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想像を絶する介護現場

介護施設の多くは人員が足りているようで足りていない

これが、機能訓練指導員だった私があれこれ悩んだ根本原因の大部分を占めます。

介護施設を運営するにあたって、人員配置基準というものがあります。

人員配置基準とは、介護施設において「適切な介護・医療」を提供するために、一定数以上の専門資格を有した人材の配置(医師・介護士・看護師など)を義務付けた制度です。

必要な人数は介護施設の種類によって異なりますが、どの施設でも適切な介護サービスを提供するために、法律によって人員配置基準が定められています。

私が勤めていたデイサービスを例にとると、下記のような人員配置基準があります。

引用:通所介護|厚生労働省

私はこの中の機能訓練指導員という位置付けでした。

よく見ていただきたいのが、介護職員のところです。
”利用者の数が15人まで 1以上” となっています。

簡単に言い換えてしまえば、”介護が必要な人15人までなら職員1人で見てね”ということです。

皆さんはどのように感じますか?
これが小学校の先生なら簡単だと感じるかもしれません。

デイサービスは比較的に自分で動くことができる人が利用することが多いですが、それでも介護認定が出ている介護が必要な人たちです。正直に書くと15人に対して介護職員1人というのは大変です。

普通の会社で考えても、1人で15人の部下の面倒を見ることになったら大変ではありませんか?

実際に介護の現場では当然ですが、介護スタッフ1人で15人は見きれません。ただ見ているだけでいいのなら出来るかもしれませんが、介護サービスの利用者はそれぞれ病状や症状、性格も違います。

Aさんは医師から水分制限が出ている
Bさんは医師から運動制限が出ている
Cさんは今日入れ歯を忘れている
Dさんは朝ご飯を食べないで来てしまった
Eさんは服薬を忘れたと言っていた
Fさんは昨日転倒してアザができている
Gさんはいつもより血圧が高いようだ
Hさんは今日誕生日だからお祝いしたほうがいいかな
Iさんの連絡帳には「昨夜眠れなかったようなので、運動中眠くなるかもしれません」と書かれていた
Jさんは「今日は元気だから」と言って勝手に動いてしまう
Kさんは便秘で辛いようだ

このように書けばキリがないくらいの情報を一気に頭に入れて15人を見なければいけない日もあるんです。

これがデイサービスの場合、日毎に利用者が違うのでさらに大変です。

結果、施設側としては事故が起きないように、他の資格を持つ生活相談員や看護師や私のような機能訓練指導員も介護スタッフのサポートに回ることになります。

するとどのようなことが起きるのか。

生活相談員には生活相談員の役割と仕事があります。看護師も看護師の仕事があります。機能訓練指導員も機能訓練指導員の仕事がありますが、みんながそれらの専門の仕事に専念出来なくなるのです。

例えば機能訓練指導員の場合、

・Aさんにはこの機能訓練計画が良さそうだと思っても、実際に現場でこれが出来るかを考えると出来ないという判断し訓練計画内容を変更したり

・この利用者は今日は体調が良さそうだから、もう少し筋肉に負荷をかけるトレーニングをしたいなと思っても、時間が無くて出来なかったり

・ご家族にトレーニング方法をお伝えするための資料を作る時間がなくなってしまったり

いろんなところで諦めなければならない場面が増えました。

では単純にスタッフを増やせばいいのでは?という考えが出てくるのですが、介護施設は大きく儲けることができません(介護保険が使える施設の場合)。施設側が保険で請求できる金額は決まっているので、人員基準以上のスタッフが配置すると経営破綻のリスクがあります。

これはあくまで私が勤務していた数年前も施設の現場の状況なので、もっとうまく連携が取れて働きやすい職場もあると思いますし、新しい取り組みを始めた職場も増えているのかもしれません。

ですが、私が知る限りでは介護スタッフの入れ替わりが早い施設が多いです。せっかく介護の勉強をしても辞めてしまう人も多いと感じています。


将来、確実に高齢者は増え若い介護スタッフは減っていくことが予想されます。きっと介護認定もかなり厳しくなり、骨折しただけでは介護サービスを受けられないとか、認知症の診断がないと介護サービスを受けられないなど、審査が厳しくなってサービスを受けられない人が増えていくかもしれません。

そうなった時に助け舟になれるのが民間サービスだと思います。民間サービスが医療や介護分野に入ってくる時に注意しなければならないのが、医療や介護の知識不足、誤った健康情報の蔓延などです。方向を間違わないように安全を確保のために医療・介護分野には様々な法律規定があり多種の国家資格はあります。

ですが、それがあることにより介護現場が苦しいのも事実。ならば、医療や介護の専門知識を持つ人間が、一般の人に向けて正しい知識を伝え、資格保持者以外も介護に参加していくことが、今後必要なのではないかと考えました。

私が多世代共生型シェアハウスを作りたい大きな理由の一つがここにあります。寝たきりまでいかなければ、資格を持っていない一般の人も介護サポートは可能です。「12時になったよ。薬の時間だよ」と声をかけるだけでも立派な介護サポートなんです。

そして、現場の声を書いて伝えることなら私にも出来るかもしれないと思ったのです。


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