耳の聞こえないおばちゃんとの出会い@ベトナム

今年の7月に15日間訪れたベトナム。

5カ国目でした。


市場で働くおばちゃん達。

“ノンラー”はベトナムの帽子。


そんなベトナムの首都・ハノイの路上で

私は耳の聞こえないおばちゃんと出会うのでした。


路上での出会い

ハノイには5日間ほど滞在した。

ゲストハウスの近くが市場だったのでよく行っていた。

朝ごはんもしかり、いつもは適当にコンビニの量が多くて安いパンとか買って安く済ませるけど、近くにパン屋さんが多くて。毎日買ってゲストハウスで食べていた。

そんなベトナム滞在3日目のこと。

いつものように朝ごはんを買いに行く、のだけど、

その日は気分でいつもは通らない道を通った。

するとあらわれたバインミー屋さん。

(バインミー=フランスパンで作るサンドウィッチ。ベトナム名物。)

「今日はこれにしよ」と思い、その露店に近付いた。


またぼったくりなの?

おばちゃんに値段を聞く。


「ハウマッチ?」


するとおばちゃんは人差し指で1を作った。

10000ドンってこと?え、安くない?

(バインミーはだいたい20000ドン前後が多い)

でもなにかがかおかしい。

こっちが質問したのになぜかおばちゃんも首をかしげながら1を作っている。


10000ドンでいいか、ってこと?交渉されてる?


念のためもう一度聞く。お札を見せながら。


「ハウマッチ?」


するとおばちゃんは紙幣を2枚見せてくれた。


“15000ドン”


「あれ、さっきの1と違う」


そう思いつつ、まあいいかと頼む。


「ディスワン、プリーズ」


おばちゃんが頷いて作り始めるのかと思いきや。


卵を指さして首をかしげている。


「あれ、だいたい具って決まってんのになあ」


そう思いつつ、頷きながら「イェス」と言う。


すると、今度は肉を指さしながら首をかしげる。

その時私は思った。

「ああ、これ具増やして値段上げようとしてんのか」


そんなのに引っかかるか!と変な意地が出て言う、「ノー」と。


しかしその後もおばちゃんの首かしげ作戦は続いた。


野菜指さして首をかしげる。「ノー」

香辛料みたいなビンのを指さして首をかしげる。「ノー」

ノーといったのにその蓋を開けてにおいをかがせる。

あまり好きではなかったので「うげー」という顔をした。

おばちゃんが笑った。


そして、おばちゃんの首かしげ作戦が終わって具を挟み始めた時に思った。

「あれ、私このおばちゃんの声聞いてない」


声を発しない理由

そのとき気付いた。

おばちゃんがやたら身振り手振りが大きかったこと。

手で妙な形を作ったりしていたこと。

最初の値段交渉でなかなか伝わらなかったこと。


おばちゃんは耳が聞こえなかった。

しゃべることが出来なかった。

だから毎回首をかしげながら、私に確認をしていただけだった。


ハッとさせられた。

今までは値段を高くふっかけられたり、観光客としか見てもらえず、対等な関わりができないことが多かった。

でもおばちゃんは違った。

耳が聞こえないから、間違わないように、確認してくれていた。


けっきょく、「東南アジアのぼったくろうとする人たち」としか私も見ていなかった。対等に関わろうとしていなかったのは自分だった。


と同時に、耳が聞こえなくても、しゃべれなくても、

コミュニケーションは取れるんだなあと思った。

相手の表情、目線、口の動き。

そこに全注力すれば相手の気持ちも伝えようとしていることもわかるんだなあって。


普段私たちがしている何気ないコミュニケーションでも、むしろ言葉があるからこそ大事にしなきゃいけないことなんだなあと思った。


耳の聞こえないおばちゃんにコミュニケーションとは何たるやを教えてもらったのでした。


後日談ですが、次の日もおばちゃんに会いたくてその通りに行った、けど。

おばちゃんはいませんでした。


けっきょくおばちゃんとはその1回きりで、でも旅中に人とどう関わればいいのか悩んでた自分に、“コミュニケーションは言葉だけじゃない”ということを気付かせてくれるために現れたのかもしれないなあ、と本気で思うのでした。

#世界一周 #東南アジア #ベトナム #出会い #コミュニケーション #耳が聞こえない #エッセイ #出来事





サポートでいただいたお金は、ライティング力向上の書籍購入に使わせていただきます。読んだ本はまたnoteで感想とともに紹介します。