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Annaの日記 犬というこども⑨

 まさに子供であり、アイドルであった我が家の犬。
 特に私と出会うまでの、夫の過保護ぶりは見事としかいいようがなかった。

 朝夜2時間の散歩、月1回のトリミングサロン、ごはんも我々人間の割引シールが貼られたご飯とは無縁の超高級ドックフード。毎日のブラッシングにハミガキと・・・

 してもらえて「ありがとうございます」というどころか、
 ハミガキがおわればおやつ、サロンから帰ればおやつ・・・


        王様か!!


 しかし、私もこの犬をひとめで好きになったのは、やはり賢さだった。
 夫との信頼関係はかなりのもので、ただ甘やかすではなく、本当にきちんとしつけがされていた。

 しかし、そのしつけを超える、甘たれ、寂しがり、かまちょ犬。

 常にだれかの膝の上をキープし、真ん中にいないと気が済まない。
 車も真ん中の肘置きに座り、寝るときも真ん中。自分をおいてイチャつこうもんなら吠えて吠えて、乗りかかって全力で止める。終了・・・


  本当・・・どうやって妊娠したんだろうと未だに思う時がある・・・



 そんな甘たれかまちょ犬にライバルが出来た。
 しかも人間の。

 犬はうすうす気が付いていただろう、
このベビーベットやハイローチェアーの新しい家具が自分のモノではないということを・・・

 そして、人間もつくづく勝手である。

 赤ちゃんが泣くと、犬も鳴く。
赤ちゃんを取り上げると、抱き上げた人の服を噛んでひっぱり鳴き散らかす。

 「あらあら♡ 泣いているの教えてくれたんだね、ありがとう。
 ぼくの赤ちゃん持っていくなって怒ってるんだね!かわいい」


     毎度微笑ましくみていた。

 夫婦でそんな勘違いが1か月くらいは続いた。

 しかし、後から思えば完全に
「こんなチビ抱く前に僕を抱け!!」
 というサインだった。
 「なぜ、ふたりとも「ないている」のに、後からきたチビが優先されるんだ!!なぜあいつばっかりで僕をかまわないんだ!!」


 私にとってこのかまって鳴きは、完全な逆効果になってしまった。


 特に最初の2か月は子育て疲れやストレス、わけのわからない泣き、3時間おき授乳の慢性寝不足で、「ダブルなき」がくるとかなり滅入ってしまった。

 全員がしんどい時期だった。
 夫婦で子育ての正解がわからないまま毎日が過ぎ、泣く度になぜなんだと不安になり、夜中も泣いてみんな寝不足。
 引っ越したばかりでやること山積み。
 犬もことある度に、意味も分からず泣き声で起こされ、唸ると怒られ・・・赤ちゃんがいるから私の横でも寝られず寂しい。
 夫も夫でまさか49歳で、赤ちゃんの泣き声で寝られない人生が来るなんて思いもよらず、そして私が犬にあたると自分の責任のように感じ落ち込んでしまっていた。


 「慣れるしかない」と夫婦で言い聞かせて、赤ちゃんが泣くのは仕方がない事なので、私が赤ちゃんを抱く時は、夫は必ず犬を抱くという癖をつけたが、さすが真ん中大好きかまちょ犬。


   「私」じゃないと、
 というか二人じゃないとダメ・・・子供か!!

 試行錯誤している間に、夫の1か月の育児休暇が終わってしまった。

 3人(人間・未完成人間・犬)のカオスな時間を1日の半分以上過ごす事になる恐怖・・・どうしようと、子育ての悩みなんかどうでもよく、どうこの3人でやっていくかばかりが頭から離れなかった

                 ~続く~

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