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レンコンは「焼く」のがおいしい

出かける時、バッグに文庫本を入れておかないとそわそわする。私は乗り物酔いする質で、バス移動の日は読むタイミングなんてほぼないに等しい…。と分かっていても、やっぱり「お出かけの必需品」からは外せない。

出先で物語に没入するほど読めないのが明らかな日は、エッセイ本が心強い。数日前、角田光代氏の「今日もごちそうさまでした」をバッグに忍ばせた。運よくスキマ時間が出来て、喫茶店でしばしページを開く。構成が春夏秋冬で分かれていて、冬の食エッセイを読み始めた。

友人宅に遊びにいったとき、れんこんをただ焼いて塩したものが登場した。厚めに切ったれんこんで、揚げ焼きした感じの焦げ方である。なんにも思わずこれを口に入れて、のけぞった。うまかったのだ。つい、言っていた。「れんこんなのに、うまい!」(「れんこん哲学」より)

「れんこん哲学」では、片栗粉をまぶした厚切りのレンコンをオリーブオイルでじりじりと焼き、焦げ目がついたら“いい塩”をふっていただく。すると、はっと目を見開いてしまうほど、うまいという。

去年から、うちのスタメンレシピ入りを果たしたレンコン副菜が「焼き」である。はっと目を見開きはしないけれど、平日夜は毎晩これでもいいと思ってしまうくらいかんたんで、やっぱりおいしい。

レンコンは薄すぎず、厚すぎずのいちょう切りに。アク取りはしない(もちろんしてもいい)。レンコン200g程度(こぶし1個分くらいの大きさ/2人分)に対して、2~3枚のアンチョビを刻む。フライパンにバター10gを投入して、溶けてきたらアンチョビを入れてまんべんなく広げる。

重ならないようにレンコンを広げ、焦げ目がつくまでじっくり焼く。あまり箸でかき混ぜず、思い出したようにひっくり返して、またじっくり焼く。ある料理本の言葉を借りて説明すると“野菜をゆっくり充電するようなイメージ”だ。

目で見て香ばしさが伝わってきたら、好きなだけ青のりをファサッとかけて、全体によくまぶす。器に盛ったら完成。

角田氏の焼きれんこんでは「いい塩」が決め手だけど、このレシピは「青のり」がポイント。アンチョビの魚臭さを、青のりの風味がふんわりとカバーして、全体のなじみをよくしてくれる。

レンコンは厚すぎても火が通りにくくて大変だけど、薄すぎるのは論外。個人的な好みで言えば、10円玉を2枚重ねたくらいかな。程よく厚みがあると、チップス感覚でポリポリ食べられて箸が止まらない。

何より、ビールにもハイボールにも日本酒にも合って最高なのだ。

▼スタメンレシピ帳の作り方

▼角田光代さんの泣ける食小説感想

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