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Vol1.色の白い かわいい女の子を産んだはずが・・・ 藤沢あゆみをつくった100の物語

「これから毎日、電話することにした」

2016年が始まったばかりのある日、電話をかけてきた母は、そんなことを言った。

母は、その理由を言わず、わたしも聞かなかった。

語らずとも、覚悟のようなものが伝わった。母はそのときすでに、自分がそう長くないことを悟っていたのだ。

毎日電話をすると宣言した母は、そのことばの通り、電話をかけてきた。短い会話をして電話は終わるのだが、声を聞くとおたがいホッとしていた。

ある時の電話で、わたしはこんなことを言った。

「お母さん、わたしが生まれたときのこと、話してもらっていい?」

それは、潜在意識に駆り立てられて言わされたようなことばだった。

(話ができる間に聞いておかなくては・・・)

藤沢あゆみをつくった100の物語

こんにちは、藤沢あゆみです。

わたしは、血管腫という先天的な症状を持って産まれました。

いま作家として、恋愛の本を中心に27冊の本を上梓していますが、自分の持って産まれたものと、自分の仕事には、密接な関係があると思っています。

左の顔に、血管の腫瘍ができるという、女の子の人生としては産まれたときから負けが決まってしまうような運命を背負い、そんな人間が恋愛の本を書く・・・。

どうしてそんな人生になったのか、noteにもプロフィールとして少し触れさせていただきました。

これから、自分の人生の物語を書いていこうと思います。

題して「藤沢あゆみをつくった100の物語」

自分の人生を100の項目に分けました。

わたしの人生を語る上で、どうしても聞いておきたかったことがありました。

それは、わたしのような子どもを産んだ母の気持ちです。

遠慮しないで、ありのまま話して、と言いました。

子ども時代から、不憫な思いをさせてしまうことに罪悪感を感じていたとか、断片的には聞いていましたが、改めて母がなくなる半年前に、母に話を聞きました。

いまだったら、動画で撮るかもしれません。

それくらい、臨場感を持って、文章を書きたいと思います。

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母は、2016年7月、78歳で亡くなりました。

残念ながら、インタビューは、小学校に上がるまでの話で終わってしまいましたが、それ以降は、ひとりの女性としてバトンを受け継いで書いていこうと思います。

本当なら母が生きているうちに書き上げたかった。

あれから、4年の月日が経ちました。

うちには、母の大きな写真があります。きっとどこかで読んでくれていると信じて、書き始めようと思います。

今日、8月12日は、母の誕生日。

お母さん、お誕生日おめでとう。

あなたがこの世に生まれ、そして天国に旅立ち、魂が帰ってくるこの季節、今年は実家に会いに行けないけど、ここから、書き始めるね。

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Vol.1 色の白いかわいい女の子を産んだはずが・・・

わたしは、3つ違いの二人姉妹の妹として産まれた。

姉は産まれたとき、女の子としてはやや肌の色が黒かったらしく、当時人気だった野球選手のようだと言われたそうだ。

妹であるわたしは、色が白い子だった。

体重も姉が生まれた時より一回り大きい健康優良児。母は正直、姉を育てることに四苦八苦して、また子どもを産むことに自信を持てず、不安でいっぱいだったけど、生まれてきたかわいい女の子の顔を見ると、やっぱり産んでよかった、安堵していた。

しかし、産婆さんの一言に、母はまた、不安に引き戻される。

「ちょっと、皮下出血していますね」

そう言われて、産まれたばかりの我が娘の顔を見ると、左の顔の鼻からほっぺにかけてうっすら筋が出ている。

「まぁ、すぐに治ってやで」

産婆さんは、そう言ってフォローしてくれた。

母は、実家である川西で出産した。

父は、京都府綾部市で会社勤めをしており、母はひとりで里帰り出産をしたので、生まれてすぐにあうことはできなかった。

普通だったら、子どもを産んだ女性は、早くパートナーに我が娘を見せたいと思うところだけど、母は父にわたしを見せるのを恐れていた。

なぜなら、左の顔の筋は、日に日に濃くなってきたから。

(わたしが、育てる自信がないと思ったからこんなことになったのかな・・・)

母は、自分を責めた。

ショックで母乳が一週間で止まり、ほとんど粉ミルクでわたしを育てた。

しかし、恐れていた日はついにやってくることになる。

父が、姉を連れて、母とわたしを迎えに来ることになったのだ。

実に、出産から1ヶ月経っていた。

経過観察ということもあり、母がすぐに退院できなかったということもあるが、正直、このままときが止まって欲しいと母は思った。

(つづく)

おとなになったわたしの等身大の物語


 


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