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パリで今年一番パリっぽいエクスポジション

Salut ! Ayakoさん

9月に入ったら東京もいっきに涼しくなって
あーもう本当に夏が終わってしまったな。
フランスでは新学期もスタートしたね。
今年のヴァカンス報告会中だろうな。

今日は、いま、わたしが一番気になっているパリの展覧会の話を。
(見てないのに書く)

現在、16区にあるパレ・ド・トーキョー(Palais de Tokyo)では、
「Kourtrajmé」の生徒による「Jusqu'ici tout va bien」が開催中。


そもそも「Kourtrajmé (クールトラジメ)」 とは、
パリ郊外、モンフェルメイユで育ったラジ・リ監督たちが
幼馴染たちと組んだアーティスト集団のこと。

今年、日本でも公開になった映画「レ・ミゼラブル」(レミゼというと、歌が流れてくるけど、そのレミゼではないよ。)でメガホンを取ったラジ・リ監督。昨年のカンヌ国際映画祭では、あの「パラサイト」と競いあい、審査員賞を受賞。
アカデミー賞国際長編映画賞フランス代表にも選ばれ、フランス版、アカデミー賞の「セザール賞」では、作品賞を含む最多4冠を達成したという大ヒット作!

簡単にストーリーを説明すると、舞台となるのは、ヴィクトル・ユーゴーの傑作「レ・ミゼラブル」で知られているパリ郊外のモンフェルメイユ。ここは、移民や低所得者が多く住む危険な犯罪地域の一部となっている場所。そこの犯罪防止班に新しく加わることとなった警官のステファンは、仲間と共にパトロールをするうちに、複数のグループ同士が、緊張関係にあることを察知。そして、ある少年が引き起こした些細な出来事が大きな騒動へと発展。事件解決へと奮闘するステファンたちですが、事態は取り返しのつかない方向へと進み始めることに……。

ラジ・リ監督は、2005年に発生した実際の暴動事件にインスパイアされて製作。初長編監督作品ながら監督自身がこれまでこの街で体験してきた出来事を、圧倒的な緊迫感とスタイリッシュな映像で描いていて、とにかく、最初見た時は、衝撃的だった。

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Ayakoさんは、わたしのパリ郊外好きを知っているけど、やはり日本の雑誌ではいつもパリは花の都でキラキラ。でも生活をするとそんなことないし、クロワッサンだって、カフェオレだって毎日飲まない。パリには、様々なバックグラウンドを持つ人々が暮らしていて、この映画の中ではそんな一面を見せながら現代の社会問題をリアルに切りとっている。

なかなか観光客(パリに住んでる人も)は、わざわざパリ郊外には行かないけど、シャルル・ド・ゴール空港からオペラまでのロワシーバスに乗ったことがある人は、だんだんパリ中心部に近づくにつれて「あれ、あれ、想像していたパリと違うぞ。道路にテントも見えるぞ、でもキャンプな雰囲気ではない、こっちの道には、ゴミで溢れているぞ」みたいな体験したことがある人もいると思う。これもパリなんです。

ちなみに、映画公開時に「レ・ミゼラブル」についてのシンポジウムが開催され
わたしが司会を務めさせてもらったんだけど、登壇者の視点もおもしろくて
勉強になった。


話を戻すと映画を手がけたラジ・リ監督たちは、モンフェルメイユに学校を作って、無料で誰も参加できる映画学校を仲間たちと作ったんです。
それが、「 l'école de cinéma Kourtrajmé」

治安が悪い場所に生まれる→グレる→悪さする→警察のお世話になる・・・。環境のせいにするのは簡単だけど、若いラジ・リ少年は、ガンではなくてカメラを手にしたことからはじまったストーリー。それが今はパリの16区というスーパーハイソな場所で展示をするなんて!


「 l'école de cinéma Kourtrajmé」は、とにかく先生が豪華で「ART ET IMAGE」コースは、アーティスト「JR(ジェイアール)」(この↑写真もJRが撮影)が、演技コースには、「8人の女たち」や「スイミング・プール」のリュディヴィーヌ・サニエなどが先生を務めていて彼らからダイレクトに学ぶことができるのよ。これはすごい。(こういう学校の先生って第一線を退いたみたいイメージがあるので)ここで、生徒たちは、映画に触れて、学んで、nextラジ・リをどんどん輩出して欲しい。

ちなみに年齢制限もないので、今年、監督が来日した時にインタビューをさせてもらう機会があったんだけど、「わたしも学校に入れてください!」と直訴したわ。
リアルに入って勉強したい。

パリには、「La Fémis」のように名門映画学校があるけど、入学するのですら大変。オゾンにしてもデプレシャンにしても出身監督は、優等生なイメージ。それも好きだけど、若さと勢いを武器に作り上げる「Kourtrajmé」の生徒の作品には、血が通っている。(鑑賞していないけどね)。


もうひとつ、この展覧会を語る上で外せなのが郊外映画の決定版「La Haine」( 憎しみ)。パリ郊外の「バンリュー」を舞台にし、人種差別を描いたマチュー・カソヴィッツ監督作品。カソヴィッツは、当時28歳でカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞したんだけど、その「La Haine」なんと、今年で公開から25年とあって、先月、リマスター版として劇場公開もされたほど。今もその衝撃は変わることない。今見ても新しい!ヴァンサン・カッセルも若すぎる。


カソヴィッツは、ラジ・リとも一緒にこの「Kourtrajmé」プロジェクトにも関わっていて、世代を超えて繋がったことにぐっとくる。(最初のインスタの動画と↑を見比べてもいかにオマージュしてるのかがわかる)。

郊外の状況は、いまも、25年前も、さらには、ユーゴーが「レ・ミゼラブル」を書かれた150年前から変わっていない。(それにこれはもう日本も対岸の火事ではない。)とても根が深い問題で今すぐにどうすることもできないし、必ずしも「善」と「悪」で分かられるものではなない。でも若い才能たちを見ると、アートを通して表現すること、そのパワーに希望を感じるよ。

見に行ける人は、9月7日までなので、わたしの代わりに見て欲しい!

では、またー!


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