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バルセロナ生活とカタルーニャ語

一括りに「スペイン」といっても、地域によってその性格はまったく違います。私たち日本人が思い描く「陽気でおしゃべり好きで、かなり適当な人たち」「タパス、フラメンコ、シエスタ、闘牛」というイメージは、恐らくスペイン南部からきたものでしょう。
 
夏には40度以上にもなるセビージャでは、夕方の暑い時間にシエスタをしなければ、とてもじゃないけれどやっていられないし、働く気が失せても納得がいきます。それにフラメンコは、南部アンダルシア地方のヒターノたちが生み出したものです。
 
「タパス」というのは、昔はバルでドリンクを頼むと一つタパスをつけてくれるものでした(いまもつけてくれる地域はありますが、スペイン全土ではありません)。この風習もおおもとをたどれば、アンダルシア地方で、ハエがコップに入るのを防ぐために生ハムやチーズで覆って(tapar・タパール)いたことが起源になります。
 
だから、カタルーニャ州に属するバルセロナにやってくると、バルの数がほかのスペイン地域と比べて少ないことに気がつくと思います。ここには、仕事終わりに1杯ビールを飲んで、軽くつまんでから家に帰るという習慣がないのです。逆に、マドリードに行くとバルがひしめき合い、立ち飲みしている人たちで溢れ返っています。
 
バルセロナに住みはじめる前に、何度か旅行できたことはあっても、そこまでほかのスペイン地域との違いを感じることは正直ありませんでした。ですが、こうした習慣も違えば、人の性格も違う(勤勉な人が多いし、節約家が多い)、そもそも話されている言葉も違うのです。

語学の苦労を再び


 
カタルーニャ州では、スペイン語とカタルーニャ語が公用語です。最近、日本人のあいだでも人気のサン・セバスチャンがあるバスク地方では、ルーツ不明のバスク語とスペイン語が、「タコのガリシア風」でお馴染みのガリシア地方では、ポルトガル語にも似たガリシア語とスペイン語が公用語です。
 
どこへ行ってもスペイン語ができれば充分なのですが、やはりその土地に住むとなると、そこで話されている言語ができたほうがいいわけです。とくに、カタルーニャでは、フランコの独裁政権時代にカタルーニャ語が禁止されていた(これはバスク地方も同様)という歴史もあり、自分たちの言語や文化を守ろうという意識が強くあります。
 
だから勉強しなくてはいけないと思いつつも、生活はスペイン語でどうにかなってしまうので、なかなか重い腰を上げられずにいました。一番初めにカタルーニャ語に挑んだのは、2019年のこと。大学院で語学のコースも用意されていたので、A1からスタートしましたが、アルファベットの読み方が違うものもあれば、発音も微妙に違う、文法も似ているのに違うところもあり、頭が爆発したので、そのコースだけ終了し、しばらく放置していました。
 
そして2021年に、カタルーニャ人の元カレに振られ(いろいろ理由はありましたが、そのうちの一つの理由が「カタルーニャ語を理解してくれないから、自分の友達ともコミュニケーションが取れない」というものでした)、心を新たに「Consorci per a la normalizació Lingüistica(CNL)」という団体が開催しているカタルーニャ語講座を一から受けることに。レベルは、ベーシック1〜3を修了するとA2、エッセンシャル1〜3を終えるとB1、そのあとB2、C1、C2と続きます。ここではベーシック1〜3の講座は無料で受講できます。そして、最後に試験を受けて合格すれば、オフィシャルの証書をもらうことができるのです。
 
問題は、日本に1ヵ月くらい帰国した時点で必要出席数が足りなくてアウトになってしまうということ。そんなこんなで、受講したりしなかったりを繰り返し、ついにバルセロナ在住7年目にしてついに、カタルーニャ語A2を取得したのです! とはいえ、A2は正直自慢できるレベルではありません。もっと真面目に勉強し続けていたら、さすがにB1レベルくらいはいっていたでしょう。


文法は、何語でも大事。日本語で解説されているものが私には必要でした

 

もう十年以上ぶりに新しい言語を真剣に学んでいますが、頭に入らないこと入らないこと。日本におけるカタルーニャ語研究の第一人者として知られる田沢耕先生の『詳しく学ぶカタルーニャ語文法』を日本帰国時にゲットし、机に向かって勉強できない(したくない)日も、とりあえずDuolingoだけはやるようにしました。ポッドキャストで『Easy Catalan』『Learn Catalan with Couch Polyglot』も気づいたときには聞くようにしています。
 
が、それでもカタルーニャ語に割く時間とエネルギーが英語やスペイン語を勉強していたときに比べて圧倒的に足りていない。そしてやっぱりスペイン語を優先させてしまう……。悩ましいところです。
 
9月からは『Escuela Oficial de idioma』に通って本格的に自分を追い込む予定です。この学校は、カタルーニャ語だけでなくさまざまな言語コース(スペイン語や英語、日本語もある)を、破格の安さで提供しており「オフィシャル」という名前の通り、ここでコースを修了すれば公式の証明書をもらうことができます(たとえば、ここでスペイン語C1を修了すれば、DELEを受けてC1に合格したのと同等の扱いになる)。
 
“普通の”スペインに住んでいれば、どれだけ楽だっただろうと思うことは正直ありますが、それでもやっぱり私にとってバルセロナ以外での暮らしはいまのところ考えられない。だからこうして今日も、地道にカタルーニャ語の勉強に励むのです。
 
 
 
 
 
 

#創作大賞2024 #エッセイ部門

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