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ヤギが生まれた日|タロと3年2組の日常

不安と期待と上の空。

メスヤギのシロの「結婚」からおよそ半年

タロに「(お腹に)赤ちゃんいるかわかったの?」と聞いても「わかんなーい」としか答えてくれず、
お世話に行くたびにお腹の様子を確認するものの、半信半疑の日々がしばらく続いていたが、
4月の授業参観で先生が見せてくれたシロの後ろ姿(写真)の経過を見ると、お乳が格段に大きくなり、お腹も少しずつ膨らんでいることが見て取れた。

予定日は、5月の上旬。
人間と同じく、初産では予定日より出産が遅れることもあるそうだが、ゴールデンウィークが明けた頃から、クラスのソワソワ感がひしひしと伝わってきていた。
(いつ産気づくかがわからないので、授業中もさぞ「気もそぞろ」だったことでしょう。。)

予定日数日前から、下校後〜翌朝までのZoom生中継が始まり(便利な時代!)、それから数日たった、よく晴れた金曜日。
仕事中にちょっと油断してZoomの閲覧をサボっていたとき、それは起こった。

「あ 生まれてる!」

昼過ぎ、オットがZoomをつなぎなおしたところ、そこには2匹の小さな小さな子ヤギが映し出されていた。

ちっちゃ!かわいっ!

そして、小屋の周り(と屋根の上)を学校中の子どもたちと先生たちがわんさか取り囲み、まさに
おしあいへしあい、うえをしたへのおおさわぎ」(ー「からすのパン屋さん」かこさとし著)状態だった。
うん、小屋が壊れるぞ。

小屋は子どもたち+先生の完全手作り。
創意工夫をこらし、進化を遂げたVer.3とはいえ、柵が倒れ、屋根を突き破って子どもたちがドサっと落ちてくる、よくある「衝撃映像」にならないだろうかという画面のこっち側の不安はよそに、
学校中が、それはそれは大騒ぎ・大喜びなのが伝わってきた。

生まれる瞬間

というわけで、見事にココイチ大事な瞬間を見逃してしまったわれら大人どもだが、
当の子どもたちは、一匹目が生まれる瞬間から、ずっと近くで見守っていたそうだ。

赤い袋が出てきた後、立ち上がった瞬間に高い位置から産み落とされた一匹目を獣医さんがキャッチし、ぺろぺろと舐めたシロ。
なかなか出てこず、袋のまま生まれるも自力で袋を破いて出てきた2匹目。
何回も転びそうになったり、シロに踏まれそうになりながらも、頑張って立ち上がったその瞬間。

たまたま私用でお休みだった担任の先生が急いで昼過ぎにかけつけると、子どもたちが先生を取り囲み、矢継ぎ早に報告し、中には泣きじゃくる子もいたという、後日届いた先生からのお便りの文面からも、子どもたちがつつまれていたとてつもない緊張感と、そこから解放された安堵感が伝わってくる。

出産前から相談していた獣医さんや、自分たちの親へのインタビューで聞いていた「出産は命懸け」「普通に生まれることは奇跡」という言葉は、子どもたちの不安や緊張を大きく掻き立てただろう。

そしてきっとその分、反動のように感じただろう「特別なキモチ」のインパクトは計りしれない。
画面の中のヤギと子どもたちのキラキラとした姿が、それを物語っていた。

ヤギと学ぶ、「生」教育

発情の様子を見せるシロの姿を見て、「子どもがほしいのかもしれない」と考えお婿さんをもらうことに決めた二年生の秋。

子作りのためにお借りしてきたオスヤギさんとの「出会い」そして「結婚」(という名の交尾)を(おそらく衝撃と共に)見守り、2匹といっしょに過ごした冬。
(その後、オスヤギくんは、次のお仕事のため新たなメスヤギさんのもとへと旅立っていきました)

食べ物の好き嫌いに変化を見つけたり、どんどん膨らむお腹とお乳を目の当たりにしながら、生まれてくる子ヤギのために小屋を大きく作り替え、日々掃除したたくさんのウンチや餌やワラをせっせと運ぶ中、
5月、2匹の元気な子ヤギが生まれた

考えてみたら、ものすごく自然で、それでいて強烈な、「生」教育、命の授業だ。

本物の命を預かり、見守ることで、感じた不安や恐怖、驚き、喜び。
うちのポヤっとしたタロさんも、(今でなくても)きっと未来に渡ってことあるごとに反芻し、土台となるような経験・学びになったのではないかと思う。


さぁ、これからシロ+子ヤギの3匹と、子どもたちの生活が始まる。

まずは名付けからでしょうか。なんでもとことん話し合って決める子どもたち、これまた時間がかかりそうだ。
(シロの名前が決まるまでも数週間かかりました)

子ヤギたちとの新たな生活については、また後日。

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