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何かに気づいたら、もうそこにはいられない〜サヨナラの準備

朝5時45分。目覚まし代わりのテレビが大音量で流れ、身支度をして出社する。7時45分に到着し、8時に始業。気づいたら午前中が終わり、最速でご飯を食べたら仮眠を取って、息する間もなく就業まで働く。

家に着くと食事をしながらコタツで眠ってしまう。夢の中でその日に言われた嫌なことがループする。
その後はお風呂に入り布団についても寝られない。明日の仕事の手順を頭で整理し、仮眠を取って朝になる。
………………
「りりいちゃん、忙しすぎ。他の女の子たちはもっと暇だよ。僕なんて明日の4件のオペ、興味なさすぎて覚えてないよ。」
関東にある大きながんセンターで働き、多忙を極めている彼に言われた。多忙の彼に指摘されたから、本当に私は忙しいのではないかと驚いた。

だから、
「じゃあみんな何しているの?」
と思わず返した。
「トイレでライン返したり、レントゲン室で不倫したり、テレビ見たり。ちなみに僕は今、オペしながらライン返してる。」

プライベートと仕事を両立し、バランスをとる人たちの話を聞いて、一瞬、頭が真っ白になった。大切な人たちの顔を思い出したのだ。
自分は何を犠牲にしていたのだろう。
急に目が覚めた。
………………
スマホを見ると未読ラインは300を超え、
数え切れないほどあったマッチングアプリのやり取りは、殆ど消されている。私の返事があまりにも遅かったのだろう。

1番仲良しの人への「おはよう」のスタンプは2週間前が最後で、家族との通話は数ヶ月前が最後。

勿論、noteは始めていなかった。
沢山の大切な人たちから私から遠ざかって、大好きな書くことまで手放していたのだ。

私は何をしているのか、自己犠牲が、生計を立てるための仕事ではないはずだろう。
…………………
本当に彼が言う通り、みんなは上手くやっているのか?
出社と同時にオフィスを眺める。

会社携帯で友人と電話している人々、
会議中、熟睡している上司、
覗いたPCには3分クッキングやゲームの映像が映る。
熱心な会話は打ち合わせではない。今日の飲み会の話。

私は彼らの業務を一人で一身に引き受けていたのだ。

一気に体から熱がひいた。
何かに気づいたらもうここにはいられない。心の中にそんな言葉が浮かんだ。
…………………
思い返すと、過程はあった。
始めは仲良くしたり、コミュニケーションを取るために手伝いをしてはいた。
そのスピードが早かったから、いつの間にかこれもこれもと言われて、「お願い」でも「ありがとう」でもなく、ただくしれっと自席に書類が置かれていた。

「なぜ自分でやらないの?」と聞いたことを皮切りに、不快感を示した人々は一層の仕事を私に回してきた。

その頃になると末期。もう言葉も気持ちも消していた。
………………
ここではゴミ箱だ。食い物にされる。スマホ片手に私の仕事を覗く人は、成果だけ取っている。
私は自分のために働き、自分の大切な人たちに人生を使いたいと思った。

その後、紆余曲折することになるが、
このときから私の中でこの場所は終わっていて、サヨナラの準備を始めていたのだろう。

とても嬉しいので、嬉しいことに使わせて下さい(^^)