者はJeffrey Katzenberg、CEOに就任したのはMeg Whitman。
カッツェンバーグはディズニースタジオのプロデューサーとして「ライオン・キング」や「シュレック」などのヒット作を連発し、その後ドリームワークスのCEOになった人物。
ホイットマン氏はHP(ヒューレット・パッカード)のCEOとして知られ、eBayでもCEOを務めた。
まさに、アメリカのエンタメを知り尽くした大物と、ビジネスを知り尽くした大物がタッグを組むかたち。それは”ハリウッドとシリコンバレーの融合”と呼ばれた。
そんなサービスが遂に今年4月から始まった。
このサービスの特徴は、スマホとタブレットのみをプラットホームに想定したビデオストリーミングサービスという点。
長くて6分程度のショートビデオ配信が中心となる。
ショートビデオの理由を、カッツェンバーグは「移動の途中、待ち時間など、空いた時間を使って完結したストーリーが見られることのメリット」を挙げる。
移動中や家事などを理由に中断しなくて済み、またコンテンツが溢れ、長時間の視聴が難しい現代の人々のライフスタイルに最も適したストリーミングがショートビデオだと彼は考えている。
特徴はそのコンテンツの長さだけでない。
スマホの特徴を活かし、例えば登場人物が電話をかけるシーンでは縦画面で電話のアイコンが出て実際に電話をかけているような臨場感を味わえる。SNSでメッセージを送信するシーンはそのまま自分の画面に現れる。
スマホというプラットホームの機能を、ビデオの中で最大限に利用する工夫がなされている。
Quibiは広告なしのバージョンが月7.99ドル、広告ありが4.99ドルで提供されている。初日には30万ダウンロードを達成し、アプリのDLランキングで上位を走っていたが、次第にペースは鈍化した。
サービス料金は他のビデオストリーミングサービスの平均を下回る価格だが、Netflix、Amazon Primeという成功した巨人がおり、短編動画ではYouTubeもTikTokもある。
鳴り物入りでサービスを開始したQuibiだったが、肝心のコンテンツ自体が不評であり、90日間の無料トライアルの間に多くの人々は離脱するのでは、と言われている。
「市場があるかどうかは分からない。ただ、ここに挑戦した者は全員失敗している」と言われたこの市場。
スタートから苦戦を続けるQuibiが今後どうなっていくだろうか。
あるD2Cブランドの新しい戦略
HIKIというアメリカのスキンケアブランド。
CEOのHenry Davisは、2018年にユニコーン企業入りし、大成功したD2Cブランドの代表格である「Glossier」の元代表でもあった人。
彼がCEOを務めるarfaという会社が新しくローンチしたブランドがこのHIKIだ。
デオドラント商品やボディパウダーなどのプロダクトを扱い、メッセージは「Sweat Products For Any Body」だ。
このHIKIのローンチのタイミングは、新型コロナウイルス感染症がアメリカ内のみならず、世界中で猛威を奮っている3月だった。
その最悪とも言えるタイミングの中、ローンチの延期をするのではなく、彼らが取った戦略は「無料で商品を販売する」というもの。
”汗をかく全ての人々へ”というプロダクトミッション、そして”人々をより快適な気持ちに”というコーポレートミッション。
最前線で戦う医療関係者の人たちこそが、今この商品を必要とし、少しでも快適になれればと彼らに向けて無料での”販売”を開始した。
オンラインストアには”0ドル”の表記が並ぶ。
パッケージ費用や送料、クレジットカードの決済手数料で$8.04が商品ごとに掛かってしまうという。
医療関係者の人には2.5ドル、その他の人には5ドルのこの支払いのみを求めている。
”その他の人”と言うように、実はこのキャンペーンは医療関係者でない人々も参加できる。
素直にそして思いやりの心を持って、家族や友人、同僚やはたまた他人に向けてメッセージを贈る。その際に #todayimfeeling のハッシュタグをつけることのみを依頼している。
こうした気持ちや行動がこの辛い時期を乗り越え、助け合うことができるとarfaのサイトでは表明している。
この取り組みを説明するページの最後はこう締めくくられている。
A lot is changing in the world right now. arfa and HIKI are the resources we have to try and help, and we want to do something with what we have to offer. Join us and be a part of this.
どこまで続けられるのか資本の体力が関係してくるが、将来HIKIがどのようなブランドとして人々の中に育つのか楽しみである。
再営業に向けた取り組み
アメリカ・テキサスにあるサンアントニオ動物園。非営利で運営されており、運営を入場料や寄付でまかなっている。
もちろんこの動物園もコロナの影響を受けた場所の一つ。3月14日から休業していたが、この度復活をした。
その方法は、”ドライブスルー”方式。
動物園を期間限定でドライブスルーにし、安全・安心に動物園を楽しめるというもの。ツアーガイドも社内で聴くことができる。
日本でもおなじみの「富士サファリパーク」スタイル。違うのは、元々普通の動物園だったが、自動車での侵入・走行を可能にしたという点。
動物園の代表のTimさんは、営業をまた始められたことで動物の世話を行っていくこともできるし、何より休業状態だったスタッフを再度雇うことができると語る。
100年近く続く歴史あるこの動物園、いま多くの人々がチケットを買い、訪れているとのこと。
駐車場に設置された大型スクリーンと、カーステレオのFMラジオを使い、乗車したまま映画を観賞するドライブインシアター。
アメリカでは昔から人々に親しまれ、昨今は閉鎖が相次いでいたが、再びこのサービスも注目を浴びている。
小売店も営業再開に向けて動き始めている。
アメリカではほとんどの州はロックダウンを継続しているが、いくつかの州では規制が緩和され始めている。
従来、接客を必須としてきたファッション小売店。多くのブランドは本格的な規制緩和の前にどのようなポリシーやガイドラインを配置すべきかを検討を開始している。
日本でもスーパーや飲食店がアルコールスプレーを入口に設置し、コンビニやドラッグストアではビニールカーテンを設置している店が大半となった。
”緊急度”が低いとされるアパレル業界でもどのように営業を再開していくか準備が進められている。
従業員や買い物客にマスクを提供する。
体温を測る。
店舗のレイアウトを変える。
オンラインで注文し、受け取りのみを店舗で行うなど、オペレーション自体を変える。
アパレル大手の「GAP」が資金枯渇に直面し、4月度の店舗の家賃支払いを停止したことが判明したように小売店も飲食店と同じく困難な局面に陥っている。
もちろん目の前の家賃や人件費の問題が優先事項であるが、どのように営業を再開していくのか、各ブランドは戦略を考えている。
"How the Virus Transformed the Way Americans Spend Their Money?”
ニューヨーク・タイムズが様々なグラフを用いて、コロナウイルス前後での産業の衰退を発表。
結構当たり前の結果ばかりが並ぶが、分かりやすいので覗いてみるとよいかも。
今週のDIVINはここまで。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
『DIVIN』への感想・コメントは #DIVIN のハッシュタグをつけてツイートいただけると嬉しいです。
----
edited by Ayumu Kurashima
IG : @micronheads
Tw: @micronheads_new
illustration : @mihirayuta
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?