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何かあったら教④

「みなさんこんにちは! ナックミーティングへようこそ! 私はナックのエリアマネージメントを担当しているジャイナ小杉と言います。ナクサリアン名では“ジャイコさん”の方が親しみやすいかな? 今日は新しい参加者の方もいらっしゃいます!皆さんでゼロリスクの新しい社会を創造しましょう!」

むつみさんと吉田さんと3人で話していると、突然甲高い声が会場に響いた。

いつの間にか、壇上には藍染の美しいワンピースとタイダイのマスクを着けた華奢な女性が立っており、さっきまであちこちで固まっていたグループの人々は市松模様のように、等間隔を開けて立っている。

まるでチェスの駒みたいだな、と思いつつ、それに習って私はむつみさんの1m後ろ、吉田さんの1m左手に立った。

「まずはあなたの身の周りに起こった気になる出来事、そしてそれはなぜ起こったのかについてそれぞれ黙考してみましょう!」

編み込みでひとつに結わった長い髪を象のシッポのように左右に揺らしながら、ジャイコさんは会場を見渡した。

私は息子が食べたかもしれない肉まんのことを考えた。段ボール入りの肉まんを売るだなんて信じられない。それに登下校中に起こりうる高齢者の運転ミス。昨夜の娘の下痢の原因は小麦粘土の誤飲か、それとも市販のお菓子の食べ過ぎか…。

そんなことを考えていると

「あなた!」

とまっすぐな声が私に向かって来るのを感じた。

顔を上げると、会場中の視線が私に注がれていた。

(つづく)


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