金沢の魅力を感じる旅でした(後編)
旅慣れていないもんで、何日間かは、旅行の思い出に浸る。
写真を見返したり、お土産を整理したりすることで、その土地に思いを馳せる。
もったいなくて食べられない、お土産で買ったお菓子は、賞味期限ギリギリまで食べずに眺めて、いよいよもう食べなきゃやばいって時に、風情も何もなく、一気に平らげたりする。
もったいないと思っていた割に、一気に食べて、こんなはずじゃなかったと、後悔するのは子供の頃から変わっていない。大事にすることの意味を間違え続けている気がする。
さて、金沢の旅を振り返りましょう。前半はこちらから。
後編スタートです。
…………
尾山神社に行けたことの奇跡は、今回の旅ではとても大きな喜びだったのだけど、もう一つ、嬉しかったことは、金沢の方々と触れ合えたこと。
その1人に、九谷焼作家の今江未央さんがいます。
九谷焼は石川県の伝統工芸品の一つで、石川県で約360年前から作られている器だそう。
色鮮やかな食器は、豆皿などで目にする機会も多く、料亭や、旅館の食事などで使われている食器というイメージ。
最近では九谷焼×ドラえもんとか、九谷焼×スヌーピーなど、様々なキャラクターとコラボレーションしていることで若い層の方々にとっても馴染みのあるものになりつつあったけど、やっぱりそれでも自分で買うにはハードルが高い。
ところが、今江さんの九谷焼は、そんな九谷焼のハードル自体が、そもそもなかったかのように感じさせてくれる、可愛らしい作品で、
むしろ、これって九谷焼なの!?と驚いちゃうものばかりだ。
だから、今回どうしてもお会いして、話を聞いてみたかった。
今江さんのことは、今回の取材の前に事前取材に出かけてくれていた阿野さんが、金沢駅のアーバンリサーチで見つけてきてくれた。
「あのね、絶対あやかちゃん好きだと思うの。ムッチャかわいいし、これも九谷焼なんだって!すごいよね!しかも値段もびっくりするような価格じゃないんだよ!」
と、ウェブサイトを見せてくれたのが始まり。
阿野さんの情報をもとに、今江さんの作品を取り扱っているウェブサイト、オトメの金沢陳列室の代表の方に連絡をして、今江さんにつないでもらったのだ!(オトメの金沢陳列室は下にURL載せておくのでみてみてね!)
当日は、今江さんの自宅兼工房にお邪魔できることに。かわいい作品を作る方なのはわかっていたけど、そうは言っても職人さん。しかも、SNSなどもやられていないようで、お顔もわからない中、ご自宅にお邪魔するって、ハードル高くない?と思ったんだけど、
さすが、今江さん。九谷焼のハードルもなかったことのようにしてくれる方だもん。
初めましてで自宅にお邪魔するハードルも、全くなくて、全力でウェルカムしてくれる方でした。
「どうぞ上がってください!」「車邪魔ですね、ちょっと待ってくださいね」「取材の間だけ夫に出かけてもらいますね」
などと言って、我々がのっていたレンタカーが今江さんのご自宅の駐車スペースに入れるように段取ってくれたり。即協力してくれた旦那さんまで優しい方で。本当にありがとうございました。
“金沢はコンパクトに楽しめる街“とは聞いていたけど、
それにしたって、土地勘のない私たちにとって、車で街中を移動するのって時間を要する。カーナビに住所を入れて、とか、ここを曲がるんだったのか、とか。
そういうことをやっていると、案外移動に時間を食う。
そんなこんなしていて、今江さんのお宅に着いたのは、なんと、中継15分前!車のことをやったりしているとあっという間に時間が来ちゃうから、立ち話をしながら、今回の主旨を伝えた。
そして、その話を聴きながら「はい、はい、大丈夫ですよ!なんでも答えられますよ!」と、頼もしい。
工房にしているという部屋には、びっしりと、作品が並んでいて
「ここ、地震の時には大丈夫だったのですか?」と聞いてみたら意外な答えが返ってきた。
「私、そのこと、すっかり忘れていたんですよ(笑)友人がね、“作品大丈夫?”って連絡くれたんですけど、その連絡をもらうまで、作品のことなんて思い出しもしなくて(笑)
それで、“確かに!”ってなって、下に降りてみると、小さなオブジェが2つ転がっていたくらいで、ほとんど大丈夫だったんです。それで、よかったぁって。そうだった、うちには割れ物がたくさんあったんだって、ほっとして笑ったんですよねぇ」
というエピソードを教えてくれた。
そんなまさか!!!と、言いたくなるようななる話に、思わず笑ってしまった。
地震について、いろんな人のいろんなストーリがあって、全て正しくて、全て現実だ。
大変だった人もたくさんいて、悲しい思いをした人もたくさんいるのも事実だけど、
今江さんのこのストーリーも、今江さんの事実だ。
私は…
私はね、結局保身でしかないのだけど、ここ、金沢にくる前まで、
楽しく中継をできるか、不安だった。
大変な思いをした人がいるのに、地震のことをちゃんと話せるだろうか?
金沢に遊びにきてほしい!それが復興支援につながるから!だから、魅力を発信しよう!
わかっている。わかってるんだけど、私が伝えて、大丈夫だろうか?
って、直前まで思っていたような気がする。
だけど、そんな気持ちは、今江さんにお会いして、かなりほぐれた。
一人一人のストーリーに、ちゃんと向き合えれば大丈夫なんだと思えたのだ。
この話をしながら、ふふふと笑う今江さんの可愛らしさは、そのまんま、作品に反映されていて、だからみんな惹かれてしまう。
今江さんの作品の中には、豆皿の中心部に、小さなオブジェが立ち上がっているものがあるのだけど
「今回の新作です。」と見せてくれたのが、これ。
次回出展するイベントのテーマが「能登半島」というものだそうで、豆皿の上に、能登半島が立ち上がっている作品。
「立ち上がれ!能登半島!って思って作りました」
まるで恐竜の頭のような能登半島は、綺麗な緑色で、今江さんの作った丸いお皿の上にしっかりと、立ち上がっている。
この話は中継の時にも聞いたのだけど、うかつにも泣きそうになってしまった。
立ち上がれ!能登半島!
たくさんの思いが、たくさんのストーリーが、この一つの作品に込められているような気がしたのだ。
…………
中継は今江さんの協力のおかげで、とても良いものになった。
実際に、オトメの金沢で今江さんの作品を買いました!と、リスナーさんから連絡もいただいた。とても嬉しかった。
私はこの中継の時、石川県の工芸品の紹介ということで、“加賀八幡起き上がり”というダルマの紹介もしたのだけど、
帰り際、今江さんが私に、
「これ、よかったらどうぞ。ちょうど、ここに私が作った加賀八幡起き上がりがあったので、プレゼントです」と渡してくれた。
青い産着を身に纏った小さなダルマは、今江さんのようにニコニコしていて、すっごくかわいい。
これは、絶対に忘れないなって思った。
このダルマがいれば、いつでも能登のことを、金沢の旅のことを、
そして、今江さんのことを思い出せる。
「忘れない、ということだけでも、復興支援になるんだよ。」
と言った、阿野さんの顔が浮かぶ。
忘れないということが、実は一番難しいのかもと思う。私もそうだし、みんなにも日々大変なことがあるから。そうやって、毎日過ごしていくから。
だけど、こうやって、関わることで忘れないんだと思った。
金沢に来て、初めて知った。
今江さんの作ったダルマが、我が家でもニコニコ笑ってる。
お土産は、早めに食べて、また金沢に行こう!
そう、心から思った旅なのでした。
…………
今回ご紹介した今江さんの作品は、オトメの金沢陳列室にあります!今江さんの作品はもちろんですが、石川県の手作り作家さんの作品がたくさんあるのでみてみてください!