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キタキタ高校物語⑯図くん、登場 その2

 ある時、美術部のある女の子のヘアスタイルが、お姫様カットであることに気が付いた。美術部の活動は、基本、ソロ活動であるが、部活の始まりにクロッキーを設定して、互いにモデルをして描きあっている最中の出来事である。お姫様カットとは上のイラストの右端の女の子で、もみあげ部分の髪が短くちょきんと切ってあり、あとは長いというヘアスタイル。

「凄い!ほんとにお姫様カットの人、初めて見た!」と私。
「きみさ、お姫様カットにしたかったんだ!」
すると、モデルをしていた彼女が言葉を選びながらとつとつと話し始めた。
「・・・ほら、人間って、いつ死ぬかわからないじゃないですか。
だから、思い切ってお姫様カットにしてみました。」

 なんだ、その・・・今日、死んでもいいように生きるっていうようなスティーブ・ジョブズのような考えは!(この日から、彼女のことを、美術部のジョブズと呼んでいる)

 また、彼女の勉強法が変わっていた。

「自分をお姫様だと想像して勉強するんです。
 授業中も、姿勢を正して集中して。
 家でも、宿題をやっている最中に、寝そうになったら、お姫様だったら、ここで眠りかけなんかしない。
 くじけないで最後まで宿題をやり通す!
 お姫様なんだから・・・と思ってシャキッとする!」

「すげー!想像力を使ったそんな勉強法があるとは!驚き!」

「つまり、そうでもしないと、勉強できないぐらい、私はダメダメなんですよ!」

 そういえば自分も社会で聖徳太子は凄いハンサムなのだと無理やり思って暗記しようとするという裏技を使っていたけど、登場人物1人1人にそれをやるより、自分一人がお姫様とか超天才って思いこんだ方が話が早かったかな?と感心したのであった。

 また、ある時、彼女や彼氏がいたほうがいいかどうかという話題になった。

「私にはイマジナリー・ダーリンがいるんです。
 彼の名前は、今田 凛(いまだりん)君っていいます。
 何か頑張った時とか、悲しいことがあった時とか、よしよしってホメたり、慰めてくれるんですよ。別にそれがみじめとも思いません。
 自分はその想像の世界で、幸せなんです。」

 なんだ?イマジナリーダーリンって?
 これもオシャピクみたいな女子高生に流行っている言葉なのだろうか?

 ネットで検索してみると
「イマジナリーフレンド」というのはあった。
「イマジナリーフレンドとは、「名前を持ち、数ヶ月間継続して、ある種のリアリティーを伴って子どもが相互作用する目に見えない存在のこと」で心理学や精神医学における現象名の一つです。言い換えると、子供時代に現れる空想上の友だちのことです。」

 イマジナリーフレンドの恋人版というところだろうか。

 彼女の独特の考え方には、女子高生というだけではなく、彼女らしさがあり、まずまず、オモシロイ女の子なのであった。

 赤毛のアンという小説の1シーンを思い出す。
 アンの家の台所にプディングの壺があって、それを食べるのを楽しみにしているのだが、ある時、その中でネズミが溺れ死んでいた。その美味しいプディングが食べられなくなって、かなりがっかりしたアンだか、次のようなセリフを言う。

「でも、ネズミの死に方としてはかなりロマンチックな方だと思うわ」

それを読んで、衝撃を受けた。
 想像力で乗り越えられる現実もあるということ。
 アンの人生の厳しさやたくましさを垣間見る瞬間である。想像力で自分の人生を楽しく彩るアンのファンになってしまう。

 女子高生時代は箸が転がっても可笑しいというような軽やかな楽しさや面白さに満ち溢れているようにみえるが、それぞれの想像力や努力で、山のような宿題の出る進学校の生活を乗り切っているのだろう。
 女子高生のかわいいもの、楽しいもの、オモシロいものを見つけるチカラって、とても素敵だ。生きるチカラと言ってもいい。

 高校教師と言う立場は、高校生漫画を描くには美味しいポジションである。事実は小説よりも面白いのであるからして。
 しかし、マンガを描くという仕事と、高校教師と言う仕事を両立するのは、体力的にも精神的にも無理だと思われる。惜しいなあ!

 取材するって立場から言うと、すっごくいいけど笑。
 そんな旨い話は無いってことで( ^ω^)・・・